転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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もう私が魔王でいいよ

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「グギィイイイイ!!」

唸り声を上げ、私達を威嚇している。
先程のホーンキャットの親だろうか、巨大な角が二本、
貫かれたらバスケットボール程の大きさの風穴が空くだろう。

まぁ、それも貫かれたら、だけれど。

「あれだけ角が大きいのに、よく体を支えれていますよね。
角の重さでひっくり返りそうだわ。」

「こ、こんな状況で何呑気な事を言ってんの!!
あ、あんな大きなモンスター、ど、ど、どうすんのよ!!」

アリスがパニックに陥り、私の腕にしがみ付いてくる。
おほ!
いいねぇ。美少女に抱き着かれるなんて滅多にないもんね。

「バカバカバカ!!ミリアムの馬鹿!!」

またもや私の思考を読み取ったのか、瞳を潤ませ、しがみ付きながら私をポカポカ叩いてくる。

「いた、いた、いた。大丈夫だから心配しないで、アリス。」

「何が大丈夫なのよ!あんなに大きいモンスター、私達じゃどうする事も・・・。」

アリスが言いかけて止まる。
私はニヤリと笑う。
きっと悪役令嬢らしい笑みだっただろう。
アリスの耳元で囁く。
アリスの肩がビクリ震える。

「覚えてる?私のチート。オールラウンダー且つ人より三倍の能力。
一応この日の為に、攻撃魔法も実戦に使えるまでに仕上げてきたの。」

顔が真っ赤に染まるアリスの腕をするりと外し、巨大ホーンキャットの前に立つ。

「ミリアム!何を!!」

シュタイナーが叫ぶ。

「大丈夫です。これくらいのモンスターなら、倒せます。」

振り向かずに私は言う。

巨大ホーンキャットの後ろ足にはあのホーンキャットが隠れていた。

「ピキィ!ピキィ!」

嬉しそうな鳴き声を上げ、飛び跳ねている。

ヤンデレの時もそうだったが、自分では敵わないから強者に頼る姿勢が気に食わない。
モンスターなら玉砕覚悟でぶつかって来いよ!!

売られた喧嘩は買う主義。
徹底的にぶっ潰す。


私としてはすこーし虐めて倒したい。
が、後ろにひどく怯えたアリスの手前そうもいくまい。


仕方無い。今回はサクッと倒そう。

そうこうしていると巨大ホーンキャット(めんどくさいので巨ホーンにする)が私に向かって突進してくる。

「うーむ。グロ禁止となると、色々制限があるよなぁ。」

そう言いながら、最大限に強化した右手を巨ホーンの角に振り下ろす。


バキンッ!!

音を立てて巨ホーンの角は真っ二つに折れた。


「グギィ!?グギャアアアアア!!!!!」

巨ホーンの叫び声がダンジョン中に響き渡る。

うーん。風で真っ二つは、色々見えちゃうからNG。
炎も焼け焦げた匂いが酷いだろうし、直ぐに倒れないから、中々惨い。

さて・・・。

あ・・・。
ちょっとやってみたい事があるかも。

私は巨ホーンにスタスタ近付く。
巨ホーンは角を折られたショックで動けずにいた。

巨ホーンの目の前に立つ。
体が大きく震える。

私は穏やかに微笑み、巨ホーンに告げる。

「多分、苦しまないと思うけど、痛かったらごめんね?」

腕を上げ、人差し指で巨ホーンの眉間にトン、トンと触れる。

踵を返し、アリス達の元へ。

「ミ、ミリアム!?何してんの!!!」

アリスが慌てる。
私は持てる力を振り絞り、シリアスな顔で口を開く。

「お前の命はあ「わー!わー!わー!こらー!!!ミリアム!」

私の言葉を遮り!アリスが叫ぶ。
そら、駄目か。

言いたかったけど、仕方無い。


ドパァン!!!!

