転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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相変わらずのマイペース

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「で、手紙の内容は?」

アリスにせっつかれる。

「ちょっと待ってくださいね。」

もう少し余韻に浸りたかったが、私も何が書かれているかは気になるので、
早速開封してみた。

・・・・・

・・・・

・・・

・・





・・・・・・ああ。間違いない、夫だ。


「・・・・・ミリアム。」

アリスが私にハンカチを差し出す。


ぽたり。
手紙に一滴の水が。

自分の頬を伝って落ちた水滴が紙に滲んだ。
どうやら、気付かぬ内に涙を流していたようだ。

「ど、どうしたんだ!?
デイヴィッドの奴、何か変な事を書いていたのか?」

セイさんが私が泣いているのを見て慌てふためく。

「いえいえ、彼らしいな、と懐かしい気持ちになって、
そう思ったら、何か自然と出てきたみたいです。」

アリスから受け取ったハンカチで涙を軽く拭き取る。
本当に彼がこの世界に居るのだと実感して、安心したのだろうか。
涙が無意識に流れていたのには、自分でも驚いた。

彼の綴る拙い文章がとても愛おしい。
私が知っている彼と変わっていない事がとても嬉しい。
大丈夫だ、私はまだこんなにも彼の事を好きなんだ。






何回も読み返した後、手紙を折り畳み封筒に戻す。


そして、アリスの顔を見る。

アリスも心配した様子で私を見る。


「デイヴィッドさんに会えるのは数ヶ月先になりそうです。」

私の言葉にアリスは口を開けたまま固まる。
今度はセイさんを見る。

「そして、セイさん。彼が帰って来るまで、私の屋敷で生活するのは大丈夫でしょうか?」

「は?」

セイさんはいきなり何を言い出すのかと、目を大きく見開く。


「ミリアム、一体どういう事なの?」

アリスが我に返り、私に説明を求める。


「デイヴィッドさん、どうしても断れない緊急の依頼が入ったみたいで、
しかも結構、厄介な依頼の様でいつ終わるか目途が立たないそうです。」


「・・・そうなんだ。」

「こればっかりはどうしようもないですので、それはいいとして。
困った事に、セイさんの生活費を間違って持って行ったみたいなんです。」

「げ!!!本当だ!
・・・あ、あの時か・・・・。
用事があったから、アイツに金を渡して代わりに買い物して貰った時、
その金を返してもらうの忘れてた・・・・。」

セイさんは自分の懐をゴソゴソして、顔面蒼白になり項垂れる。


「で、当面の間、セイさんを家に泊めてやってくれないかと書いていましたので、
まぁ、無一文の人をそのままにはしておけないので、セイさんが大丈夫なら、ですが。」

「い、いや、俺はいいんだけど。
お前こそ、いいのか?
仮にも男を家に連れ帰るんだぞ。」

少しモジモジしながら、話すセイさんを成人男性と思う人が何人居るであろうか。

それを言ってしまうと、傷付くだろうから、
最もらしい理由を考える。


「私の家、無駄に広いので、何人住もうが問題は無いと思います。
あと、困っている人を放っておけなかったと言えば、父親も文句は言わないでしょう。
ああ、その間の衣食住は気にしないで下さい。
シェフが居ますから、一人分増えた所で大差無いでしょうし、
執事のレガートにもお客様として持て成す様、伝えておきます。」


そう告げると、セイさんの顔が少し強張った。
恐る恐るといった感じで私に問いかける。


「お、お前、いや、ミリアム、様・・・まさか貴族・・・なのか?」

ああ、言ってなかった。

「そうです。一応貴族ですね。」

セイさんは顔色が悪くなり、汗をダラダラと掻き始めた。
そして、直角とも言えるほど腰を折り曲げる。


「申し訳ございませんでした!!!
貴族の方とは知らず、大変なご無礼を働いてしまい、
大変申し訳ございませんでしたあああ!!」

「はえ?セイさん?」

セイさんの余りの勢いに、間抜けな声が出る。

「平民である、お・・・私などが、あのような発言をしてしまい、
許して下さいとは、言いません。
どのような罰も受けます。
何なりと申し付けください。」

「セイさん。」

「ああ、ですがご慈悲を頂けるなら、死罪だけはどうか・・・。
いいえ、私が決める事ではありませんね。
どうぞ、罰をお言いつけ下さい。」

私の声も聞こえていないのか、先程とは打って変わったセイさんの口調が変な感じがする。

「セイさん、取り敢えず頭を上げて貰えませんか。」

私の声でのろのろと体を起こすセイさんは、
真っ青な顔をして震えている。

私には嗜虐趣味がないので、そんな顔をされても、
どうしたもんかと、困ってしまう。

えーと、怒っていたのは確かなんだけど、
それを正直に言えばセイさんが今度は土下座しかねないので、発言には充分注意せねばなるまい。

「あー、ええと、それだけ謝って頂けたので、
もういいですよ。
あともうそんな畏まった話し方も止めて貰えれば、
助かります。」

「ですが、お・・・私は平民ですので・・・。」

俺を言い直している辺り、敬語を使う事がそんなに慣れていないのであろう。
可哀想な位、縮こまっている。
何か私が虐めている様な構図になっていないか?
勘弁してほしい。

「さっきまでの話し方に戻してください。」

「いや、それは、ミリアム様が貴族のご令嬢だった事を知らなくて。」

「戻してください。」

強調する。ミリアム様呼びも何か変な感じだ。

「ミリアムと呼び捨てで大丈夫です。敬語もそんなに得意でないでしょう?
だから、普段通りで結構です。」

「い、いやさすがに呼び捨ては・・・。」

ふむ。
まぁ、アリスや身内以外で私を呼び捨てにしている人間は確かに居ないな。

「じゃあ、ミリアムさんで。敬語は要りませんからね。」

念を押す。
セイさんは観念したかのように肩を落とす。

「わ、分かった。ミリアムさん。」

よし。

「では、私の家に行きましょうか。」

「え!」

ん?何がえ?

「いや!無理!
貴族様の家に世話になるとか、無理!」

こちらこそ!無理!
連れ帰るのは決定事項だ。

「そう言えば、無礼を働いた罰とか言ってましたよねぇ。」

「ひっ!!」

普通に見ただけなのに、何故そんなに怯えるのだ。

「そうですね、私の家で暫く生活するという罰にしましょうか。」

「!!!??」

大きい瞳がこれでもかと開く。

「セイさんが罰を何でも言ってくれと言いましたよね?」

「うう、・・・・・はい。」

「決まりですね。さぁ、行きますよ。」

私は外へ向かおうとする。

「ミリアムに何を言っても無駄よ。
こうと決めたら、全然譲歩してくれないから。」


「・・・聞こえていますよ、アリス。」

小声で言ったつもりだろうが、残念。
私は地獄耳なのだ。

「さぁ、さぁ、帰りましょう。ロランバルトさん、今日はありがとうございました。
デイヴィッドさんが帰って来たら、また連絡お願いしますね。」

それまで、空気だったロランバルトさんがビクリと体を大きく震わせる。

「あ、ああ、分かった。」

何故、ロランバルトさんも私に怯えているのか、謎だ。





こうして、私のお友達リスト(いつの間にか作成された)にセイさんが追加されたのだった。



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