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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第34話:オウが亡命!? オウに火を付けたルーの言葉
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「ルーを離せ、テイ!! 」
オウの一言によって俺は解放された。
しかし、空中から落とされたので、思いっきり背中を打った。
「がは、がはっ」
縛られていた苦しさと背中を打った痛みに耐えながら、俺は恐る恐るオウを見上げた。
(やっぱり、怒らせてしまったか……)
オウは、うっすらとであるが、思力の炎で全身が包まれている。そして、その表情は……
(いや、怒ってない? )
そう、オウの表情は憤怒ではなくいつも見せている挑戦的な笑顔であった。
「ルー、やっぱり、あの日、君が私の思力から逃れていてよかったよ。私にとっては僥倖だったのだな」
オウを包んでいる炎が一段大きくなった。
「そんな、オウ様! ダメです! 」
テイはオウの言葉と思力を見て悟ったのだろう。
オウが覚悟を決めたと。
「シー様、ルーの策、最も現実的です。私が亡命したとなれば華の国中大騒ぎとなります。そして、華の国内だけでなく外国からも注目される。私の亡命理由と証拠があれば、いかにボアが懇意にしているからと言って公安が捜査しないわけにはいかないでしょう。側近の亡命、身内の殺人、数多くある不正の証拠。これだけ揃えば、ボアは終わりです」
オウは力強くシーに提言した。自分を犠牲にするにも関わらずにだ。
「…………」
シーは、まだ無表情であり、オウを見つめている。
「シー様は、私が領事館に駆け込んだ後、中央から合星国に、証拠を渡すよう圧力をかけて下さい。これも幸運ですが、シー様は今月末、合星国にご訪問予定ですよね。そんな時期に合星国も我が国と揉め事なんておこさないでしょう。すぐに証拠を放り投げますよ」
「………… 。本当にそれでいいのか、オウ」
「そうです。亡命など、オウ様の身の危険、何よりこれまで華の国に尽くした名誉が!」
「………… はい。シー様。問題ありません。テイ、ありがとう。ただ、私も清廉潔白という訳ではない。ボアと長らく二人三脚でやっていたのだ。より巨悪を叩くためと自分をごまかしていたが、私自身、多くの悪事に手を染めた。何よりそうして不正と戦い、その結果、最後に出来たのはボアという最も強大な不正の怪物だ。これは償い、いや、因果応報なのだよ」
オウが纏う炎が静かに揺らめいていた。
その炎が覚悟を決めたオウを悲壮に、それでいて美しく照らしていた。
「シー様。このオウにとって、領事館に駆け込むなど、雑作もないことです。この策、唯一の欠点は、ルーによってボアの思力が丸裸にされるところを見れないことですな。あのプライドの高いボアがルーに足元を掬われるところは、想像するだけで笑いが止まりません。まあ、私は合星国のビーチリゾートで、ボアが凋落するニュースを優雅に見ることにしますよ。……後は頼みました」
(オウ様はきっと自分がどうなるのかわかっているのだ)
領事館に駆け込んでも亡命は出来ないだろう。
証拠と共にオウの身柄も引き渡される。そんなことは、この場の皆が分かってる。それでもオウはここにいる者達に気を使ってそう言ったのだ。
「オウ、お主の覚悟と思い、受け取った。その後の事は気にしなくてよい。もちろん、故郷の両親の事もな」
シーは、オウの覚悟に報いるかのように柔らかい表情でオウを見つめながら、オウにそう約束した。
オウの頬に一筋涙が流れた。
俺は見てはいけないもの見てしまったような気分になり、目を反らし俯いた。
それに気付いたのか、オウはいつもの挑戦的な口調で俺に話しかけてきた。
「おい、ルー!! 私が領事館に駆け込んでも、ボアとの直接対決はなくならないからな。思力で、屈服させて初めて失脚させられる。シー様の勝利はルーのサポートに懸かっていると心せよ」
「そうだな。ボアを拘束するのは、次期総書記候補である私の使命だ。よろしく頼むぞ」
「はい!! シー様、オウ様。期待を裏切らないよう精一杯頑張ります」
「精一杯頑張るではダメなのよ。必ず、死んでもやり遂げるのよ。これだから男は……」
「ハハハ、テイは相変わらずだな。だが、テイの指導も鍵だ。よろしくな」
こうしてオウが合星国に亡命するという策の実行が決まった。
その後は、オウとテイを中心に、具体的な計画が話し合われた。
実行日は、今から五日後。
警察トップを解任されたオウがテイと接触するのはまずいので、俺が連絡係となった。
