17 / 29
恥ずかしい私
しおりを挟む
「殿下です。」
私の言葉を信じられないのか呆然とした殿下は、直ぐに首を横に振ります。
「い、いいや!嘘だ!そんな事ある筈が無い!!」
殿下が私の言葉を否定なさります。
それでも私は背筋を伸ばし言い切ります。
「いいえ。私は殿下をお慕いしています。」
「嘘だ、嘘だ・・・。そんな事は・・・。」
首を激しく振り、頑なに拒む殿下。
私は立ち上がり殿下の隣へ座り、殿下の手に触れます。
「本当です。私は初めてお会いしたあの日から殿下を、殿下だけをずっと。」
伝わって欲しい。その思いだけでした。
殿下の目をこんなにしっかりと見る事は久しぶりです。
殿下も私の目をちゃんと見て下さいます。
「で、では何故、顔合わせの時、あんな顔をしたのだ?」
「あれは・・・。」
あの時の事を思い出し、はしたなくも笑みが零れました。
「王太子殿下とお顔が、その、似ていらっしゃらないなぁと、失礼ながら思ってしまっただけなのです。
ただそれだけなのです。」
王太子殿下と殿下の御髪の色は金色ですが、お顔の造形は全然違います。
王太子殿下は優し気な印象であるのに対して、殿下はとても凛々しくて、スッと流れる様な切れ長の瞳は近寄りがたい印象を与えますが、お二人共とてもお優しいのは同じだとその後気付きました。
私の言葉に殿下は私の大好きな翡翠の瞳を、これでもかと大きく見開かれ、
「そ、そんな事を思っていたのか!?」
ああ、いけませんね。
「申し訳ございません。無礼だとは思ったのですが、王太子殿下とお話をした後に殿下との顔合わせが直ぐに設けられましたでしょう?
勝手ながら、殿下の事を王太子殿下と似ているのかと想像していまして・・・。
実際にお会いした時・・・少し驚いてしまって・・・。」
私は少し俯きがちにお話しました。
とても失礼なお話です。
勝手に殿下のお姿を想像して、勝手に驚くなんて。
けれど、ちゃんとお話しないと殿下に私の想いを信じて貰えない様な気がしたのです。
「直ぐに思いを正し、殿下に我が公爵家のお庭をご案内させていただきました。
私の拙い案内にも、殿下は真剣にお聞き下さり、緊張していた私に時折微笑みかけて下さって。
私は殿下のそのお優しい人柄に惹かれました。」
「・・・俺は笑っていたのか?」
不意に殿下がそう問われます。
私は顔を上げ、不思議そうなお顔をされた殿下と目が合います。
私はゆるりと頷き、
「ええ。あの、とても優しい笑みで、私は自分を案じて下さったと感じました。」
そう答えました。
「そう、か・・・・。」
殿下は顎に手を当て思案されている様です。
「俺もあの時、酷く緊張して自分がどう振舞っていたのか・・・・正直覚えていない。
貴女と会えた喜びで、舞い上がっていた。」
「まぁ・・・・。」
私は顔が熱くなり、今自分が殿下に触れているのだと気が付き、慌てて手を引こうとしました。
ですが、その手を殿下に取られ、私は肩を震わせます。
殿下は何故か瞳を歪め、私に近づかれます。
「ならば・・・・、慕ってくれていたのならば、何故俺の近くに来なかった?」
「そ、それは・・・。」
私は言い淀みました。
殿下は更に私の腰に手を回し体を引き寄せます。
「俺は貴女に避けられているように感じて、俺との婚約を嘆いている様に感じた。
苦しくて、何度も貴女と話をしようと試みた。
だが、貴女は挨拶が終われば、逃げる様にその場から去って行った。」
殿下の表情がお辛そうで、そのお顔を見て私は殿下を苦しめてしまったと胸が締め付けられました。
「殿下、殿下・・・。ごめんなさい・・・・。
私、殿下の噂を聞いて、殿下に嫌われたくないと思って・・・・。」
「噂?」
「・・・・殿下はしつこい女性はお嫌いだと・・・。」
「その噂は、一体何処から聞いた。」
殿下の声が一段と低く聞こえました。
「殿下との、婚約パーティーでお祝いに来られたご令嬢の方達が教えて下さったのです。」
