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結果オーライ?なのか?

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「ああ、すみません。
私、初めましての人が得意で無いので、
お兄様がという訳じゃあないですよ。」

「え・・・。」

シュタイナーは面食らっている。

「私、人見知りなんですよ。
だから、大抵の人にはこんな感じなんです。
気を悪くさせたなら、すみません。」

「え、い、いいよ!謝らないで。」

シュタイナーは手を大きく横に振る。
目に見えて分かるほど混乱しているな。

「で、髪の毛と目、の話でしたっけ?」

大きく肩が震えるシュタイナー。
そんなにビクつかなくてもなのに。


「結論から言うと、特に気にしてませんよ。
貴方の髪や目が黒くても、金でも、銀でも、青でも、何色でも。」

「え、え?え?」

今度は目がこれでもかっていう位、大きく開いている。


「人間なんて多種多様な生き物なんですから、髪の色や目の色がどうだろうと、内容物は一緒ですよ。
両親と違う色の子供が居たって何ら不思議では無いと私は思いますけどね。

遺伝子的に黒という因子がある可能性もあるのに、
悪魔と性交したなんて、そちらの方が可能性としては低いでしょう。」

「い、いでんし?」

あ、この世界にはその言葉は無いのか。

「いえ、気になさらず。
兎に角、私は別に貴方の髪や目が黒だからと言って気持ち悪いとは思わないという事です。」

「ほ、本当に?」

信じられないのか確認してくる。

「本当です。」

顔が無表情なせいか、あまり信用されていなさそうだな。
疑心暗鬼っぽいシュタイナーに困窮する。

「うーん、どう言ったら、信じて貰えますかね。
私、どうも表情がほぼ死んでるらしくて、
言ってる事が中々伝わらなくて困っているんですよねぇ。
聞いた事ありませんか?
氷の令嬢って言われてるみたいなんですよ、私。」

「聞いたことがある。」

「あ、ありますか。
本心からの言葉でも、顔がこう、デフォなもんで。」

「で、でふぉ?」

「ああ、済みません。
これが基本の表情で、これを笑顔にしようとしたら。」

口角を無理矢理上げる。

「!!??」

シュタイナーが引いている。

「ね、気持ち悪いでしょ?無理矢理笑顔を作るとどうしてもこうなるんです。
さっきの笑顔も、凄く楽しい事を考えて漸く出来た表情なんです。」

「そ、そうなんだ。」

「それを考えたら、私の方が人間的に気持ち悪いと思いますよ。
だからお兄様、心配しないでください。」

自分で言っていて段々良く分からなくなってきた。
気持ち悪いと思っていない事がどうにか伝われば、シュタイナーがおかしくなる事は無い筈。

伝われ!

もう一回口角を上げて笑顔を作って見せる。

「ぶはっ!何、その顔!!」

お?

「綺麗な顔が台無しじゃないか!ふふふ。」

笑っている。良かった。好感触だ。

「申し訳ない。笑顔を見せて他意は無い事を伝えたかったのですが。」

「全然笑顔じゃないよ!変な顔をしているだけだよ!」

え!そうなの!?
口角上げとけば、笑顔になってると思ってたのに。


「ええ・・・。鏡見ながら練習していたのに・・・。」

「練習してそれなの!?」

そうなのだ。
実は攻略対象と言われる人達や、
学園に来ての自己紹介の時の笑顔とかは、
全て楽しい事を考えたり、思い出したりした、
単なる思い出し笑いなのだった。

大体がジェフに今日はステーキですって言われて、肉!肉!肉!と浮かれている意地汚い笑いと、
リリィちゃん可愛いなあ、
アリス本当に可愛いわ、あの柔らかい体たまんねえよ!
という変態丸出しのドスケベ笑いなのだ。

「本当、どうしようもないポンコツなんです、私。
なので、お兄様を気持ち悪いとか言ったら、全人類から総スカンを食らいますよ。ははは。」

自分で言ってて自己嫌悪に陥る。
私は、何故こうなのだろうか・・・。

「あ、あの!だ、大丈夫!笑顔なんて、無理に作らなくても、
いつかは自然と身に着くから!
ね、気にしないで!
そんなに落ち込まないで!
落ち込んでるのかな?落ち込んでるんだよね?」

物凄く励ましてくれるシュタイナー、
疑問符な所が若干気になるが、
どうにか信じて貰えただろう。

「こんなポンコツな妹ですが、
宜しくお願い致します。
気になる様であれば、極力関わらないようにしますので、安心してください。」

「僕の方こそ、宜しくね?
関わらないとか言わないで仲良くして欲しいな?」

控え目に首を傾げるシュタイナー。
ふむ、魔王でなく、小悪魔みたいに見える。

「分かりました。」

そう頷くと、ぱあっと明るい顔で頬笑む彼を見て、
魔王になる片鱗が見えず、一安心した。

すると、シュタイナーは思い出したように私に言う。

「あ、そうだ。
僕もミリアムと同じ学園に通う事になったんだけど・・・。
大丈夫かな?」

「大丈夫とは?」

「僕がミリアムと兄妹になって、ミリアムが悪く言われたりするかもしれないから・・・。」

ああ、なるほど。
私を心配してくれているのだな。

「大丈夫ですよ。
悪く言われたりしても、気にしません。
逆にお兄様、もし何か心無い言葉を浴びせられたら、言って下さい。
そいつ等をブチのめしてやりますんで。」

「ブチのめすって・・・。」

「だから、お兄様は堂々として居て良いんですよ。
もう、貴方を誰も悪く言わせませんから。」

「・・・!!ミリアム・・・。」

虐めとかで、魔王様が爆誕されては敵わん。
ドンと胸を叩き、また口角を上げる。


「ふはっ!ありがとう!ミリアム!!」

「いえいえ、どういたしまして!」

私達は打ち解ける事が出来た。











「って言う感じに収まりました。アリス。」

「収まりましたって・・・。」

「うん?」

「・・・いや、いいわ。魔王が誕生しなければそれで。」

「褒めてください、アリス。」

「ん?ああ。良くやった。」

アリスは親指をビッと立てウインクする。
求めていた物では無かったけど、可愛いから良いです。

「ありがとうございます!」



お兄様と仲良く学園に来た事についてアリスに追究された次の日の朝の出来事でした。








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