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いざ行かん!
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「残念ながら、ダンジョンの依頼が来たみたいなんだが。」
何が残念なのか理解に苦しむ。
夕食後、自分の部屋に戻ろうとしたら、私の部屋の前に居た。
どうしたのかと思っていたら、セイさんが苦々しくそう言った。
「出立はいつですか?」
「アンタ、学校あるだろ?
だからアンタの学校が休みの日でいいぜ。」
「え?いいんですか?」
依頼なのに大丈夫なのか?
首を傾げていたら、セイさんは腕を組み頷く。
「ああ、構わない。
依頼はそんなに急ぎでは無いからな。」
急ぎでない依頼?
なんだろう。
まぁ、いいか。確か休みは・・・と。
「二日後が休みなので、その日はどうですか?」
「いいぜ。なら二日後だな。準備は・・・と。
アンタ達は入口付近しか行かないなら、そんなに準備は要らないか。」
「動きやすい服装を準備しておきます。」
「分かった。」
セイさんはそう言って立ち去った。
私は部屋に戻らず、その足でシュタイナーの部屋へ向かう。
一緒に行くって約束したしな。
シュタイナーの部屋。
扉をノックする。
「はい。」
中からシュタイナーの声。
「ミリアムです。」
「え!?ミリアム!!??
あ、ちょ、ちょっと待ってて!!」
ガタン、バタン!
中で暴れているらしいシュタイナー。
何だ?エロティックな本でも読んでいたのか?
気にしないのになぁ。
「あの、部屋には入りませんよ。お伝えしたい事があるだけなので。」
多感な息子を持つ母親でもあるまいし、部屋に入って物色なんかしないぞ。
シンとなり、扉が開く。
僅かな隙間からひょことシュタイナーが顔を出す。
あら、髪の毛がぼさぼさだわ。
何してたのか?
三点倒立でもしてたのかね?
「お兄様、どうしたのですか?」
「い、いや。何でも無いよ!それより、どうしたの?」
酷く慌てた様子のシュタイナーが気になったが、本人が気にするなと言っているから、
気にしないでおこう。
「2日後、セイさんの依頼でダンジョンに行く事になりました。
お兄様も一緒に行くと約束していたので、お知らせに。」
「そ、そうなんだ・・・・・。2日後か・・・・。」
考え込んでしまった。
何か用事でもあるのだろうか。
「お兄様、先約がある様なら、そちらを優先させて下さい。
私なら大丈夫なので。」
「いや、行くよ。準備が間に合うかを考えていただけだから。」
私は首を傾げる。
準備?何の?
「お兄様、私達はセイさんと違って、依頼を請け負う訳では無いので、
入り口付近で散策するだけですよ?
準備なんて、動きやすい服装位で十分なんですけど。」
顔を横に振り、シュタイナーは強く言う。
「入口とは言え、ダンジョンに入るのには変わらないよ。
だから、準備しておく事に越したことはないよ。」
「因みに何を準備するおつもりですか?」
「ええと、長剣と盾と、薬草と一時的に姿を消す道具と、
魔法の効果の入った石。敵を爆発させる爆弾と、それから・・・・。」
シュタイナーは何処の戦場へ行くつもりなのか。
「お兄様、そんな物要りませんから。」
「いや、いざという時に必要になる。」
「そんな大荷物しんどいだけですって!!要りません!」
「駄目だよ!!何があるか分からないじゃないか!!」
顔だけしか出していないシュタイナーとの攻防。
頑固だな!
だが、私も頑固なんだよ!残念だったな!!
「もし、そんなに持って行くと言うのなら、連れて行きませんよ?」
「・・・!!ミリアム・・・。」
そんな悲し気な顔をしても私は譲らんぞ!!
