転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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(金の)亡者

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ざわ、ざわ、ざわ

ある一定の距離を保ち、学園の生徒達は私とシュタイナー(主にシュタイナーをだが)を見て、目を大きく見開いた後、ひそひそと囁く。

「シュタイナー様、だよな・・・?一体、あの出で立ちは・・・?」

「何かあったのか・・・?」

「昨日までは普通だったよな?」

「やはり悪魔の血を・・・!!」

そう呟こうとした男に私は冷気を放ちながら睨みつける。
堪らずその男は口を噤み、一目散にその場から離れた。

「ミリアム、いいの。私がそんな風に言われるのは覚悟していたから。」

「お兄様が大丈夫でも、私が腹を立てるのは自由でしょ?
私はあの男が単に気に入らなかったんです。」

道中、悩んだ末、お兄様と呼ぶ事にした。
兄である事には変わりないし、一々呼び方を変えるのも面倒だと考えた。

「ふふ。ありがとう。」

そう言って笑うシュタイナーは恐ろしく綺麗だった。
怪訝な顔でこちらを見ていた人たちが、その笑顔を目の当たりにして、一瞬で顔を赤くさせて固まる。

ま、魔性の女・・・。
いや、違う。
魔性の男。

穏やかな学園生活は諦めたが、これは大いに荒れる気がする。
頭を掻き、自分の手を見たら・・・・・。

数本の毛が抜けていた・・・・。


・・・ふぁっ!!!!

もう心労が髪に!?

「お兄様。」

「なぁに?」

「一晩で髪が伸びたのは何か薬を使ったのですか?」

育毛剤であれ、育毛剤であれ!!

「え?ううん。これは魔法で伸ばしたの。」

「その魔法、詳しく。」

「え?ミリアム?どうしたの?目が怖いわ。」

ええい!こちとら、切羽詰まってるんだよ!
このままいったら、美少女なのに頭はオヤジという切ない事になるんだよ!

まだ若いからと余裕ぶっこいてたら、あっという間だからな!

中身がオッサンなのが影響されてんのか?
髪の毛と精神は連動してるのか?

お願いだから、シュタイナーその発毛魔法、育毛魔法を教えてくれ!

シュタイナーは何故か一歩後退りする。

「わ、分かったわ。帰ったら教えるから。ちょっと、ミリアム、目が怖いの。」

「本当ですね?言質、取りましたからね。」

シュタイナーは無言で何回も首を縦に振る。

ようし。これで禿山の一夜にならずに済む。


・・・待てよ。これを、どうにかして商品、いや商業化出来れば、一山当てれるんじゃなかろうか。
そうすれば、左団扇で暮らせる。

ハンターも楽しいけど、楽して生きたいのが私のモットーだ。

シュタイナーに魔法を教えて貰って、自分で改良して、商品として売り出して・・・・。

「ふ、ふへへへ。」

思わず下品な声が出た。
シュタイナーがギョッとした顔で私を見てくる。

「ど、どうしたの?」

私はスンといつもの無表情に顔を戻す。
いかん、いかん。

「いえ、何でも無いです。」

「そ、そう?じゃあ、早く教室に行きましょう。」

「はい。」

腑に落ちない顔だったが、私が言わないのを悟ったのかシュタイナーが先を促す。


うえへへへ。







連れ立って教室に入ると、此処でもやはりシュタイナーに皆の視線が集まる。
まぁ、そらそうだわな。

「お、おい。ミリアム。」

ナル王子が意を決して話し掛けてきた。
さすが、攻略対象(最早死に設定)。
他が避けて通る道を果敢に挑んでくるな。

「と、隣のレディは・・・、いや、レディなのか、どっちなんだ・・・。」

ナル王子が頭を抱えだす。
いや、どっちでもいいぞ。

「ええい!!とにかくその人は、シ、シュタイナー・・・なのか?」

やけくそ気味に言い放つ。
私は素直に頷き、こう述べる。

「はい、私の兄のシュタイナーです。訳あってこのような装いですが、紛れもなく本人です。」

「そ、そうか・・・。訳というのは・・・・。」

私の様子を窺いながら、ナル王子(そういや、この人名前なんだっけか。)は私に聞いてくる。

う~ん。
う~ん、私は考える。
これさ、もしかして聞いてくる人間一人一人に説明していく事になるのでは?

それは、非常に面倒臭い。
同じ事何回も説明するのが、兎に角嫌いな私は、この目の前のナル王子だけに伝えただけでは済まなくなるだろうと考える。

待てよ。
王子発信で広げて貰うのは、どうだろうか。

・・・伝言ゲームみたいになって、話が変わってしまう恐れがあるかもしれない。

「私からお話致します。殿下。」


考えあぐねていると、横からシュタイナーが助け舟を出してくれた。

ラッキー!
まぁ、私が説明するより本人が説明する方が早いわな。

「ここではなんですから、向こうでお話しましょう?」

「う、うむ。」

ナル王子はシュタイナーに少し距離を置きながら、
教室を出る。
その後ろにあの三人衆も付いていく。
そうか、一応あいつら王子の側近的な役回りだもんな。

説明せずに済んだ。
と、ホッとしたのも束の間。


ゾクリッ!
強烈な殺気を感じた私は、その殺気が飛んできた方向を向く。



アリスだ。
人を殺しかねない目をしている!
何て言う目が出来るようになったの・・・!!


アリスは今朝の私がセイさんにしたように、顎をしゃくりながら、私にアイコンタクトをする。


『ちょっと、面貸せよ?』

わーい。
アリスからの呼び出しだー!

確実に怒られるであろう呼び出しだが、アリスに怒られるとか、ご褒美でしかないので私は軽快な足取りでアリスの元へ。

スキップで馳せ参じたのが、いけなかったのか。
アリスのこめかみにビキビキと青筋が浮き出ていた。

ひょえ~!!
こんな物騒なヒロイン見た事ねぇわ!

「随分、余裕じゃないの・・・?」

声も2オクターブ位、低いぜぇ!!
声域広いな、アリス!!

「いやぁ~、そんな事無いですよ~。内心、冷や汗もんですぅ。」

「ほぉ・・・。」

あれ?
激おこですか、激おこですね!
(おばさんが使うと痛々しいけど、敢えて使ってみる。)
しかも口調まで変わってるな。

コイツはちゃんとしないとなるまい。

居住いを正す。

「・・・いつもの所、行くわよ。」

「承知。」

「・・・。」

あれ、また睨まれた?
凄く真面目に答えたのに。

アリスの後に続いて教室を出る。

アリスと最初に話したイイ感じの建物の裏へ。

「そこに座りなさい。」

「へい!!」

素直に応じる。
シュバッとアリスの指差す階段の所に腰掛ける。

「・・・・アンタ、この状況でよくそんな顔が出来るわね。」

うん?
首を傾げる。

アリスは長い溜息を吐く。

「はあああああああ。何か馬鹿らしくなったわ。
取り敢えず聞きたい事は分かってるわよね?」

「シュタイナーの事よね。」

「そう。」

アリスは頷く。

「話せば長くなるけどいいかしら?」

「大丈夫。」

「では、」

私は昨日の出来事を順序良く話そうと口を開く。






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