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絶好のお出掛け日和
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本日は快晴!!
何て気持ちの良い朝なんだ!!
それもこれも、デイヴィッドとモンスターを狩りに行けるからなんだぜ!!
いやぁ~。
ゲームでモンスターを狩りに行った事はあるが、現実で行く事になろうとは人生とは分からんもんだ。
ゲーム世界での私の狩猟スタイルは遠距離攻撃の補助タイプ。
遠距離武器で対象を眠らせたり、麻痺させたり、罠を仕掛けたりして、バリバリ近接攻撃派の夫に倒して貰ってた。
なので、夫が戦闘不能になると、一目散でその場から離れ、夫の合流まで逃げまくっていた。
要するにチキンだった。
だが、今は違う。
チートゴリラになったのだ。
違った、チート女。
防具を持たずにノーガード戦法をして無駄死にしていたあの頃とは別離した。
身体強化でゴリゴリの脳筋になり、真のノーガード戦法だ。
当初はあのバカ(すっかり忘れていたが、今ふと思い出した神)に並々ならぬ殺意を抱いていたが、今は少し、ほんの少し、爪の垢位は感謝している。
今の夫の強さは分からないが、Sランクのハンターならばきっと彼もあのバカに何かして貰ったのだろう。
セイさんも何とSだったのには驚いた。
その事を正直に言うと、とても傷付いた顔をして、
「ミリアムさんと比べたら、誰だって子供みたいに見えるだろうさ・・・。」
哀愁漂う背中に思わず謝ってしまった。
まぁ、兎に角だ、強い人間が3人。
モンスターを狩りに行く。
だが、慢心はしたら駄目だ。
脳筋と思いきや私は病的なまでの慎重派だ。
常に最悪の事態が起きる事を想定して、戦いは挑まなくてはならない。
身体強化魔法は限界まで磨いて、治癒魔法も全快出来るまでレベルを上げる。
攻撃魔法・・・・、は何故か最初からカンストしていた。
自分の脳筋のせいなのか?バカの嫌味か。
充分過ぎる準備に越したことはない。
安定のアリスからのバナナを頬張りながら、デイヴィッドとセイさんを玄関で待つ。
バナナ食べ過ぎたら、お腹緩くなるんだよな。
モンスター狩る前に私の腹が戦闘不能になるのだけは避けたい。
この美少女がやらかしてしまうなんて、自分でも申し訳ない気持ちになる。
うむ。
一度トイレに行っておこうか・・・。
考えていると。
「早っ!!ミリアム早いな。」
デイヴィッドがのんびりした足取りで奥の通路から歩いてきた。
手に何か持っている。箱?
というか、デイヴィッドの部屋って二階だよな?
何で一階の奥から歩いて来てんだ?
私の胸中を知らずに、デイヴィッドはのほほんとしたまま私に笑いかける。
「そんなスタンバイしててもまだ出発しないから、セイが来るまで応接室で待っていよう。」
ニコニコしているデイヴィッドに緊張感が抜けていく。
てか、もうこの家に順応してるよな。
すげぇわ。尊敬する。
私の実家に初めて来た時もそうだったよな。
多分だけど、彼女の家にしかも親が居るにも関わらず、来て早々に靴下脱いで寛ぎだす彼氏早々居ないと思う。
まぁ、それが私の母親が気に入った要因の一つなんだけどな。
私の母親もちょっと変だったから。(完全に自分を棚に上げている。)
「気を遣われるのは嫌なのよね。蓮君は本当に良い距離で接してくれるから好きだわ~。」
母親の懐に入り込んだ夫。
割烹を営む母親の料理を食べ、どうやって作るのかを尋ねては、作った料理を写真に撮って母親に送っていた。
何、その交流。嫁と姑か。
最終的に料理を教える時、母親は私の目では無く、夫の目を見て話していた。
「アンタに言うより、蓮君に言う方が良いでしょ?どうせアンタ作らないんだから。」
母親のお言葉。全くその通りだったので、無言で頷くだけだった。
まぁ、良いんだけどね?
