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仮に
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この時代でどうやって生きていこう?
イチローの年齢は四百歳近くではなく、コールドスリープ前の19歳として扱われるようだ。
だが、大学生としての立場は保証されないようだ。つまり大学中退扱いという訳だ。せめて休学扱いでコールドスリープ後、もう一度大学に通えるようにして欲しかったが、すでにイチローが通っていた大学など影も形もないらしい。
教育制度も大きく変わったようだ。
学校があるのは仮想現実世界で、現実世界でクラスメイトに会う事はないらしい。
食糧は配給制で市民登録さえしていたら飢える事はないらしい。
コールドスリープしていた者に対して、職が見つかるまでの間、最低限の手当て金の支給もあり取り急ぎどうこうしなきゃいけないと言う事はない。
だが出来るのは最低限の生活だけだ。
ある程度の贅沢もしたいし、そして何よりゲームがしたい。
元いた時代でイチローは「どっきりヤンキー」というファミレスでバイトをしていた。
そのバイト代のほとんどをゲームで使っていたのだが。
イチローは「どっきりヤンキーがこの時代にあるか?」と大河に聞いたが、「は?どっきり何ですって?」と大河に逆に聞かれ「何でもない、忘れてくれ」と打ち消した。
この何もかもがなくなった時代に「どっきりヤンキー」だけが都合良く残っている訳がないんだよ、駄目元で聞いただけだ。
待てよ?ファミレスはなくてもアレはあるかも知れない。
「この時代、ハローワークってないの?」イチローは大河に訪ねた。
大河は「何で私が軍隊に誘ったのに、無視してハローワーク行こうとしてるのよ!?」と憤慨した。
よかった、この時代でもハローワークはあるらしい。
「誰が自分を罠にはめようとしてたヤツの勧誘受けるんだよ?無視してるのは俺の優しさだろう?普通だったら謝罪を求めてるぜ?焼けた鉄板の上で土下座させてるぜ?」イチローは言った。
「男は鉄板の上で土下座させるのね?だから男って野蛮なのよ!」大河は驚きながら言った。
「させねーよ!しかも男は関係ない!そんなん言うなら俺を罠にハメようとしたのはお前が女だからか?『だから女は卑怯なんだ』って言えば良いのか?こないだ始まった漫画で鉄板の上で土下座する漫画があっただけだよ!」イチローは弁解した、二十世紀末の人間を誤解させてしまったかも知れない。
「マンガ?」大河は首をひねった。
どうやら漫画文化はなくなってしまったらしい。
イチローが「こないだ」と言っているのは1996年の話である。「仮想兵器シリーズ」が好きな者は勝負師気質が強いらしく、賭博に命をかける主人公にシンパシーを感じたのか愛読者が多かった。
「あなた男に会いたいんじゃないの?同性愛者なんでしょう?自衛隊に入れば男性に会えるわよ。逆に自衛隊に入らなきゃ男性には会えないわね、どうするの?」大河はイチローに選択を迫った。
「究極の選択を迫った気分になってんじゃねー!『男を選ぶか、自衛隊に入るか・・・二つに一つだ』それで俺が悩むとでも思ってるのか!?つーか俺はホモじゃねー!どっちも選らばねーよ!」イチローは間違いを正した。・・・が、その場にいる全ての女性がイチローをホモだと思っているようで、「イチローはホモである」という事が大前提として話が進んでいるようだ。
「ホモが嫌いな女の子はいない」というのはあながちウソではないようだ。
心なしか女の子達のイチローへの敵対心はなくなってきているような気がするし、なぜかこちらを見ながらキャーキャー言っている。
「この時代に男性が女性に受け入れられる事は非常に稀よ。この時代で生きていこうと思うのなら、このチャンスを逃さないべきだと思うのだけれど」大河はイチローを説得する。逆に
「『女性に受け入れられるチャンス』って言うけど、それって『ホモと断定されるピンチ』じゃねーの?」イチローは抵抗する。
「『ピンチの後にチャンスあり』『ピンチはチャンス』って言うでしょ?仮にあなたがホモじゃなかったとして、このチャンスは逃がすべきじゃないと思うわ」大河は言う。
