転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

文字の大きさ
101 / 126

ああ!確か

しおりを挟む
「持たぬ者?」

私は知ってそうなアリスに問う。
アリスは何故か私を睨み付けて、

「え!アンタ何で忘れてるのよ!!」

とキャン!と可愛い子犬の様に吠える。
思わずよしよしとアリスの頭を撫でる。

「え?どういう事?」

皆目見当が付かない。
私の手を丁寧に払いのけてアリスは信じられないと呟く。

「この乙女ゲームの世界の設定を話したのは覚えてる?」

静かな声で言うアリス。
その目は呆れの感情が見受けられる。

「ええと、朧気ながら。」

アリスは自分を指差し私に尋ねる。

「私の事は?」

「可愛い。」

間髪入れず答える。
アリスは顔を真っ赤にする。

「じゃなくて!!」

もう!とその場で地団太を踏むアリスを、はぁ可愛いと思いながら考える。
ええと、何だったけかなぁ。
・・・・・。



・・・・・・・・・。
駄目だ。

「アリスが可愛いしか出て来ない。」

やれやれ、もう罪作りなアリスが悪いよね、これは。
私は夫程では無いが、記憶力が乏しい。

夫ともちょっとした言い合いになる程。

『ねぇねぇ、前に食べに行こうって言ってた鶏白湯のラーメン屋さん行こうよ。』

『はぁ?何それ。そんな話聞いて無いよ、誰と間違えてんの?』

『え、えええええ?それ本気で言ってる?』

『いや、本気も何も話した事も無いし。』

『う、うわぁ・・・。こわっ!こっわ!鳥肌立った!』

『誰と話したんだよ!』

『結愛だよ!!』

・・・・・・・。ここら辺で漸く、ああ、何か言ってたような。と朧げな記憶が蘇る。
だが、ここまで私の性格が大体分かるであろう、非を認めないので、そのまま知らぬ存ぜぬを貫き通すのだ。

今回は頑張って思い出そうとするのだけれど、アリスと親友になった喜びで全部記憶が飛んでいるみたいだ。

アリスは愕然とした表情で私を見る。

「う、嘘・・・・。ミリアム・・・・。」

「あ、あは?あの私、記憶容量が8ビット位しか無いので・・・。」

「8ビットがどれくらいか分かんないわよ。」

アリスの口元がヒクヒクしてる。

「かの有名な初代ゲーム機本体の性能です。」

「いや、聞いて無いし。」

「まぁ、そんなに記憶力が良くないと言う事。」

アリスは諦めたようだ。
はあああああと長い息を吐いて、話し出す。

「あのゲームの私の設定、得意属性が無いっていう・・・。」

そう言われて漸く思い出した。

「ああ!!好きな人に染められるという話だったよね。」

「う、まぁ、そうなんだけど。言い方・・・。」

恋の魔法とかなんとか言ってたな。
アリスは続ける。

「もしかしたら、得意属性が無い、なら今私魔力自体が無いのかもしれない。」

「なるほど。」

アリスは今好きな人が居ないから、得意属性が無いし、魔力もない。
持たぬ者とはそういう事か。

「話は付いたかの?」

銀華さんは何故かニコニコして私達を見ていた。
あ、しまった。すっかり銀華さん抜きで話し込んでいた。

「あ、すみません。銀華さんが言う持たぬ者とは魔力が無い人の事を言うのですか?」

銀華さんは更に笑みを深める。

「そうじゃ。この世界は多少なりとも人間は魔力を持つ。
じゃが、この娘からは全く魔力を感じられぬ。
このような人間初めて見たものでの。
お主らの話を聞いていて、納得した。
この娘も転生してきたのであったの。」

私は頷く。

「はい。アリスはこの世界の事を私より知っているので、自分の魔力が何故無いのかが分かってるみたいですよ。」

私の言葉に銀華さんは、アリスへ体を向けて近づく。

「ほう。一体如何様な由があるのじゃ?」

アリスが体を少し引く。銀華さんがアリスに近づく。アリスがまた下がる。銀華さんがまた近づく。
銀華さんの顔は後ろからでは見えないけど、多分面白がっている。
アリスの顔は言わずもがな顔面蒼白。
ドラゴンに凄まれたら恐怖だわな。
私にとったら、アリガトゴザイマス!!お礼言っちゃうけどね。

アリスがちらちらこっちを見てるのは、明らかに助けを求めているからだろう。
だが、私は敢えてそれを無視する!!

震えているアリスも、可愛いんだ、ぜ?

あ!やめてください!ゴミを、ゴミを投げないで下さい!!
見えない誰かから、ゴミを投げられた気がしたので、仕方なく助けに入る。

「銀華さん、アリスは私の様に頭がアレでは無いので、揶揄うのはその辺にしてあげてください。」

「なんじゃ、つまらぬ。」

アリスから離れ、ふんっと鼻を鳴らす。
アリスは光の如き速さで私の背後へ回り、私にしがみつく。

あはあ~、かわええのぅ。

私の背中越しに顔を覗かせ、銀華さんを見る。

「あの、私は好きになった人の属性が使える様になるみたいなので、まだ魔法が使えないんです・・・。」

弱々しく話すアリスに、銀華さんは目を見開いてアリスを凝視する。

「番う者によって、己の属性が変化するとな?」

ああ、やっぱりドラゴンなんだな。
大きく目を見開いたら、瞳孔が縦になるのか。

「何と稀有な者か!ミリアムよ、ほんにお主に寄る者は面妖な輩ばかりよの。」

コロコロと笑ってるけど、銀華さんもそれに含まれてるのですけど、それはいいんですかね?

「類は友を呼ぶ、ですかね。」

うん?と銀華さんは首を傾げる。

「私達の世界の言葉です。気の合う人同士は自然と惹かれ合うんです。」

そう言いながらアリスに笑いかける。
アリスはボワッと顔を赤くさせて、何故か私から逃げて、そして何故か銀華さんの後に隠れる。
何故に?さっきまで怯えてたのに、何故だ!アリス!!
銀華さんは少し驚いていたが、嬉しそうにアリスの頭を撫でている。

「愛いのぅ。」

そうでしょうよ、アリスは可愛いですもの。
銀華さんまで魅了するなんて、末恐ろしい子だわ。

釈然としないが、二人が相性が悪そうに見えないから、良しとするかっ!!!
キレてないよ!?






「・・・・あの・・・・。」

うわ!!!吃驚した。
私の背後に、先生が居た。

「授業初めてもいいかね?」

あ、すんませんでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...