転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

文字の大きさ
116 / 126

彼の物にしか食指は動かない

しおりを挟む
そんなこんなで、シュタイナーにも無事に説明が終わり、今のままならばシュタイナーは魔王にはならないだろうと結論付けて、皆が解散する事になった。

と言っても、帰るのはアリスだけで、デイヴィッドとセイさんは私が引き留めた。
最早自分の元から離れて欲しくないので、宿を取る位なら此処に住めと私が強制した。

遠慮という言葉がデイヴィッドの辞書には無いので、彼は二つ返事で了承した。

「お、お前、本当に怖いもの知らずだな・・・。一応貴族の家だぞ?畏れ多いとか思わないのか!?」

セイさんが戦々恐々と言うが、私は彼を知っているので、

「え?何で?ミリアムの家だろ?そんな気にする事無いだろ?」

そう予想できた。

「取り敢えず、父親には伝えるから、帰って来たら一緒に来てね。」

私も別にそれに動じる事無く、さらりと告げる。
銀華さんがとても興味深そうに私達を見る。

「平民である筈の男が貴族の娘にこうも気安いとは、お主らの世界ではこの様な身分差は無かったのか?」

そう言われて、私はどうしたものかと悩む。

「あるにはありましたけど、私達はそういうのに無関係な環境で生活してきたので、こうなったというか。
元々私達は、この世界で言う平民なんで、私自体貴族っていう意識が無いんですよね。
だから、まぁ、怖いもの知らずなんですかね?」

貴族に転生しても私は自分勝手なのだ。
そんなもの知るかと好き勝手している。
それで縁を切られたとしても、まぁいいかと考えているが、一向にその気配がない。
寧ろ、何か父親の私の見る目が恐いのだ。
ウチの娘凄いだろ!?みたいな。

実際、学園でも王子とかの扱いが酷いのに、全く罰せられない。
この国どうなってるんだろう。

やはりゲームの世界だから、設定とかが色々緩いのかな?

「ミリアムが貴族とか、魔王の方が似合っているのにね。」

お前、まだ言うか。
もう普通に笑ってるデイヴィッドの脇腹を鋭角に抉った拳をお見舞いした。

ふごって言って、床に蹲ったデイヴィッドを無視した。
セイさんがプルプル震えて、シュタイナーは大きく目を見開いた。

「お望みならば、なって差し上げても宜しくてよ?
魔王にな。その代わり君達は私の配下として、馬車馬の様に働いて貰うからな。」

「っごほ。ほら、見ろ・・・・。そういうとこだからっ!
どこの世界に恋人の脇腹に容赦ない力で拳めり込ませる女がいるんだよ。」

「此処に居る。」

「・・・はぁ、好きな人にする行為じゃないと思うんだけどな。」

「愛故だ。」

「何無駄にエエ顔してるのか、本当に頭がおかしい。」

「ははは。」

「そこで笑うとか。もう怖い。」

怖いと言いながらデイヴィッドは笑っている。
ああ、懐かしい。
この掛け合い。
昔に戻ったみたいだ。
私の愛情表現はおかしい。
普通のもあるのだが、彼を見ていると何故かペシと叩いてしまうのだ。
弱くもあったり、物凄く強い時もある。

彼は彼で、それに対して「いたぁ」だけ。
怒りもしない。
流石に強過ぎたら、取っ組み合いになる。
体格差があるから、最終的には私が絞められて終わるのだが。

基本彼は動じない。
お尻を揉まれても、胸を揉まれても無なのだ。

『俺が女だったら、結愛、犯罪だぞ?』

『分かっててやってるんだよ。』

『男の尻なんか揉んで何が楽しいのか。』

『魅惑のケツしておきながら、何言ってんだ。』

『してないから。』

こんな遣り取りを毎日の様にしていたのだ。
私の変質的な性格を彼は受け入れてくれている。
慣れたともいうが。
だから私は自分の全てを曝け出す。
自分の陰湿な醜悪な悪辣な部分を。
それでも彼は引く事無く、ありのまま私を認めてくれる。

何故そんなにも彼は寛容なのだろう。
その広い心に私は甘えてしまう。
酷く執着してしまう。
その執着のせいで彼はこの世界に居るのに、何も気にしていない。

「ミリアム?」

私が無言のままデイヴィッドを見ていたので、下から見上げたデイヴィッドはギョッとした顔をした。

「ちょ!どうした!?何、泣いてるの!!何かした、俺?いや、したのはミリアムだよな?何で?情緒不安定!?」


過ぎ去った思い出が涙となって溢れて来た。
慌てふためく程の量が出ているのだろう。

「や、っと会えた、から。」

「蓮を残して死んだ事が、ずっと悔しくて、辛くて、寂しくて。やっと、これからっていう時に、もっと楽しくなる筈だった、ずっと一緒に居る筈だった。蓮といっぱい思い出を作る筈だった。
ここに来て、蓮も私のせいで来てしまって、申し訳ないと思ってるのと、また会えるって思ってしまう自分の勝手さが、もし蓮が嫌だと思ってたらどうしようって考えてたら、蓮、全然気にしてないんだもん。」

「結愛・・・。」

デイヴィッドが私を抱き締めてくれる。

「ごめん、残して死んだ事。ごめん、私の執着のせいでまたこんな私に縛られて。」

「事故だったんだ。どうしようもない。もう気にしなくていい。
執着も仕方ない。俺に何の魅力があるのか分からないけど、好きでいてくれるのは嬉しいし。
俺は、この世界割と気に入ってるから、それも気にしないで。」

頭を優しく撫でてくれる手も好きだった。今も好きだ。
安心する。
胸を締め付ける痛みが治まっていく。

「それにしても、俺がハンターになってるのよく分かったな。」

「前に話してたの覚えてたから。勇者とか王子とかには興味なかったでしょ?
あの冒険物の漫画とかゲーム好きだったもんね。」

「流石、俺の事よく分かってるな。」

「へっ。何年一緒に居たと思ってんだ。」

「あ、泣き止んだ。」

私の顔をまじまじと見つめてデイヴィッドは二カッと笑う。
私も彼を見つめる。
それにしても、何でこんなにイケメンになってしまったのか。
でも、イケメンであっても彼であるには違いない。
私も二カッと笑う。




「・・・・俺達の存在を忘れてますね。」

「やっと会えた半身なんじゃ、無粋な事を申すな。」

「ううううううう。良かったねぇ・・・。ミリアム。」

「・・・・・・。」

イチャついてたけど、部屋には皆居た事を忘れていて、気付いた瞬間、部屋の壁をぶち破って自分の部屋に篭った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...