「『仮に』じゃねー!」
こうしてなし崩し的にイチローは自衛隊のパイロットになった。
イチローの年齢は四百歳近くではなく、コールドスリープ前の19歳として扱われるようだ。
だが、大学生としての立場は保証されないようだ。つまり大学中退扱いという訳だ。せめて休学扱いでコールドスリープ後、もう一度大学に通えるようにして欲しかったが、すでにイチローが通っていた大学など影も形もないらしい。
教育制度も大きく変わったようだ。
学校があるのは仮想現実世界で、現実世界でクラスメイトに会う事はないらしい。
食糧は配給制で市民登録さえしていたら飢える事はないらしい。
コールドスリープしていた者に対して、職が見つかるまでの間、最低限の手当て金の支給もあり取り急ぎどうこうしなきゃいけないと言う事はない。
だが出来るのは最低限の生活だけだ。
ある程度の贅沢もしたいし、そして何よりゲームがしたい。
元いた時代でイチローは「どっきりヤンキー」というファミレスでバイトをしていた。
そのバイト代のほとんどをゲームで使っていたのだが。
イチローは「どっきりヤンキーがこの時代にあるか?」と大河に聞いたが、「は?どっきり何ですって?」と大河に逆に聞かれ「何でもない、忘れてくれ」と打ち消した。
この何もかもがなくなった時代に「どっきりヤンキー」だけが都合良く残っている訳がないんだよ、駄目元で聞いただけだ。
待てよ?ファミレスはなくてもアレはあるかも知れない。
「この時代、ハローワークってないの?」イチローは大河に訪ねた。
大河は「何で私が軍隊に誘ったのに、無視してハローワーク行こうとしてるのよ!?」と憤慨した。
よかった、この時代でもハローワークはあるらしい。
「誰が自分を罠にはめようとしてたヤツの勧誘受けるんだよ?無視してるのは俺の優しさだろう?普通だったら謝罪を求めてるぜ?焼けた鉄板の上で土下座させてるぜ?」イチローは言った。
「男は鉄板の上で土下座させるのね?だから男って野蛮なのよ!」大河は驚きながら言った。
「させねーよ!しかも男は関係ない!そんなん言うなら俺を罠にハメようとしたのはお前が女だからか?『だから女は卑怯なんだ』って言えば良いのか?こないだ始まった漫画で鉄板の上で土下座する漫画があっただけだよ!」イチローは弁解した、二十世紀末の人間を誤解させてしまったかも知れない。
「マンガ?」大河は首をひねった。
どうやら漫画文化はなくなってしまったらしい。
イチローが「こないだ」と言っているのは1996年の話である。「仮想兵器シリーズ」が好きな者は勝負師気質が強いらしく、賭博に命をかける主人公にシンパシーを感じたのか愛読者が多かった。
「あなた男に会いたいんじゃないの?同性愛者なんでしょう?自衛隊に入れば男性に会えるわよ。逆に自衛隊に入らなきゃ男性には会えないわね、どうするの?」大河はイチローに選択を迫った。
「究極の選択を迫った気分になってんじゃねー!『男を選ぶか、自衛隊に入るか・・・二つに一つだ』それで俺が悩むとでも思ってるのか!?つーか俺はホモじゃねー!どっちも選らばねーよ!」イチローは間違いを正した。・・・が、その場にいる全ての女性がイチローをホモだと思っているようで、「イチローはホモである」という事が大前提として話が進んでいるようだ。
「ホモが嫌いな女の子はいない」というのはあながちウソではないようだ。
心なしか女の子達のイチローへの敵対心はなくなってきているような気がするし、なぜかこちらを見ながらキャーキャー言っている。
「この時代に男性が女性に受け入れられる事は非常に稀よ。この時代で生きていこうと思うのなら、このチャンスを逃さないべきだと思うのだけれど」大河はイチローを説得する。逆に
「『女性に受け入れられるチャンス』って言うけど、それって『ホモと断定されるピンチ』じゃねーの?」イチローは抵抗する。
「『ピンチの後にチャンスあり』『ピンチはチャンス』って言うでしょ?仮にあなたがホモじゃなかったとして、このチャンスは逃がすべきじゃないと思うわ」大河は言う。
「『仮に』じゃねー!」
こうしてなし崩し的にイチローは自衛隊のパイロットになった。
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