「ミリアム?」
また過去へトリップしていたので、デイヴィッドに呼び戻された。
「昔を思い出してた。」
「うん?」
私は少し俯く。
「ママンの料理の作り方を聞いてよく作ってくれてたなぁと思って。」
「ああ。だってミリアムお母さん大好きだっただろ。外食した時とか、この料理お母さんの方が美味しいとか言ってたしな。中々実家に帰れないから、お母さんのご飯食べたいかなと思ってな。」
昔を懐かしむ様な声でデイヴィッドは言う。
その声は蓮では無いけれど、私の耳には蓮であると認識する。
ああ、蓮だ。此処に蓮が居るんだ。
今一度その事実を噛み締め、私は目頭が熱くなる。
優しくて穏やかな声に涙が出そうになるのを堪える。
それを誤魔化す様に話を変える。
「奥から歩いていたけど、何してたの?部屋って二階だよね?」
「おお。家を散策してた。こんな広い家初めてだから、楽しくなって色々歩き回ってたんだよ。」
「ああ、そうか。家好きだもんね。」
他人様の家を見るのが大好きなのもそのまま。
デイヴィッドは二カッと大きく歯を見せて笑う。
「凄いよな!部屋沢山あり過ぎて全部廻り切れなかったぞ。それに沢山人も働いてるしな!あ、そうそう。その時にこれをな・・・。」
デイヴィッドは手に持った箱を私の前に出してきた。
そうそう、その箱、気になってたんだ。
デイヴィッドが説明する前にセイさんが降りて来た。
「二人共、早いな。出発まだかかるぞ。」
「おお、セイ。おはよう。」
デイヴィッドはセイさんの方へ向く。
箱。箱の中身を教えてくれ。
「ん?デイヴィッド、何持ってんだ?」
セイさんも気になってくれた。
良かった。
デイヴィッドも、そうだったと私にその箱を手渡す。
「はい。」
ん?貰って良いの?
手渡された箱を開けると、そこには、・・・そこにはなんと。
「ほ、回鍋肉・・・。」
「回鍋肉風の炒め物ね。ミリアム好きだっただろ?一応お弁当に入れようかと思って、作ってみた。」
私は直立不動のまま床に倒れた。
咄嗟に掛けた強化魔法のお蔭で後頭部が割れずに済んだ。
「ちょっ!!!ミリアムさん!?だ、大丈夫か!!??」
バターン!!と倒れたものだから、セイさんが慌てふためいている。
「おお!凄い!倒れてるのに、お弁当箱をしっかり死守してるなんて、流石ミリアムだな!」
その横で全く動じる事の無いデイヴィッド。
セイさんはそのデイヴィッドに詰め寄る形で捲し立てる。
「え!?いや!?違うよな!?今そんな事言う状況じゃないよな!?デイヴィッド!お前、ミリアムさんが倒れたんだぞ!心配するとかしろよ!幾ら魔王だからって、思いっきり頭打ってるじゃないか!」
当然の様に魔王って呼んでるよな。
「あ!そうか。ミリアム?大丈夫か?」
セイさんに言われて漸く私の顔の横に跪く。
「あ、あ、あ、」
私は声が出ない。
「ほらみろ!頭打っておかしくなってるじゃないか!どうすんだ!?これ以上おかしくなるとか、俺こええよ!!」
セイさんは相変わらずパニックでわーわー言っている。
五月蝿いな!おかしくなってねぇわ!
「あ、回鍋肉の他にミリアムが好きだっただし巻き卵と、マカロニサラダみたいなのも作ってみた。
あとは、ミリアムと言ったら芋だよな?
ジャガイモみたいなやつを細切りにして炒めたのもあるから、多分気に入ると思う。」
心配もそこそこデイヴィッドはお弁当の中身の説明をしてきた。
追い討ちかけてきた!
死ぬ!!死んでしまう!!
デイヴィッドがさらりと言うそのお弁当のレパートリーにもう私は完全にノックアウトだ。
「あ、あ、圧倒的女子力!!!!」
それだけ言って私は意識を失った。
嬉しすぎて意識を飛ばすってあるんですね。
何て気持ちの良い朝なんだ!!
それもこれも、デイヴィッドとモンスターを狩りに行けるからなんだぜ!!
いやぁ~。
ゲームでモンスターを狩りに行った事はあるが、現実で行く事になろうとは人生とは分からんもんだ。
ゲーム世界での私の狩猟スタイルは遠距離攻撃の補助タイプ。
遠距離武器で対象を眠らせたり、麻痺させたり、罠を仕掛けたりして、バリバリ近接攻撃派の夫に倒して貰ってた。
なので、夫が戦闘不能になると、一目散でその場から離れ、夫の合流まで逃げまくっていた。
要するにチキンだった。
だが、今は違う。
チートゴリラになったのだ。
違った、チート女。
防具を持たずにノーガード戦法をして無駄死にしていたあの頃とは別離した。
身体強化でゴリゴリの脳筋になり、真のノーガード戦法だ。
当初はあのバカ(すっかり忘れていたが、今ふと思い出した神)に並々ならぬ殺意を抱いていたが、今は少し、ほんの少し、爪の垢位は感謝している。
今の夫の強さは分からないが、Sランクのハンターならばきっと彼もあのバカに何かして貰ったのだろう。
セイさんも何とSだったのには驚いた。
その事を正直に言うと、とても傷付いた顔をして、
「ミリアムさんと比べたら、誰だって子供みたいに見えるだろうさ・・・。」
哀愁漂う背中に思わず謝ってしまった。
まぁ、兎に角だ、強い人間が3人。
モンスターを狩りに行く。
だが、慢心はしたら駄目だ。
脳筋と思いきや私は病的なまでの慎重派だ。
常に最悪の事態が起きる事を想定して、戦いは挑まなくてはならない。
身体強化魔法は限界まで磨いて、治癒魔法も全快出来るまでレベルを上げる。
攻撃魔法・・・・、は何故か最初からカンストしていた。
自分の脳筋のせいなのか?バカの嫌味か。
充分過ぎる準備に越したことはない。
安定のアリスからのバナナを頬張りながら、デイヴィッドとセイさんを玄関で待つ。
バナナ食べ過ぎたら、お腹緩くなるんだよな。
モンスター狩る前に私の腹が戦闘不能になるのだけは避けたい。
この美少女がやらかしてしまうなんて、自分でも申し訳ない気持ちになる。
うむ。
一度トイレに行っておこうか・・・。
考えていると。
「早っ!!ミリアム早いな。」
デイヴィッドがのんびりした足取りで奥の通路から歩いてきた。
手に何か持っている。箱?
というか、デイヴィッドの部屋って二階だよな?
何で一階の奥から歩いて来てんだ?
私の胸中を知らずに、デイヴィッドはのほほんとしたまま私に笑いかける。
「そんなスタンバイしててもまだ出発しないから、セイが来るまで応接室で待っていよう。」
ニコニコしているデイヴィッドに緊張感が抜けていく。
てか、もうこの家に順応してるよな。
すげぇわ。尊敬する。
私の実家に初めて来た時もそうだったよな。
多分だけど、彼女の家にしかも親が居るにも関わらず、来て早々に靴下脱いで寛ぎだす彼氏早々居ないと思う。
まぁ、それが私の母親が気に入った要因の一つなんだけどな。
私の母親もちょっと変だったから。(完全に自分を棚に上げている。)
「気を遣われるのは嫌なのよね。蓮君は本当に良い距離で接してくれるから好きだわ~。」
母親の懐に入り込んだ夫。
割烹を営む母親の料理を食べ、どうやって作るのかを尋ねては、作った料理を写真に撮って母親に送っていた。
何、その交流。嫁と姑か。
最終的に料理を教える時、母親は私の目では無く、夫の目を見て話していた。
「アンタに言うより、蓮君に言う方が良いでしょ?どうせアンタ作らないんだから。」
母親のお言葉。全くその通りだったので、無言で頷くだけだった。
まぁ、良いんだけどね?
