転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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坊とドラゴン

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溜息を吐きながら、階段を降りてくるロランバルトさん。

「御無沙汰しております。銀翼様。」

「うむ。大きくなったの、坊。何年振りかのう?」

「38年程かと。ですから、坊は止めて下さい。」

不機嫌なロランバルトさんと上機嫌な銀華さん。
銀翼様とロランバルトさんは言った。
銀華さん以外にも名前があったのだな。

銀華さんはカラカラ笑いながら言う。

「坊は坊じゃ。」

「二人はお知り合いなんですね。」

私が口を挟む。
銀華さんはニコリと笑い答える。

「うむ。妾はこの坊が涎を垂らした赤子の頃から知っておるぞ。
妾の尾を母の乳と勘違いしておっての、ようしゃぶりつかれて閉口しておったのじゃ。」

「ぎ、銀翼様!!そのような事をこんな場所で仰らないで下さい!!」

ほ~ん?へ~ん?ほ~ん?

ロランバルトさんがねぇ~。

「何だ、その目は?」

生温い目でロランバルトさんを見ていたら、因縁付けられた。
いやぁねぇ。恥ずかしい過去を暴露されたからって、逆ギレするなんて。

私はポムとロランバルトさんの肩を叩き、無駄にエエ顔で言ってのける。

「変なプライドなんて捨てちゃえYO!私の過去に比べたら、ロランバルトさんのなんて可愛いもんですよ。
赤子だけに、ね。」

「・・・・・・・・・・。」

あ、凄い形相で睨まれた。
こええ。

「まぁ、人には触れられたくない過去もありますね。
ほほほほ~。」

そう言って、ロランバルトさんに背を向ける。

・・・見てる。
すんごい見てる。
見てるというか睨んでいるの方が正しいな。

「坊がここの長なのかえ?」

銀華さんが微妙に助け船を出してくれたお陰で、ロランバルトさんの注意が銀華さんに逸れた。

「ええ。恐れながらハンターの取り纏めをさせて頂いております。」

「ほぉ・・・。あの坊がのぅ・・・。月日の経つのは早いものじゃ。」

目を細めて銀華さんは懐かしそうに笑う。

「銀翼様、いつもの気まぐれでございますか?」

「うん?」

ロランバルトさんの言葉に銀華さんは首を傾げる。
そしてにこやかに笑う。

「気まぐれ?ほほ、違うな。妾は純粋にミリアムを気に入ったのじゃ。
気に入ったから、こ奴と共にするだけじゃ。」

「気に入っただけ、ですか。」

懐疑的なロランバルトさんに対照的な満面の笑みの銀華さん。

「ミリアムの事を聞いてな。いや、ミリアムのでは無いな。ミリアムになる前の事かの。」

「・・・!!お聞きになったのですか? 」

一瞬、私の方を見たな。
別に言ったっていいでしょ?

「うむ。ほんに面妖な話よの。聞けば聞くほど興味が湧いてきての。
ミリアムの番にも会うてみたいし。
それならばこ奴と居るに越したことなかろう?」

「ま、まぁそうですね。」

ニコニコ顔だなぁ、銀華さん。

「もう日がな一日を過ごすのも飽いたしの。
退屈せずに済みそうじゃ。ほほほほ。」

銀華さんが私に笑いかける。

「銀華さんはこの姿で過ごして頂きますので、そんな大事にはならないかと思ったのですが・・・。」

すんごい美女なだけで、ドラゴンだとは思わないから大丈夫だと思うんだけど、駄目なのかなぁ。

「銀華?銀翼様の名?君が名付けたのか?」

「はい。マズかったですか?」

ロランバルトさんは少し考え込んでから答える。

「いや、何も問題はない。
君の屋敷に住むのはご家族も承知なのか?」

「ああ、これから父に報告しに行こうかと。
恐らくは大丈夫だと思います。」

あの父は変だが、器は大きい。
許可は得られるだろう。

「ならば、こちらからは何も言う事はないな。
言えるとしたら、くれぐれも銀翼様に失礼の無い様に、という事だな。」

「ありがとうございます。」

お礼を言って、報酬を受け取る。
よし、家に帰ろう。

「あ、ミリアム嬢!」

ロランバルトさんに呼び止められる。

「はい。何でしょうか?」

言い出しいくそうに、口をもごもごするロランバルトさんに私は察し顔で肩に手を置く。

「大丈夫ですよ。坊の過去は誰にも言いませんから。」

黒歴史は私にもある。
それを他人に知られるなんて、死ぬよりも辛い。

「ちがっ!!違う!!坊呼びするな!!
デイヴィッドの事だ!!」

顔がというか耳まで真っ赤だ。
揶揄い過ぎたな。

「デイヴィッドさんがどうかされました?」

何も無かったかのように尋ねる私に、ロランバルトさんは体をプルプルさせている。
まるで小型犬のようだ。
咳払いして心を落ち着かせたようで、ギルドマスターの顔に戻る。
さすが大人だ。


「エンペラードラゴンが予想外に強大な力を有していて、苦戦を強いられているみたいで近々増援を依頼するつもりだ。」

帝王と冠があるのは伊達ではないという事か。
うーん。心配だなぁ。
あの人、苦戦しながら敵を倒すのが大好きだからなぁ。
嬉々として挑んでそうだもんな。

怪我とか、いや、普通に大怪我するだろうな。
それも気にしないんだもんなぁ。

心配する身にもなって欲しいよ。

ロランバルトさんは考え込む私を少し心配そうな顔で見る。
ええ人や・・・。
さっきまで揶揄ってた私なのに。

う~ん。

「のう?妾が行って蹴散らしてやろうか?」

腕を組み考えてる私の横から、ひょこっと顔を出して銀華さんがサラッと言う。
そら、銀華さんが行けば余裕だろうけれど、それはそれで反則な気がする。

「有難い申し出ですが、遠慮しておきます。」

「そうかえ?」

それ程残念と思っていないみたいで、まるで私が断るのを分かっていたようだった。

「自分達の問題は自分達で解決しないと。」

「んふ~。」

あら、何か嬉しそうな顔をしているな銀華さん。

「妾の力を頼る事をしないお主だから、気に入ったのじゃ。
のう、坊。ミリアムは良い人間じゃろう?」

あ、何か試されてました?
これで、是非ともお願いシャス!!とか言ってたら、不味い事になってた!?

凄く渋い顔のロランバルトさん。
不服そうだな!

「性格はどうかは分かりませんが、性質は良いのでしょう。」

性格は悪いと言いたいみたいだな。
まぁ、私も自分で性格が良いとは思っていないから、気にしない。

銀華さんは満面の笑みでロランバルトさんを見る。

「じゃろう?だから気に入ったのじゃ。ああ、永く生きておって良かったのう。
こんな掘り出し物に出会うとはのう。」

掘り出し物とな!
そんな値打物でも無いですよ。

「もし増援で私が行っても良いのなら、参加させて下さい。
どこまで出来る分かりませんが、最善を尽くします。」

ロランバルトさんに私の意志を伝える。

「承知した。」

ロランバルトさんも頷く。

「じゃあ、家に帰りましょうか。」

私は銀華さんと、空気の様に存在を消していたセイさんに言う。
二人は頷き、ギルドを後にする。


さて、次は父と義兄だな。

シュタイナー、大丈夫かなぁ・・・。








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