吸血鬼の初恋

選択

何処からともなく泣き声が聞こえてきた。
と思った瞬間急に、目の前が明るくなった。
あれは、小さい頃の私？
私は、10才までの記憶がない、祖母が言うには、両親を交通事故で亡くしたのと同時に神隠しにあったようで半年後何事もなく帰ってきたがその時には、記憶をなくしていたそうだ。

（そう言えば、そのあと暫くお兄ちゃんが迎えに来るっておばあちゃんが言ってたって言ってたな。）

そう思った瞬間強い風がふいた為髪を押さえると、急に男の人の声が聞こえた。

「今宵約束の時迎えに行く」

その言葉が聞こえた瞬間体が揺さぶられる感覚があったので、目を覚ますと辺りが暗く何も見えないが、一つ私にも分かることがあるここは、私の家じゃない‼️

いくらなんでもベッドが大きすぎる‼️
大人五人は、寝れそうってどうなのって言うか何で私ここで寝てるの‼️
私が必死に記憶をたどっていると、何処からともなく笑い声が聞こえてきた。

「誰⁉️」

そう聞くと、カーテンの開く音が聞こえたのと同時に、部屋に月明かりが差し込みそこに、男？の人が立っていた。
なぜ疑問けいなのかというと女性みたいに綺麗な顔をしているからだ、さっきの笑い声も女性のハスキーボイスに聞こえるが私の頭の中でこいつは、男だって言ってる。

その人は、静かに近付いて来たかと思うと急に私が座っているベットにひざまづいた。

「やっと、迎えに行くことが出来た我妻よ。」

つ・・ま？ってあの妻かなってえーっ、わ・私がこの綺麗な人の妻⁉️

「あの、あなたは誰？」

そう聞くと彼は、目を見開いた後悲しげに私を見ていた。

「君は、10才の時私の城のバルコニーに立っていたんだ、君は、寂しそうな顔をしていて唇を噛んで泣くのを堪えているのを見て側で守ってあげたいと思ったんだ、一目惚れさ、暫く一緒に暮らしていたが、きみはまだ幼すぎたこの世界の空気は君に合わなかったみたいで、だんだんと弱ってしまったからもう少し大きくなったら改めて花嫁として連れてこようと決めてたんだ、念のため記憶に鍵をかけて、でも、もう思い出しても良いかな？」

そう言うと、私の頭に手を乗せた瞬間どこかで鍵の外れる音を聴いたかと思うと、頭の中に急に、記憶が流れ込んできた。
その瞬間私は、思い出した、この人を愛しいと言う気持ちそして、再会の約束。
思い出したとたん涙が止まらなくなった。

「お・・・もい・・だした、何で忘れていたんだろう。ごめんなさい、あなたは、私との約束を果たしてくれたのに、ごめんなさい」

そう言って泣きじゃくっていると、急に抱き締められた。

「もう、君が泣くことはない、私は、君に残酷なお願いを言うのだから・・・。」

そう言うと、彼は、懐から一つの小瓶を取り出した。

「君も気付いているかもしれないが、私は、人間ではない、吸血鬼なんだ、だけど血は吸わなくっても大丈夫、太陽も聖水、十字架、ニンニクも平気だが一つだけ違うとすれば寿命の長さだ」

「寿命？」

「そうだ、私たちの先祖は不老不死だったが私たちは、違うが人よりは、1000年生きてしまう。だから、私より先に君が死ぬなんて嫌だ‼️だから、この小瓶を飲んでほしいそうすれば、君も私たちと同じときを生きることができる代わりに、君の大切な人たちとの別れを意味する。ようく考えた上でこれを飲んでもらいたい。」

言い終わった彼の顔を見ると不安そうな様子で私を見ていた。

「私の気持ちは、あなたが迎えに来てくれた事で決まっています。私は、あなたを愛しています。貴方と離れる事の方が私にとっての恐怖だわ。」

そう言うと彼から小瓶を受け取り一気に飲み干した。
苦いかと思ったが甘くって美味しかったが目立った変化は見られなかった。

「ありがとう、君を大事にする、なにがあろうと命に返っても君を守る。」

そして、私は、人間界から完全に姿を消しいままで、人に言われるがまま従ってきた私が初めて自分で決め魔界で愛する人と共に暮らすことを選んだのだ。