後ろからの破裂音。

「な、何!?」

アリスはまた私にしがみ付く。

「ああ、モンスターを倒したんですよ。」


ドチャッ。
巨ホーンは白目を剥いて地に伏す。


「え、ええ?ど、どうなってるの?」

アリスが混乱している。
私はアリスの頭を撫でながら、無駄にええ顔を決める。

「アリスの為にグロくない倒し方を編み出したの。
ふふふ。」

「聞くのが恐いけど、教えて。」

私は頷き、説明する。

「血とか内容物が出るのは嫌でしょ?
それが出ないようにあのモンスターの皮を強化したの。
それと同時に内部破壊する炎、まぁ爆弾みたいな?感じの魔法を体内に仕込んで破裂させたと。
これなら、血も何も出ないし、グロくないでしょ?
皮の強化はまだ解いてないから、染み出る事も無いしね?」

私の説明にアリスは顔色が青くなる。

「どうやったら、そんな事思いつくのよ・・・。」

私は首を傾げて考えた振りをする。

「う~ん、なんとなく?
出来るかなぁと思ったら、意外と簡単に出来た。」

「なんとなくで出来るとか、チートにも程があるわ。」

顔を手で覆い、盛大な溜息を吐くアリス。
チートに感謝だな。
アリスを、シュタイナーも守る事が出来た。

おっと、そう言えばシュタイナーは、と。
私は後ろを振り返ると、こちらもアリスと同様に青白い顔をして私を見ている。


「ミ、ミリアム。」

恐る恐る私の名前を呼ぶシュタイナーを見て、不味ったかと少しだけ思う。
まぁ、やっちまったもんは仕方が無い。
開き直ってしまおう。

「どうしました?お兄様。モンスターは倒しましたよ。」

「い、いや、ミリアム、君さっきの魔法・・・。
あんな高度な魔法、一体どうやって・・・。
しかも何も唱えていなかったじゃないか。」

だよな。
そうなるよな。

さて、どうしたもんか。


「あ、あのミリアムは元々全属性の魔法が使えるんです。
魔力量も多くて、しかも凄く勉強熱心なので、さっきみたいな高度な魔法も使える事が出来たのだと思います。
無詠唱なのも勉強したからです!!彼女はとても勉強家なんです!!」

アリスが庇ってくれた。
滅茶苦茶勉強する人間に仕立て上げられた。

ええ子や・・・。
鼻息荒くしながらシュタイナーに説明するアリスに思わず涙が出て来そうになるのを堪える。

「ミリアムが魔法がそれなりに出来るって言ってたけど、まさかこれ程とは思わなかったよ。
僕、ミリアムとアリス嬢を守るつもりで来たのに、反対に守られちゃうなんて・・・。
情けないな・・・。」

どうやら、アリスの説明で納得してくれたようだが、今度はがっくりと肩を落として落ち込みだした。

「だ、大丈夫ですよ!ミリアムがちょっとアレなだけで、私を庇って下さったじゃないですか!
シュタイナー様は全然情けなくないです!
そうです、ミリアムがアレなだけなんです。」


アレて。
人をアレ扱いとは、私の感涙の涙を返してくれ。


「そうです。私がアレなんで、お兄様は全く落ち込む必要はありません。
アレな私が悪いのです。」

ふん!私も便乗しておこう。

「ア、アレ?」

シュタイナーは困惑の表情を浮かべる。

「アレって何?」

おう、どうしようか。便乗しただけで、アリスのアレと私のアレが果たして合っているか。


「規格外なだけです!」「頭がおかしいだけです。」

「は?」 「え?」

アリスと私のアレは完全に不一致した。
お互いの言葉に怪訝な表情を浮かべて、お互いを見合わす。

「ちょっと、今の話の流れからそうなる普通?」

「そうならないから、私はアレなんです。」

「いや、それはそうなんだけど。・・・・って、自分言う?」

「事実なので、これはどうする事も・・・。
なるほど、規格外でしたか。アリス、頭が良いですね。」

「褒められてるのに、全然嬉しくない。」




「ぷっ・・・。ふふふふふ!」

私とアリスの掛け合いにシュタイナーは噴き出す。

「あははははは!君達、本当に仲良しなんだね!
そんなに息が合ってるなんて!ふふふ。」

息が合ってるのかな?
アレが違ってたのに。

アリスを見ると顔が真っ赤だった。

「アリス、どうしたの?」

「な、何でもない!」

シュタイナーはまだお腹を抱えて笑っている。
アリスは顔が真っ赤。
私は何がなんだか分からない。

近くには巨大ホーンキャットの死体。

異様な光景の中、

「おーい!今デカイ音したけど、大丈夫かー!!
って、げえええええ!!
何じゃあ!こりゃあああ!!」

何処かで聞いた懐かしい台詞を吐きながら、
コチラへ走ってくるセイさんが、
巨大ホーンキャットの死体に飛び上がって驚いた。

流石、セイさん。
落とし所分かってるね!







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