咎められていると感じましたが、私はキチンとお話しないといけません。
「・・・・・っふざけやがって!!」
下を俯かれ、そう大声を上げる殿下。
きっと、私に向けての言葉なのでしょう。
「申し訳ございません・・・。」
私は力無く謝罪しました。
そうするしか無いと思いました。
殿下は私の手を強く握り、
「いや、今のはアイリーンに向けての言葉ではない。
アイリーンにそんなふざけた空言を吹いた女と俺自身に腹が立った。」
私の手を握る力を緩め、私の頬へと優しく触れます。
「俺が早く貴女からこの事を問い質していれば、貴女を苦しませる事は無かった。
本当に済まない。全て俺が不甲斐ないせいだ。」
私を見る殿下の瞳があまりにも優しく、そう言って浮かべる微笑みが、あの時の、
殿下と初めてお会いした時の微笑みと同じで、私は不覚にも涙が零れ落ちてしまったのです。
私の言葉を信じられないのか呆然とした殿下は、直ぐに首を横に振ります。
「い、いいや!嘘だ!そんな事ある筈が無い!!」
殿下が私の言葉を否定なさります。
それでも私は背筋を伸ばし言い切ります。
「いいえ。私は殿下をお慕いしています。」
「嘘だ、嘘だ・・・。そんな事は・・・。」
首を激しく振り、頑なに拒む殿下。
私は立ち上がり殿下の隣へ座り、殿下の手に触れます。
「本当です。私は初めてお会いしたあの日から殿下を、殿下だけをずっと。」
伝わって欲しい。その思いだけでした。
殿下の目をこんなにしっかりと見る事は久しぶりです。
殿下も私の目をちゃんと見て下さいます。
「で、では何故、顔合わせの時、あんな顔をしたのだ?」
「あれは・・・。」
あの時の事を思い出し、はしたなくも笑みが零れました。
「王太子殿下とお顔が、その、似ていらっしゃらないなぁと、失礼ながら思ってしまっただけなのです。
ただそれだけなのです。」
王太子殿下と殿下の御髪の色は金色ですが、お顔の造形は全然違います。
王太子殿下は優し気な印象であるのに対して、殿下はとても凛々しくて、スッと流れる様な切れ長の瞳は近寄りがたい印象を与えますが、お二人共とてもお優しいのは同じだとその後気付きました。
私の言葉に殿下は私の大好きな翡翠の瞳を、これでもかと大きく見開かれ、
「そ、そんな事を思っていたのか!?」
ああ、いけませんね。
「申し訳ございません。無礼だとは思ったのですが、王太子殿下とお話をした後に殿下との顔合わせが直ぐに設けられましたでしょう?
勝手ながら、殿下の事を王太子殿下と似ているのかと想像していまして・・・。
実際にお会いした時・・・少し驚いてしまって・・・。」
私は少し俯きがちにお話しました。
とても失礼なお話です。
勝手に殿下のお姿を想像して、勝手に驚くなんて。
けれど、ちゃんとお話しないと殿下に私の想いを信じて貰えない様な気がしたのです。
「直ぐに思いを正し、殿下に我が公爵家のお庭をご案内させていただきました。
私の拙い案内にも、殿下は真剣にお聞き下さり、緊張していた私に時折微笑みかけて下さって。
私は殿下のそのお優しい人柄に惹かれました。」
「・・・俺は笑っていたのか?」
不意に殿下がそう問われます。
私は顔を上げ、不思議そうなお顔をされた殿下と目が合います。
私はゆるりと頷き、
「ええ。あの、とても優しい笑みで、私は自分を案じて下さったと感じました。」
そう答えました。
「そう、か・・・・。」
殿下は顎に手を当て思案されている様です。
「俺もあの時、酷く緊張して自分がどう振舞っていたのか・・・・正直覚えていない。
貴女と会えた喜びで、舞い上がっていた。」
「まぁ・・・・。」
私は顔が熱くなり、今自分が殿下に触れているのだと気が付き、慌てて手を引こうとしました。
ですが、その手を殿下に取られ、私は肩を震わせます。
殿下は何故か瞳を歪め、私に近づかれます。
「ならば・・・・、慕ってくれていたのならば、何故俺の近くに来なかった?」
