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念願の対面
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アリスに尋問される少し前の話。
シュタイナーが学園に通うので、一緒に行く事になった。
いつも徒歩で通っていると言うと、シュタイナーはとても驚いていた。
まぁ、貴族の令嬢なら馬車とか使うのだろうが、何故かの徒歩。
私も理由が分からない。
父が馬車に良い思い出が無いから、極力乗りたくないし、娘の私も乗らせたくないそうだ。
とても悲しそうに語っていたので、深くは言及すまいと思っていたが、今更気付いた。
あれ?私母親居なくね?
もしかしたら、もしかすると、だ。
父は自分の妻を不慮の事故で亡くしているのではないか。
それが馬車の事故とかなら、馬車嫌いも納得できる。
最愛の人を亡くす悲しみは途轍もなく辛いのだ。
ここは父の想いを尊重して馬車には乗らないと決めた。
憶測であるので、シュタイナーに話す事はせず、
「健康の為に歩きたいです。」
そう言うと、
「ミリアムは凄いねぇ。」
と、何故か褒められた。
気恥ずかしく感じて、凄くは無いです、とだけ返し、シュタイナーと二人で学園まで歩いて行った。
シュタイナーの言う事が良く分かった。
街中を歩いていると、私一人が歩いていた時とは違う種類の視線を感じる。
感じると言うか、シュタイナーに対しての視線なのだが。
すれ違う人達はシュタイナーを見ると、
恐怖や蔑みの目をして、ヒソヒソと話す。
「何?あの髪の色。目もだけど、気味が悪い。」
「まるで死神のようだ。」
「魔物に取り憑かれたんじゃないか?」
おーおー、好き勝手に言ってるな。
シュタイナーの様子を窺うと、やはり落ち込んでいるのが分かる。
「気にしたら負けですよ、お兄様。」
「でも・・・。」
「堂々とする!」
私はシュタイナーの背中をパンッと叩く。
それに驚いてシュタイナーの背筋がピンと伸びる。
「言わせておけば良いんです!お兄様の事を分かってくれる人が居るのですから、
自信を持って下さい。」
「うん!」
シュタイナーの元気の良い返事。
そう言いながらも、私は内心腹が立っている。
「この世界でも、くだらない事があるものですね。」
「ミリアム、何か言った?」
「いいえ、何も。」
学園に着いたら着いたで、また奇異の目で見られる。
「ミリアム様と一緒に居る男は誰だ?」
「あの容姿・・・、一体・・・。」
生徒の方々を、一瞥する。
皆一様にビクリと肩を震わせて目を逸らす。
私は態と大きい声でシュタイナーに話しかける。
「それでは、お兄様。理事長室へ行きましょう。」
一気にどよめく人達。
「ミリアム様のお兄様!?」
「全然似てない!」
「どういう事だ!?」
騒然とする場を後に、理事長室へ向かう私達。
「ミリアムは、人気者なんだね。」
シュタイナーに言われる。
「どうなんでしょうね?見世物みたいな感覚に似ていると私は思いますよ。
人気とはまた違う気がしますけど。」
「そんな事無いと思うけど・・・。」
「まぁ、私は別にどう思われても良いですので、今はお兄様が良い学友達が出来る様に、尽力しますよ。」
シュタイナーははにかんだ笑顔を私に向ける。
「ミリアムは優しいね。」
優しいとか言われたこと無いので、複雑な気持ちになる。
「私は優しくないですよ。
自分の内に入れた人が、悪く言われたり、何かされたりする事が我慢ならないだけです。」
お兄ちゃんが欲しかったので、
シュタイナーは例え血が繋がっていなくても、
私のお兄ちゃんなのだ。
お兄ちゃんが理不尽な事をされていたら、怒るよ。
「僕、アッカーマンの家に来て良かったな・・・。」
とても嬉しそうな笑顔。
こんな笑顔の出来る人が魔王になる要素があるなんて、
恐ろしい世界だ。
理事長に挨拶をして、シュタイナーを残し教室へ。
