転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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いやいや、それはない

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はてさて、此処は救護施設。

中に入ると、何人かが治療を受けていた。
女性は・・・・一人だ。

「マルティナ!!」

セイさんが中に入るや否や、一目散にマルティナさんの元へ駆けていく。

ほう・・・?

「セ、セイ!?」

簡易ベッドに座るマルティナさんはセイさんの姿を見て目を大きく見開く。

「ど、どうしてお前が此処に?」

そう言うと、マルティナさんは私の姿を捉え、何故か表情を歪ませる。
ん?

見てる、めっちゃ見てる。
見てるというより睨んでる。
ええ?初対面だよね?

あんな、敵意剥き出しとかある?

理由は分かるけど、女性にあんな目で睨まれるのは軽く凹むなあ。

私はマルティナさんに努めて丁寧に、且つ優しく挨拶をする。

「初めまして。私はミリアム・アッカーマンと申します。
ギルドよりエンペラードラゴンの討伐の加勢に来ました。」

そう言うと、マルティナさんは険しい表情から一転驚愕の表情になる。

「・・・話は聞いていたが・・・・。アンタの様な華奢なお嬢さんが来るとは思わなかった。
・・・ああ、マルティナだ、よろしく。」

当然だ。
私も高難度の依頼に私が来たらそう思う。

「この人は只のお嬢さんじゃないから、大丈夫だ。
というか、既にエンペラードラゴンの討伐は完了した。
この人、一人で、な。」

何故かセイさんが誇らしげだ。
その言葉を聞き、更に驚愕する。
これでもかと目が見開いている。

「う、嘘だろ?こんな・・・弱そうな・・・女が・・?」

見た目は深窓の令嬢。
中身はおっさん。
その正体は!





・・・何でしょう。


自分で言っておきながら何も出て来なかった。
いやぁ、まいった、まいった。


「なぁ・・・。あいつ、一人でブツブツ言ってるぞ。」

「・・・放っといてあげてくれ。」


なんか、変な人間認定されたぞ。

「あの、マルティナさん。」

「なんだ?」

私は気にせずマルティナさんに話しかける。

「マルティナさんと一緒に此処に来た人は何処に?」

「ん?ああ。」

「そうだ!!デイヴィッドだよ!デイヴィッドは何処に居るんだ!?」

セイさんがマルティナさんにズズイと顔を近づける。
マルティナさんは顔が一気に赤く染まって行く。
ふふふ。
私は思わず温かい目を送ってしまう。

「あ、っちょ。セイ!」

「お前が怪我して、救護施設にデイヴィッドに連れられて行ったと聞いて。
ミリアムさんはデイヴィッドに用があるから此処に連れて来たのに。
アイツ何処に行ったんだよ。」

「セ、セイ。ち、近い・・・。」

「近い?何が?」

セイさんは捲し立ててるけど、マルティナさんの耳には入っていない。
セイさん、セイさん。
それ位にしておきなさいよ。

「セイさん、少し落ち着いて。」

「あ、ああ。ていうか、アンタは何でそんなに落ち着いてるんだ。」

私はふうと息を吐く。

「いやね。もうここまで来ると、何かどこまですれ違うか楽しもうかと思いましてね。」

私はもう悟っていた。
此処にデイヴィッドが居ない。
私は分かっていた。

「此処には居ないんでしょう?」

私はマルティナさんに顔を向けて問い掛ける。

「あ、ああ。私の怪我が思ったよりも傷が深くて、薬草が足りなくてな。
デイヴィッドは街へ取りに戻ったんだ。」

ほらね?
すれ違いだよ。
笑うしかない。

「ははははははは。」

「ミ、ミリアムさん!?」

あ、本当に笑ってしまった。

「セイさん。私はデイヴィッドさんにいつ会えるのでしょうかね?
何でしょう。バ神の陰謀か何かですか?
そうですね。全てアイツが悪いのです。
そもそもの此処に来たのもアイツが良く分からない事を言いだしたせいですし。
あの野郎、今度会ったら八つ裂きにしてやりますよ。
いや、八つ裂きよりも三十二裂きにしてやる。
ふ、ふふふ、ふはははははは!!」

「・・・ひいっ!!」

「お、おおおおい!あの人から、禍々しい魔力が染み出てるぞ!?
一体どうなってんだ!?」

セイさんは蒼褪め、慄く。
マルティナさんもガタガタと震え、私から後退る。

ああ、もう面倒くさい。
何もかもぶち壊してやろうか。
魔王にでもなって、お尋ね者になって。
そうしたら、デイヴィッドさんが私を追って来るから自ずと会えるじゃあないか。

中々良い案じゃないか?
手っ取り早いよな!

「ようし、魔王になるか。」

「ミリアムさん!?」

「この人何言ってるんだ!?」

と言いたい所だが。

「冗談はさておき、マルティナさん。」

マルティナさんの傍で膝をつく。
マルティナさんは肩を大きく震わせて私を恐怖の瞳で見る。

「な、何だ!?」

私はマルティナさんの足に巻かれた包帯を見る。
血が滲み出ている。
処置を施したのに出血が止まらないとは、余程の怪我なのだろう。
痛々しい。
きっと今も痛みを我慢している筈。
デイヴィッドさんもそう思ったから街へ薬草を取りに行ったんだ。

マルティナさんの足に触れる。

「え?な、何?アンタ、何するんだ!」

マルティナさんは更に慌てる。
うん。思い切り恐れられてる。
私が女性を害するなんてする訳無いでしょう?

私は手に魔力を籠める。
柔らかな光をマルティナさんの足を包み込む。

「こ、これは・・・。」

マルティナさんは自分の足を見て目を見開く。

よし、使える。
治癒魔法。
何でも出来ると言われたから、やってみたらいけるもんだ。

「どうでしょうか?治りました?」

「何を・・・。!!!傷が、塞がってる?」

マルティナさんは包帯を取り去り、自分の足を見る。
ああ、良かった。
綺麗に傷が消えている。

「ああ、綺麗に治りましたね。良かったです。」

私は安堵の笑みを浮かべてマルティナさんを見る。
マルティナさんは何故か頬を赤くしていた。

え?何故に?

「め、女神・・・・。」

はい?





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