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死と転生の狭間

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(何だか、身体が寒い)

そう思い、目を開けると高い天井に壁画が目に入ってきた。

(ここは、どこ…?私はいったい……)

そう思うと急に、記憶がよみがえってきた。

(そうか、私はあの時…!!)

私は、身体を起こし両手で顔を覆い泣いた。
自分が死んだ事実を受け入れられないのもあったけれど、何よりもう大好きな家族にあえないことが何よりも悲しかった…。
ひとしきり泣いたとき、後から誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
その音がする方を向くも廊下は薄暗く誰が来ているのが分からない。

「誰!?」

そう聴くと、靴音の人物が廊下から出てきた。
その姿を見た瞬間、息を飲んだ。
腰までの金髪を背中になびかせてシュッとした顔に切れ長の瞳洋服は、古代ローマ人が着ていたような白い洋服を着ていた。
背中に白い大きな翼を持っていた。
神々しさとあまりのイケメンぶりに、顔が赤くなるのが分かった。

「ようやく起きたようだね、有栖」
「どうして私の名前、知ってるの?」

私は、今起きたばっかりだし彼とは初対面のはず、何で名前を知っているのか気になって聴いてみると。
彼は少し悲しそうな顔をして私を見ていた。
そのとき、前にも同じことがあったような感覚がした。
すると彼の顔から悲しそうな感じが消え、少し神妙な顔をして、口を開いた。

「私の名前は、ウロボロス死と再生を司っています。もう、感ずかれていると思いますがあなたは、あの時死んでしまいました。」

分かっていたことだとしても改めて他の人に言われるとまた目に涙が込み上げてきて、口許を手で覆った。
そんな、私を見て優しく私を抱き締めてきた。
私はそれにビックリして、涙が引っ込み顔が赤!くなった。

「ウ…ウロボロス様!? いったい何を!!」

そう言うと、抱き締めていた腕を放して顔を覗き込んできた。

「すまない、だけどビックリして涙も引っ込んだだろう 。」

言うと、確かに、彼のおかげで涙が引っ込んだ…。
彼が、私をさっきまで横になっていた。大理石のベッドに私を座らせ、彼が指を鳴らすと大理石のベッドの端に紅茶の入ったティーカップが出てきた。私がビックリして見ていると彼がその紅茶を私に差し出してきた。

「暖かい飲み物を飲むと落ち着くから飲みなさい。」

そう言われたので、紅茶を受け取り口をつけると、芳醇な紅茶の香りが口一杯に広がり、そして、身体が少し暖まり、少し冷静になってきた。

「ありがとうございます。ウロボロス様落ち着いてきました。」
「そうか、では話を続けていいかな。」
「はい、お願いします。」
「ここは、死んだものがたどり着きまた、転生を促す場所転生の間と言われている。これから有栖には別の世界に転生してもらう。」
「では、もう家族にはあえないんですね…」

そう思うだけで、また涙が込み上げてくるのを感じた。
彼は、私の肩を抱き寄せ顔が彼の胸に預けた。

「悲しそうな顔をするな、安心しろ転生するもの達に一つだけ加護を与えることができるんだ、ただ、その加護はある条件を満たしたときにだけその加護が発動する。」
「その条件って何ですか?」
「それは、自分で気づかないといけない。そうしないと発動しない、ただ、加護を与えるも誰もその条件に気づかないで、その世界で生涯を終えていく。
有栖そろそろ転生の時間だ。」

そう言うと、急に私の身体が宙に浮いてきた。

「たとえ、君が忘れたとしても、私は、忘れない、君が転生してもずっと見守ってるよ」
「どういう…、」

そう言いかけると目の前が真っ暗になって意識が遠退いていった。


彼女が転生していったのを見送ると、次の瞬間傍らに少女が現れた。

「お久しぶりです。ウロボロス様」

その少女を見た瞬間彼は目を見開いた。

「ーーーーーー」
「あら、覚えてくださっていて光栄です。」

そう言うと、少女が背伸びして耳元で囁いた。

「私は、今でもあなたを許さない。永遠に終わることのない呪い苦しめばいいのよ。」

そう言うと、高笑いしながら宙に消えていった。

「あの時、あんなことしなければ…、」

そう言いながら終わることのない苦しみに誰もいない部屋で静かに涙を流した。
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