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婚約阻止!阻止!

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「ミリアム!記憶を失ったと聞いたが本当なのか!!」

ふむ、私の名前はミリアムと言うのか。
で、この無駄にキラキラした人は、もしかしなくても父親だろう。

「は、はい・・・。私の名前はミリアムというのですか。
貴方は私の・・・お父さんなのでしょうか?」

私の言葉を聞くや否や、目幅の涙を流すイケメン。

「おおおおおお、なんという事だ!!私の可愛いミリアムが!
私を忘れているなんて!!!」

芝居がかった言葉に軽く引いていた瞬間、私を引き寄せて思いっ切り抱きしめる。

いでいでええ!!背骨、折れ、ちゃう・・・。

やめろ!幾ら今アンタの子供だからって、前世アラフォーの女に抱き着かんでくれ!
こちとら、イケメンの耐性0に近いんだからな!


「ちょ、ちょっと・・・。」

私がイケメンの背中をポンポンとタップするが、そんな事お構いなしに更にぎゅうぎゅうと
抱きしめる。
その上、頬擦りまでしてくる。

あ、あかんわ・・・。

プチっと脳内の線が切れる音がした。
自分の中で溢れ出る何かが外へと一気に放出される感覚。

「ええ加減にせえええええええええ!!!」

と、私がブチ切れるのと同じタイミングで、
イケメンが壁にぶっ飛んだ。

「ふぐおおっ!!」

え、ナニコレ?
どうやったら、こうなんの?
ぶちギレた頭がすんっと冷えた。

「あ、あの・・・大丈夫ですか?」

恐る恐る近寄る。
あ、完全にのびてる。

「どうしよ・・コレ。」


「お、おおおお嬢様・・・。今のは一体・・・。」

忘れてた。
メイドちゃんも居たんだった。

「私にも何が何だか・・・。
そんな事より、失礼なんだけど貴女の名前を、教えてくれない?」

「私の名前はリリィです。お嬢様。」

リリィ!名前もまあ、なんと可愛い!!
リリィちゃん。リリィちゃん。

「リリィちゃんね。ごめんなさい。もう忘れないようにするから、よろしくね。」

リリィちゃんは何故か、かなり慌てている。

「お、お嬢様!私なんかにちゃん付けはおやめください!」


えー。おばちゃんはリリィちゃんはリリィちゃんと呼びたい。


「リリィちゃんって呼びたいのにぃ~。」

刮目せよ!自分の美貌を利用した上目遣いのおねだりを!!
案の定リリィちゃんは、

「ふぐっ!お嬢様、いつの間にそんな技を!
っぐぐう、分かりました。もうその呼び名で良いです。」

にんまり笑ってやりました。


すると後ろから声がする。

「ふ、ふふふふ。ミリアム・・・。今のは中々の力だ。
流石私の娘・・・・。これなら第二王子の婚約者として十分・・・。」


「あん?今なんっつた?」

あ、いけない。昔の荒い言葉遣いが・・。
目の前の父親も目をひん剥いて驚いてる。

「み、ミリアム今、何か・・・声が・・・。」

「ああ、気にしないでください。今、何て言いました?」

「あ、ああ、第二王子の婚約者・・。」

はあ、やはりそうか。
という事は、だ。
第二王子は乙女ゲームで言う所の、攻略対象か。
避けようとしたのに、婚約者なんて絶対にごめんだ。

何としても阻止せねば。

「ミリアムどうしたんだ?」

「お父様、私は第二王子の婚約者に相応しい人間ではありません。
どうか、今一度お考え直しを。」

「え!ミリアム!何故だい!!
あんなに第二王子の事を慕っていたじゃないか!」

あちゃあ!
そう来たか。だよね~。悪役令嬢の我儘で無理矢理、婚約者になるパターン。

「頭を打って、目が覚めました。
私は、何て愚かしい事を考えていたのか。
思い上がり、第二王子の婚約者になろうなど。
私なぞは、この地でほそぼそ生きていくのがお似合いです。」

「ほそぼそ!本当に一体どうしてしまったのだ!
前は、あんなに贅沢していたのに!!」

ですよねー。部屋を見たら分かります。
見ないようにしていたけど、キラキラした貴金属が部屋の至る所に散らばっているからね!

「今までの私は忘れてください!
私はこれからは堅実に生きて行きます!」

「おおお、おおおお!
ミリアムうううううう。
でも、第二王子の婚約者はミリアムに決定しているから。」


「くそがっ!!!!!」


「くそ!?」




あああああああ!
いやだああああああああ!!

どうする、どうする。




はっ!
良い事思いついた!!!



破棄されればいいんだ!
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