「何回も言う様に、ダンジョンの入り口までしか行かないのですから、
もし危険ならばすぐに避難しますし、いざという時は私が魔法を使って対処します。
ですから、そんなに心配しなくても大丈夫です。」
「・・・・・・。」
「お兄様、本当に大丈夫です。セイさんも居るし。」
シュタイナーの顔が暗くなる。
「そのセイが居る事が心配なんだ。
ミリアムは何故、アイツの事をそんなに信用しているの?」
「うーん。お互いの悩みを分かち合う同士というか、なんというか。」
「悩み?」
「お互いの知り合いの事についてですね。
その方の共通認識がセイさんと一緒でしたので。」
セイさん何かしたのかな?
「・・・・・分かった。でも、せめて薬草は持って行っても良い?
怪我をしたりしたら、大変だから。」
「それ位なら。」
「じゃあ、二日後。」
そう言って、ぼさぼさ髪のシュタイナーは顔を引っ込めた。
セイさん良い人なのにねぇ。
これを機に仲良くなって欲しいものだ。
翌日、私はアリスにも伝えた。
アリスはもう大興奮で、
「おやつは幾らまでなら大丈夫なの?」
「上限は無いよ。好きなだけ持って来て。」
「・・・バナナはおやつに含まれるの?」
「若いのに良くそのネタ知ってるね。
バナナは果物だけど、おやつとして持って来たいなら持って来てもいいんじゃない?」
「・・・・ボケ殺し。」
遠足気分なアリスは冷静になってくれたようだ。
良かった、良かった。
「おやつはいいとして、動きやすい服装で来てね。
ジャージとかこの世界にあったら良かったんだけど、
残念ながら無いから、私は男性用の剣術用の服を着て行こうと思う。」
「だ、男装するの!!」
アリスが鼻息を荒く私に詰め寄る。
「男装じゃない。男物の服を着るだけ。」
「そんなの男装と一緒よ!
ああー!!スマホが無いのが悔しいいいい!
ミリアムの男装姿を保存したいのにぃー。」
「私の男装に何の需要が・・・。」
「私にあるの!!」
「あ・・・はい。」
アリスが怖いので、これ以上は反論しないでおこう。
兎にも角にもダンジョンに行く日が迫る。
私は念の為に、魔法の練習をしておく。
念の為に。
これは、フラグではない。
決して。
何が残念なのか理解に苦しむ。
夕食後、自分の部屋に戻ろうとしたら、私の部屋の前に居た。
どうしたのかと思っていたら、セイさんが苦々しくそう言った。
「出立はいつですか?」
「アンタ、学校あるだろ?
だからアンタの学校が休みの日でいいぜ。」
「え?いいんですか?」
依頼なのに大丈夫なのか?
首を傾げていたら、セイさんは腕を組み頷く。
「ああ、構わない。
依頼はそんなに急ぎでは無いからな。」
急ぎでない依頼?
なんだろう。
まぁ、いいか。確か休みは・・・と。
「二日後が休みなので、その日はどうですか?」
「いいぜ。なら二日後だな。準備は・・・と。
アンタ達は入口付近しか行かないなら、そんなに準備は要らないか。」
「動きやすい服装を準備しておきます。」
「分かった。」
セイさんはそう言って立ち去った。
私は部屋に戻らず、その足でシュタイナーの部屋へ向かう。
一緒に行くって約束したしな。
シュタイナーの部屋。
扉をノックする。
「はい。」
中からシュタイナーの声。
「ミリアムです。」
「え!?ミリアム!!??
あ、ちょ、ちょっと待ってて!!」
ガタン、バタン!
中で暴れているらしいシュタイナー。
何だ?エロティックな本でも読んでいたのか?
気にしないのになぁ。
「あの、部屋には入りませんよ。お伝えしたい事があるだけなので。」
多感な息子を持つ母親でもあるまいし、部屋に入って物色なんかしないぞ。
シンとなり、扉が開く。
僅かな隙間からひょことシュタイナーが顔を出す。
あら、髪の毛がぼさぼさだわ。
何してたのか?
三点倒立でもしてたのかね?