この日、俺はオウを包む炎の美しさに心を奪われ、なぜオウの亡命を進言したのか、それについては深く考えず、その後、思い出しもしなかった。
オウの一言によって俺は解放された。
しかし、空中から落とされたので、思いっきり背中を打った。
「がは、がはっ」
縛られていた苦しさと背中を打った痛みに耐えながら、俺は恐る恐るオウを見上げた。
(やっぱり、怒らせてしまったか……)
オウは、うっすらとであるが、思力の炎で全身が包まれている。そして、その表情は……
(いや、怒ってない? )
そう、オウの表情は憤怒ではなくいつも見せている挑戦的な笑顔であった。
「ルー、やっぱり、あの日、君が私の思力から逃れていてよかったよ。私にとっては僥倖だったのだな」
オウを包んでいる炎が一段大きくなった。
「そんな、オウ様! ダメです! 」
テイはオウの言葉と思力を見て悟ったのだろう。
オウが覚悟を決めたと。
「シー様、ルーの策、最も現実的です。私が亡命したとなれば華の国中大騒ぎとなります。そして、華の国内だけでなく外国からも注目される。私の亡命理由と証拠があれば、いかにボアが懇意にしているからと言って公安が捜査しないわけにはいかないでしょう。側近の亡命、身内の殺人、数多くある不正の証拠。これだけ揃えば、ボアは終わりです」
オウは力強くシーに提言した。自分を犠牲にするにも関わらずにだ。
「…………」
シーは、まだ無表情であり、オウを見つめている。
「シー様は、私が領事館に駆け込んだ後、中央から合星国に、証拠を渡すよう圧力をかけて下さい。これも幸運ですが、シー様は今月末、合星国にご訪問予定ですよね。そんな時期に合星国も我が国と揉め事なんておこさないでしょう。すぐに証拠を放り投げますよ」
「………… 。本当にそれでいいのか、オウ」
「そうです。亡命など、オウ様の身の危険、何よりこれまで華の国に尽くした名誉が!」
「………… はい。シー様。問題ありません。テイ、ありがとう。ただ、私も清廉潔白という訳ではない。ボアと長らく二人三脚でやっていたのだ。より巨悪を叩くためと自分をごまかしていたが、私自身、多くの悪事に手を染めた。何よりそうして不正と戦い、その結果、最後に出来たのはボアという最も強大な不正の怪物だ。これは償い、いや、因果応報なのだよ」
オウが纏う炎が静かに揺らめいていた。
その炎が覚悟を決めたオウを悲壮に、それでいて美しく照らしていた。
「シー様。このオウにとって、領事館に駆け込むなど、雑作もないことです。この策、唯一の欠点は、ルーによってボアの思力が丸裸にされるところを見れないことですな。あのプライドの高いボアがルーに足元を掬われるところは、想像するだけで笑いが止まりません。まあ、私は合星国のビーチリゾートで、ボアが凋落するニュースを優雅に見ることにしますよ。……後は頼みました」
(オウ様はきっと自分がどうなるのかわかっているのだ)
領事館に駆け込んでも亡命は出来ないだろう。
証拠と共にオウの身柄も引き渡される。そんなことは、この場の皆が分かってる。それでもオウはここにいる者達に気を使ってそう言ったのだ。
「オウ、お主の覚悟と思い、受け取った。その後の事は気にしなくてよい。もちろん、故郷の両親の事もな」
シーは、オウの覚悟に報いるかのように柔らかい表情でオウを見つめながら、オウにそう約束した。
オウの頬に一筋涙が流れた。
俺は見てはいけないもの見てしまったような気分になり、目を反らし俯いた。
それに気付いたのか、オウはいつもの挑戦的な口調で俺に話しかけてきた。
「おい、ルー!! 私が領事館に駆け込んでも、ボアとの直接対決はなくならないからな。思力で、屈服させて初めて失脚させられる。シー様の勝利はルーのサポートに懸かっていると心せよ」
「そうだな。ボアを拘束するのは、次期総書記候補である私の使命だ。よろしく頼むぞ」
「はい!! シー様、オウ様。期待を裏切らないよう精一杯頑張ります」
「精一杯頑張るではダメなのよ。必ず、死んでもやり遂げるのよ。これだから男は……」
「ハハハ、テイは相変わらずだな。だが、テイの指導も鍵だ。よろしくな」
こうしてオウが合星国に亡命するという策の実行が決まった。
その後は、オウとテイを中心に、具体的な計画が話し合われた。
実行日は、今から五日後。
警察トップを解任されたオウがテイと接触するのはまずいので、俺が連絡係となった。
この日、俺はオウを包む炎の美しさに心を奪われ、なぜオウの亡命を進言したのか、それについては深く考えず、その後、思い出しもしなかった。
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