ああ、もう

コロンパン

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どうしたら良いのですか

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状況を把握する事が出来ません。
私は一体何を求められているのか。

何も答えれず、視線を彷徨わせる私に、痺れを切らした殿下が再度私に問います。

「アイリーン、貴女は、誰の婚約者なのか、答えろ。」

何故、それを問うのか、

「殿下でございます。」

そう答えるしかないのに。

「・・・ならば、何故・・・・。」

殿下の声が聞こえない。
心が壊れそうになる。
耳鳴りが止まない。

「何故、貴女は、俺と・・・。」

聞こえない、
聞こえないのです、殿下。
貴方の声が聞こえない。

体が震える。
だって、この関係がもう終わるのだから。
無様に泣き、追い縋り、貴方の愛を乞えば良いのですか?
いいえ、私はその術も封じられている。

殿下はそれを望まない、想ってもいない相手からの愛など疎ましいだけ。
『殿下はしつこい女性は嫌いだ』
自室で溢れて止まらない涙が、殿下の前では一滴も零れる事は無い。

「っ!貴女は何故!!」

殿下の怒声に身を竦めてしまう私は、声を出す事すら忘れてしまいました。
私の動揺を感じ取られたのでしょう、殿下は少しの間の後、声を落としお話になられました。

「貴女は、何故、俺の元に来ない?」

「・・・・・え?」

殿下の真意が汲み取れません。
ですが、殿下は答えをお待ちになっています。
何か、何か答えなければ。

「私などが、殿下の元に参るのは宜しくないと・・・。」

「婚約者なのにか?」

被せる様に殿下の言葉が私の言葉を遮ります。

「・・・婚約者と言えど、適切な距離を取る事は当然であると思います。」

そう、殿下との適切な距離は分かっているつもりなのです。
今までの距離がそうなのだと、私は殿下を見据えます。

すると、殿下は端正なお顔を崩され、今まで見た事の無い表情で私を捉えます。

「貴女にはあの距離が、適切だと?
本気で言っているのか?」

眉を寄せ、苦しそうとも思える表情を殿下が私にお見せになる。
それだけで、私は胸が詰まりそうでした。
声が出せず、頭だけ縦に振る事で殿下の問いに答えました。

殿下は私から視線をお外しになり、長く息を吐かれ、俯かれました。

「・・・貴女の考えは分かった。」

俯かれたまま、静かに吐かれる言葉で私はちゃんとお答えする事が出来たのだと安堵しました。
それも束の間、殿下は私の腰に腕を回され、自らの体へと私を引き寄せられました。

「俺は、もう自分を律する事を止める。アイリーン、貴女もそのつもりでいてくれ。」



呼吸は今までどの様にしていたのか、息が止まった私は全ての体の機能が働かなくなったようです。
今、私は殿下の腕の中。
彼は何と言った?
自分を律する?
殿下は何を律していたのです?

私を切り捨てる事を思い悩むのを?
コーデリア様と親交を深めるのを思い留まる事を?

思考を正常に纏める事が出来ません。
殿下のお顔をこんなに近くで見るなんて、いつぞやの夜会でのダンス以来です。
それも横顔だけ、視線を追う事が怖くて、事実を受け入れたくなくて、私は盗み見るだけ。

殿下の瞳の奥で何かの光がちらついて、それが分からないまま、私は視線を外す事も出来ず、殿下を見つめるのです。

この部屋だけ、時間の流れが遅く感じられました。
どれくらいの間、殿下と私はお互いを見つめ続けたのでしょう。

不意に扉を叩く音で、我に返りました。
意識が扉へと向きます。

「・・・チッ・・・・。」

殿下が舌打ち・・・?
戸惑う私を置いて、殿下は立ち上がり扉へ向かわれます。

殿下が扉を開けると、そこには息を切らしたご様子のコーデリア様が立っていらっしゃいました。

私の姿を確認されたコーデリア様は、私の元へ駆け寄って来られ、跪いて私の手を握り込まれました。

「アイリ様・・・!!大丈夫でしたか?
殿下に何もされてませんか!?」

コーデリア様は私の身を案じて、今まで私を探してくれていたのですね。
殿下のただならぬ気配に、お叱りを受けていると思われたのでしょう。

優しい方・・・。
私はコーデリア様の手に空いている手を添え、伝えます。

「リア様、大丈夫です。殿下とはお話をしていただけですわ。
何も、本当に何も無いのです。」

殿下と私の間には何も無いの。
コーデリア様の不安も取り除かないと、自分の身と共に、殿下との関係の潔白も証明しました。
すると、コーデリア様は複雑なお顔をされ、殿下を一瞥した後に、言葉を濁しながらお話になられました。

「アイリ様、それは・・・少し、いや・・・かなり宜しくない気がするのですが・・・。
いや、宜しいのか、ええと・・・、これは・・・・・。」

どうしたのでしょうか。
いつものコーデリア様らしからぬ歯切れの悪い言葉に私は首を傾げてしまいます。

「リア様?」

「ああ!そんなお可愛い顔を私にされて・・・!!」

全く、そんなつもりは無いのです。
可愛いのは、貴女の方よ、と声を発しようとした瞬間、


「アイリーン。貴女は本当に罪深い。」

あのような殿下のお怒りになったお顔初めて見たのです。


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