どうやらこの学園は、年齢とか関係なく皆同じ授業を受け、
修了試験に受かった人間が卒業出来るというシステムらしい。
おっと、困った。
私卒業出来るかな。
なので、私とシュタイナーは同じ教室なのだ。
私が教室へ入ると、全員の視線が私に注がれる。
素知らぬ顔で席に着く。
「ミリアム。」
ノエル王子に声を掛けられる。
「何でしょうか?」
「あの、先程のミリアムと一緒に居た男・・・、
ミリアムは兄と言っていたが・・・。
本当なのか?」
おずおずと王子が遠慮がちに聞いてくる。
「はい、と言っても血が繋がっては居ませんが、
アッカーマンの跡取りとして迎えられた方です。」
「そ、そうか・・・。」
王子はそれ以上、喋る事はなく考え込んでしまった。
「どうしよう・・・。また、ライバルが増えてしまう・・・。」
王子はそう呟いていたらしいのだが、私はこの後の事に頭が一杯で全く耳に入っていなかった。
学園が終わり、シュタイナーと帰宅後すぐ、身支度を整えアリスと待ち合わせをしてギルドへ向かった。
家を出る際、シュタイナーに何処に行くのかと聞かれ、
「大好きな人と一緒に、最愛の人に会いに行くのです。」
と伝えると、何だか形容し難い表情をしていた。
ポツリと
「恋人居たんだ・・・。」
と呟いていた。
まぁ、恋人と言われれば、恋人だが今世では初めましてなので、
関係性が良く分からなかったが、取り敢えずその様な感じですと濁しておいた。
アリスとギルドへ。
また鼻を摘まみながら、1階を駆け抜ける。
ギルドマスターの部屋の前で、
「アリス、私、とても緊張しています。
私の顔大丈夫でしょうか、変では無いですか?」
アリスに聞くと、
「大丈夫。いつもの様に無表情だから。」
と返って来た。
「ありがとうございます。」
微妙に自分の聞きたい事とズレた回答が返って来たが、
緊張で何故かお礼を言ってしまった。
胸に手を当て、深呼吸。
いざ!
コンコンコン。
ノックをして、部屋の中へ。
そこには、
「誰だ、お前?」
「いや、お前こそ誰だよ?」
夫と違う男が怪訝な顔で座っていた。
シュタイナーが学園に通うので、一緒に行く事になった。
いつも徒歩で通っていると言うと、シュタイナーはとても驚いていた。
まぁ、貴族の令嬢なら馬車とか使うのだろうが、何故かの徒歩。
私も理由が分からない。
父が馬車に良い思い出が無いから、極力乗りたくないし、娘の私も乗らせたくないそうだ。
とても悲しそうに語っていたので、深くは言及すまいと思っていたが、今更気付いた。
あれ?私母親居なくね?
もしかしたら、もしかすると、だ。
父は自分の妻を不慮の事故で亡くしているのではないか。
それが馬車の事故とかなら、馬車嫌いも納得できる。
最愛の人を亡くす悲しみは途轍もなく辛いのだ。
ここは父の想いを尊重して馬車には乗らないと決めた。
憶測であるので、シュタイナーに話す事はせず、
「健康の為に歩きたいです。」
そう言うと、
「ミリアムは凄いねぇ。」
と、何故か褒められた。
気恥ずかしく感じて、凄くは無いです、とだけ返し、シュタイナーと二人で学園まで歩いて行った。
シュタイナーの言う事が良く分かった。
街中を歩いていると、私一人が歩いていた時とは違う種類の視線を感じる。
感じると言うか、シュタイナーに対しての視線なのだが。
すれ違う人達はシュタイナーを見ると、
恐怖や蔑みの目をして、ヒソヒソと話す。
「何?あの髪の色。目もだけど、気味が悪い。」
「まるで死神のようだ。」
「魔物に取り憑かれたんじゃないか?」
おーおー、好き勝手に言ってるな。
シュタイナーの様子を窺うと、やはり落ち込んでいるのが分かる。
「気にしたら負けですよ、お兄様。」
「でも・・・。」
「堂々とする!」
私はシュタイナーの背中をパンッと叩く。
それに驚いてシュタイナーの背筋がピンと伸びる。
「言わせておけば良いんです!お兄様の事を分かってくれる人が居るのですから、
自信を持って下さい。」
「うん!」