「ミリアム?」
また過去へトリップしていたので、デイヴィッドに呼び戻された。
「昔を思い出してた。」
「うん?」
私は少し俯く。
「ママンの料理の作り方を聞いてよく作ってくれてたなぁと思って。」
「ああ。だってミリアムお母さん大好きだっただろ。外食した時とか、この料理お母さんの方が美味しいとか言ってたしな。中々実家に帰れないから、お母さんのご飯食べたいかなと思ってな。」
昔を懐かしむ様な声でデイヴィッドは言う。
その声は蓮では無いけれど、私の耳には蓮であると認識する。
ああ、蓮だ。此処に蓮が居るんだ。
今一度その事実を噛み締め、私は目頭が熱くなる。
優しくて穏やかな声に涙が出そうになるのを堪える。
それを誤魔化す様に話を変える。
「奥から歩いていたけど、何してたの?部屋って二階だよね?」
「おお。家を散策してた。こんな広い家初めてだから、楽しくなって色々歩き回ってたんだよ。」
「ああ、そうか。家好きだもんね。」
他人様の家を見るのが大好きなのもそのまま。
デイヴィッドは二カッと大きく歯を見せて笑う。
「凄いよな!部屋沢山あり過ぎて全部廻り切れなかったぞ。それに沢山人も働いてるしな!あ、そうそう。その時にこれをな・・・。」
デイヴィッドは手に持った箱を私の前に出してきた。
そうそう、その箱、気になってたんだ。
デイヴィッドが説明する前にセイさんが降りて来た。
「二人共、早いな。出発まだかかるぞ。」
「おお、セイ。おはよう。」
デイヴィッドはセイさんの方へ向く。
箱。箱の中身を教えてくれ。
「ん?デイヴィッド、何持ってんだ?」
セイさんも気になってくれた。
良かった。
デイヴィッドも、そうだったと私にその箱を手渡す。
「はい。」
ん?貰って良いの?
手渡された箱を開けると、そこには、・・・そこにはなんと。
「ほ、回鍋肉・・・。」
「回鍋肉風の炒め物ね。ミリアム好きだっただろ?一応お弁当に入れようかと思って、作ってみた。」
私は直立不動のまま床に倒れた。
咄嗟に掛けた強化魔法のお蔭で後頭部が割れずに済んだ。
「ちょっ!!!ミリアムさん!?だ、大丈夫か!!??」
バターン!!と倒れたものだから、セイさんが慌てふためいている。
「おお!凄い!倒れてるのに、お弁当箱をしっかり死守してるなんて、流石ミリアムだな!」
その横で全く動じる事の無いデイヴィッド。
セイさんはそのデイヴィッドに詰め寄る形で捲し立てる。
「え!?いや!?違うよな!?今そんな事言う状況じゃないよな!?デイヴィッド!お前、ミリアムさんが倒れたんだぞ!心配するとかしろよ!幾ら魔王だからって、思いっきり頭打ってるじゃないか!」
当然の様に魔王って呼んでるよな。
「あ!そうか。ミリアム?大丈夫か?」
セイさんに言われて漸く私の顔の横に跪く。
「あ、あ、あ、」
私は声が出ない。
「ほらみろ!頭打っておかしくなってるじゃないか!どうすんだ!?これ以上おかしくなるとか、俺こええよ!!」
セイさんは相変わらずパニックでわーわー言っている。
五月蝿いな!おかしくなってねぇわ!
「あ、回鍋肉の他にミリアムが好きだっただし巻き卵と、マカロニサラダみたいなのも作ってみた。
あとは、ミリアムと言ったら芋だよな?
ジャガイモみたいなやつを細切りにして炒めたのもあるから、多分気に入ると思う。」
心配もそこそこデイヴィッドはお弁当の中身の説明をしてきた。
追い討ちかけてきた!
死ぬ!!死んでしまう!!
デイヴィッドがさらりと言うそのお弁当のレパートリーにもう私は完全にノックアウトだ。
「あ、あ、圧倒的女子力!!!!」
それだけ言って私は意識を失った。
嬉しすぎて意識を飛ばすってあるんですね。
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