転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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聞いた事のある台詞だなぁ~

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「ミリアム様、ジョセフ様がお待ちですよ。」

リリィちゃんが帰宅した私に告げる。
来たか・・・・。
私は、ゴクリと喉を鳴らす。

父親の待つ応接室へ行きたくないけど、本当に行きたくないけど不本意ながら向かう。


「お父様、ミリアム参りました。」

扉をノックして部屋に入る。

「ミリアムおかえり!」

それはそれは美しい笑顔を見せる父に無難に対応する。

「只今帰りました。」

分かり易くしょんぼりとする父。
毎度の事ながら、いい加減学習して欲しい。

私が学園に通い出してからというもの、私が帰宅した際彼は必ず両手を広げるのだ。
お帰りなさいの抱擁を所望しているらしいのだが、
私がそれに従った事は一度も無い。
そう、一度も無いのだ。

だが、諦めずに今日もまた両手を広げる。
私は一定の距離を保ち、それを躱した。

「ついこの間までは、お父様~ってぎゅってしてくれてたのに・・・。」

ぶつぶつと愚痴を零しているが、隣に居る少年が戸惑っているから、さっさと用件を済ましてくれ。

「お父様、隣の人が私の兄となる方ですか?」

私が話を切り出した。
父は気を取り直し、にこにこと笑いながら少年の背に手を置き、軽く私の前へ促す。

「そうだよ、この子が今日から僕達の家族になるシュタイナーだよ。
シュタイナー、この子はミリアム。君の妹だよ。」

シュタイナーと呼ばれた彼は、前世の私に馴染み深い真っ黒な髪、真っ黒な目をした少年だ。
だが顔面偏差値高いこの世界、兎に角顔が整い過ぎている。
顔小さいな!
なのに、目は大きくバランスの取れた位置に鎮座している。
適度な高さのシュッと通った鼻筋、唇も薄く、どれを取っても黄金比と呼ばれるに相応しい顔だ。


流石、魔王。
隠し攻略と言われても納得の美貌だ。

魔法はどう考えても闇だろうな。
魔王だし、黒だし。

ボーっとシュタイナーを眺めていると、少し遠慮がちに彼は口を開いた。

「・・・初めまして、ミリアム様。
シュタイナーと言います。
これから、宜しくお願いします。」

あ、観察しすぎて挨拶するの忘れてた。

「初めまして。ミリアムです。
これから、宜しくお願い致します。
シュタイナーお兄様。
私の事はどうぞミリアム、と呼び捨てで。」

深々とお辞儀をして、社交辞令の笑顔を見せる。
シュタイナーは白い肌がほんのり赤く色づいていく。

「う、うん。分かった。・・・ミリアム。」

もじもじしながら、返事をした。

初々しい反応に私は、萌える・・・・・、











訳もなく、私、こんな感じの反応した事無かったなぁ、と只々遠い目をしていた。


「ミリアム、ミリアム!」

「!はい、何でしょうか?」

いけない、いけない。思考が時間旅行していた。

「大丈夫かい?」

父が心配そうに私を見る。

「すみません、ボーっとしてました。大丈夫です。」

「そうかい?
私は少し仕事をしてくるから、
ミリアム、シュタイナーに屋敷を案内してあげてくれるかな?」


「分かりました。」

この段階ではまだ友好的な態度を取っていた方が良いだろう。


「よろしくね。」

父は部屋を出ていった。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


沈黙。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


沈黙。
気まずい・・・。

「・・では、行きましょうか。」

「う、うん。」

私達は応接室から出た。

まず、何処を案内すれば良いものか。
思ったのだが、私も記憶が飛んでるからそこまでこの屋敷に詳しくない。
なので彼に案内すべき所が分からない。


「お兄様は何処か行きたい場所とかありますか?」

本人に聞いてみよう。

「・・・え、ええと、・・・。」

考え込んでしまった。

「・・・・・・お、御手洗いの場所とかは分かりますか?」

「あ、まだ、かな?」

「じゃあ、まずはそこを案内します。」

私達は、御手洗いの場所へと向かった。

「此処が、御手洗いです。」

御手洗いの扉を開ける。

「御手洗い場の癖に無駄に広くて、落ち着かないかもしれませんが、慣れるのでそれまでは我慢してください。」

「う、うん、分かった。」

偏見だが、お金持ちの家って、トイレもデカいよな~。
最初は違和感を感じたが、今はもうリラックスして用を足せる。
人間の適応能力とは凄いものだ。


「さて、次は・・・厨房へ行きましょうかね。」

私の後にシュタイナーはひよこの様に付いて来る。

何を話したらいいのかも分からないので、終始無言である。
コミュニケーション能力の障害がここで露呈する。

今も昔も人見知りなんだよなぁー。


「あの・・・。」

シュタイナーから声を掛けられる。

「はい、何でしょう?」

良かった、話し掛けてくれた。

「僕の事、嫌なら嫌って言ってくれて良いんですよ?」

「はい?」

何の事だろうと首を傾げる。
伏し目がちにシュタイナーは話す。

「僕のこの容姿、人と違うから、皆僕の事を気味悪がって、避けるんだ。
ジョセフ様は気にしないって言ってくれたけど、
君はやっぱり気持ち悪いと思っているんだろ?
無理に僕の事を案内しなくていいよ。」

「気味悪い?何が気味悪いんですか?
顔が整い過ぎて気持ち悪いとかですか?
それなら、大丈夫ですよ。
お兄様の様に美形な人は学園に沢山居るので、
慣れましたよ。」

イケメン故の妬みで周りから虐められていたのか。
大丈夫だよ、おばちゃんはそんな事気にしない。


「違うよ!」

「お?」

シュタイナーが声を荒げる。

「この髪、この目の事だよ。
僕の両親は二人共茶色の髪で、緑色の目だったんだ。
なのに僕だけこんな色で。
悪魔と交わった子供だとお母さんは責められて、自殺した。
お父さんは自分の子で無いと僕を見放した。
ジョセフ様はそんな僕を引き取ってくれた。
嬉しかったけど、君の反応を見たら歓迎されてないのが分かる。」

おお、何か聞いた事あるぞ、この感じは。
不義の子と言われて冷遇されて、人の愛情に飢えた子供という設定だな。
ここで、愛情を与えたら後々面倒な事になりそうだから、
当たり障り無い大人な対応をしよう。



シュタイナー君、私は気持ち悪いと思っていないよ?
ある意味それよりも酷いとも取れる感情を持っているんだよ?


皆様、私は、とても酷い人間です。









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