「お兄様、どうしたのですか?」
「い、いや。何でも無いよ!それより、どうしたの?」
酷く慌てた様子のシュタイナーが気になったが、本人が気にするなと言っているから、
気にしないでおこう。
「2日後、セイさんの依頼でダンジョンに行く事になりました。
お兄様も一緒に行くと約束していたので、お知らせに。」
「そ、そうなんだ・・・・・。2日後か・・・・。」
考え込んでしまった。
何か用事でもあるのだろうか。
「お兄様、先約がある様なら、そちらを優先させて下さい。
私なら大丈夫なので。」
「いや、行くよ。準備が間に合うかを考えていただけだから。」
私は首を傾げる。
準備?何の?
「お兄様、私達はセイさんと違って、依頼を請け負う訳では無いので、
入り口付近で散策するだけですよ?
準備なんて、動きやすい服装位で十分なんですけど。」
顔を横に振り、シュタイナーは強く言う。
「入口とは言え、ダンジョンに入るのには変わらないよ。
だから、準備しておく事に越したことはないよ。」
「因みに何を準備するおつもりですか?」
「ええと、長剣と盾と、薬草と一時的に姿を消す道具と、
魔法の効果の入った石。敵を爆発させる爆弾と、それから・・・・。」
シュタイナーは何処の戦場へ行くつもりなのか。
「お兄様、そんな物要りませんから。」
「いや、いざという時に必要になる。」
「そんな大荷物しんどいだけですって!!要りません!」
「駄目だよ!!何があるか分からないじゃないか!!」
顔だけしか出していないシュタイナーとの攻防。
頑固だな!
だが、私も頑固なんだよ!残念だったな!!
「もし、そんなに持って行くと言うのなら、連れて行きませんよ?」
「・・・!!ミリアム・・・。」
そんな悲し気な顔をしても私は譲らんぞ!!
「何回も言う様に、ダンジョンの入り口までしか行かないのですから、
もし危険ならばすぐに避難しますし、いざという時は私が魔法を使って対処します。
ですから、そんなに心配しなくても大丈夫です。」
「・・・・・・。」
「お兄様、本当に大丈夫です。セイさんも居るし。」
シュタイナーの顔が暗くなる。
「そのセイが居る事が心配なんだ。
ミリアムは何故、アイツの事をそんなに信用しているの?」
「うーん。お互いの悩みを分かち合う同士というか、なんというか。」
「悩み?」
「お互いの知り合いの事についてですね。
その方の共通認識がセイさんと一緒でしたので。」
セイさん何かしたのかな?
「・・・・・分かった。でも、せめて薬草は持って行っても良い?
怪我をしたりしたら、大変だから。」
「それ位なら。」
「じゃあ、二日後。」
そう言って、ぼさぼさ髪のシュタイナーは顔を引っ込めた。
セイさん良い人なのにねぇ。
これを機に仲良くなって欲しいものだ。
翌日、私はアリスにも伝えた。
アリスはもう大興奮で、
「おやつは幾らまでなら大丈夫なの?」
「上限は無いよ。好きなだけ持って来て。」
「・・・バナナはおやつに含まれるの?」
「若いのに良くそのネタ知ってるね。
バナナは果物だけど、おやつとして持って来たいなら持って来てもいいんじゃない?」
「・・・・ボケ殺し。」
遠足気分なアリスは冷静になってくれたようだ。
良かった、良かった。
「おやつはいいとして、動きやすい服装で来てね。
ジャージとかこの世界にあったら良かったんだけど、
残念ながら無いから、私は男性用の剣術用の服を着て行こうと思う。」
「だ、男装するの!!」
アリスが鼻息を荒く私に詰め寄る。
「男装じゃない。男物の服を着るだけ。」
「そんなの男装と一緒よ!
ああー!!スマホが無いのが悔しいいいい!
ミリアムの男装姿を保存したいのにぃー。」
「私の男装に何の需要が・・・。」
「私にあるの!!」
「あ・・・はい。」
アリスが怖いので、これ以上は反論しないでおこう。
兎にも角にもダンジョンに行く日が迫る。
私は念の為に、魔法の練習をしておく。
念の為に。
これは、フラグではない。
決して。
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