シュタイナーの元気の良い返事。
そう言いながらも、私は内心腹が立っている。
「この世界でも、くだらない事があるものですね。」
「ミリアム、何か言った?」
「いいえ、何も。」
学園に着いたら着いたで、また奇異の目で見られる。
「ミリアム様と一緒に居る男は誰だ?」
「あの容姿・・・、一体・・・。」
生徒の方々を、一瞥する。
皆一様にビクリと肩を震わせて目を逸らす。
私は態と大きい声でシュタイナーに話しかける。
「それでは、お兄様。理事長室へ行きましょう。」
一気にどよめく人達。
「ミリアム様のお兄様!?」
「全然似てない!」
「どういう事だ!?」
騒然とする場を後に、理事長室へ向かう私達。
「ミリアムは、人気者なんだね。」
シュタイナーに言われる。
「どうなんでしょうね?見世物みたいな感覚に似ていると私は思いますよ。
人気とはまた違う気がしますけど。」
「そんな事無いと思うけど・・・。」
「まぁ、私は別にどう思われても良いですので、今はお兄様が良い学友達が出来る様に、尽力しますよ。」
シュタイナーははにかんだ笑顔を私に向ける。
「ミリアムは優しいね。」
優しいとか言われたこと無いので、複雑な気持ちになる。
「私は優しくないですよ。
自分の内に入れた人が、悪く言われたり、何かされたりする事が我慢ならないだけです。」
お兄ちゃんが欲しかったので、
シュタイナーは例え血が繋がっていなくても、
私のお兄ちゃんなのだ。
お兄ちゃんが理不尽な事をされていたら、怒るよ。
「僕、アッカーマンの家に来て良かったな・・・。」
とても嬉しそうな笑顔。
こんな笑顔の出来る人が魔王になる要素があるなんて、
恐ろしい世界だ。
理事長に挨拶をして、シュタイナーを残し教室へ。
どうやらこの学園は、年齢とか関係なく皆同じ授業を受け、
修了試験に受かった人間が卒業出来るというシステムらしい。
おっと、困った。
私卒業出来るかな。
なので、私とシュタイナーは同じ教室なのだ。
私が教室へ入ると、全員の視線が私に注がれる。
素知らぬ顔で席に着く。
「ミリアム。」
ノエル王子に声を掛けられる。
「何でしょうか?」
「あの、先程のミリアムと一緒に居た男・・・、
ミリアムは兄と言っていたが・・・。
本当なのか?」
おずおずと王子が遠慮がちに聞いてくる。
「はい、と言っても血が繋がっては居ませんが、
アッカーマンの跡取りとして迎えられた方です。」
「そ、そうか・・・。」
王子はそれ以上、喋る事はなく考え込んでしまった。
「どうしよう・・・。また、ライバルが増えてしまう・・・。」
王子はそう呟いていたらしいのだが、私はこの後の事に頭が一杯で全く耳に入っていなかった。
学園が終わり、シュタイナーと帰宅後すぐ、身支度を整えアリスと待ち合わせをしてギルドへ向かった。
家を出る際、シュタイナーに何処に行くのかと聞かれ、
「大好きな人と一緒に、最愛の人に会いに行くのです。」
と伝えると、何だか形容し難い表情をしていた。
ポツリと
「恋人居たんだ・・・。」
と呟いていた。
まぁ、恋人と言われれば、恋人だが今世では初めましてなので、
関係性が良く分からなかったが、取り敢えずその様な感じですと濁しておいた。
アリスとギルドへ。
また鼻を摘まみながら、1階を駆け抜ける。
ギルドマスターの部屋の前で、
「アリス、私、とても緊張しています。
私の顔大丈夫でしょうか、変では無いですか?」
アリスに聞くと、
「大丈夫。いつもの様に無表情だから。」
と返って来た。
「ありがとうございます。」
微妙に自分の聞きたい事とズレた回答が返って来たが、
緊張で何故かお礼を言ってしまった。
胸に手を当て、深呼吸。
いざ!
コンコンコン。
ノックをして、部屋の中へ。
そこには、
「誰だ、お前?」
「いや、お前こそ誰だよ?」
夫と違う男が怪訝な顔で座っていた。
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