「そ、それは・・・。」
私は言い淀みました。
殿下は更に私の腰に手を回し体を引き寄せます。
「俺は貴女に避けられているように感じて、俺との婚約を嘆いている様に感じた。
苦しくて、何度も貴女と話をしようと試みた。
だが、貴女は挨拶が終われば、逃げる様にその場から去って行った。」
殿下の表情がお辛そうで、そのお顔を見て私は殿下を苦しめてしまったと胸が締め付けられました。
「殿下、殿下・・・。ごめんなさい・・・・。
私、殿下の噂を聞いて、殿下に嫌われたくないと思って・・・・。」
「噂?」
「・・・・殿下はしつこい女性はお嫌いだと・・・。」
「その噂は、一体何処から聞いた。」
殿下の声が一段と低く聞こえました。
「殿下との、婚約パーティーでお祝いに来られたご令嬢の方達が教えて下さったのです。」
咎められていると感じましたが、私はキチンとお話しないといけません。
「・・・・・っふざけやがって!!」
下を俯かれ、そう大声を上げる殿下。
きっと、私に向けての言葉なのでしょう。
「申し訳ございません・・・。」
私は力無く謝罪しました。
そうするしか無いと思いました。
殿下は私の手を強く握り、
「いや、今のはアイリーンに向けての言葉ではない。
アイリーンにそんなふざけた空言を吹いた女と俺自身に腹が立った。」
私の手を握る力を緩め、私の頬へと優しく触れます。
「俺が早く貴女からこの事を問い質していれば、貴女を苦しませる事は無かった。
本当に済まない。全て俺が不甲斐ないせいだ。」
私を見る殿下の瞳があまりにも優しく、そう言って浮かべる微笑みが、あの時の、
殿下と初めてお会いした時の微笑みと同じで、私は不覚にも涙が零れ落ちてしまったのです。
0
あなたにおすすめの小説
鳥籠の花嫁~夫の留守を待つ私は、愛される日を信じていました
吉乃
恋愛
美しさと華やかさを持ちながらも、「賢くない」と見下されてきたカタリーナ。
格式ある名門貴族の嫡男との結婚は、政略ではないはずだった。
しかし夫はいつも留守、冷たい義家族、心の通わない屋敷。
愛されたいと願うたび、孤独だけが深まっていく。
カタリーナはその寂しさを、二人の幼い息子たちへの愛情で埋めるように生きていた。
それでも、信じていた。
いつか愛される日が来ると──。
ひとりの女性が静かに揺れる心を抱えながら、
家族と愛を見つめ直しながら結婚生活を送る・・・
******
章をまたいで、物語の流れや心情を大切にするために、少し内容が重なる箇所があるかもしれません。
読みにくさを感じられる部分があれば、ごめんなさい。
物語を楽しんでいただけるよう心を込めて描いていますので、最後までお付き合いいただけたら光栄です。
婚約者は嘘つき!私から捨ててあげますわ
あんり
恋愛
「マーティン様、今、わたくしと婚約破棄をなさりたいと、そうおっしゃいましたの?」
愛されていると信じていた婚約者から、突然の別れを告げられた侯爵令嬢のエリッサ。
理由も分からないまま社交界の噂に晒され、それでも彼女は涙を見せず、誇り高く微笑んでみせる。
―――けれど本当は、あの別れの裏に“何か”がある気がしてならなかった。
そんな中、従兄である第二王子アダムが手を差し伸べる。
新たな婚約、近づく距離、揺れる心。
だがエリッサは知らない。
かつての婚約者が、自ら悪者になってまで隠した「真実」を。
捨てられた令嬢?いいえ違いますわ。
わたくしが、未来を選び直すの。
勘違いとすれ違いから始まる、切なくて優しい恋の物語。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】あなた方は信用できません
玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。
第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる