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6章
驚くべき事態
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一同が息を呑む。
誰も声を発する事が出来ない。
一様にシルヴィアの行動が予想外で、目を大きく見開いたまま。
そんな中、シルヴィアはにこりと微笑み、斬った自分の髪の束を手に、
デューイの元へ歩いて行く。
「殿下、どうぞ納め下さい。」
デューイも言われるがまま、受け取る。
淑女の礼を取り、くるりと後ろへ向き、父親の元へ戻る。
「お父様、ありがとうございます。」
シルヴィアから刀剣を受け取り鞘にしまう。
そして、漸く思考が戻ってくる。
「シルヴィア、お前、」
「シルヴィア!!!何て馬鹿な事を!!!」
ジュードに被さる様に大声を出したレイフォード。
シルヴィアの不揃いに斬られた髪に触れる。
腰近くまであった銀の髪が、今は頬辺りまでになってしまっている。
「お前は・・・何て、何て馬鹿な事を、こんな、こんなに美しい髪を・・・。」
悲し気に顔を歪ませ、シルヴィアの髪を撫でる。
シルヴィアはレイフォードが自分の髪に触れている事実にドギマギしながら答える。
「あのままの、雰囲気では折角、この国を楽しんで頂けないと思いましたの。
私の、この髪で場が収まるのなら、幾らでも差し上げますわ。
あ、でも、全部と言われましたら、困ってしまいますけれどね。」
最後にふふふとおどけて見せるシルヴィア。
「だからと言って、こんな斬り方があるか。」
レイフォードは脱力し、弱弱しく話す。
勢い良く刃物で斬った髪は本当に不揃いで、この状態で屋敷に帰れば、確実に大騒ぎになるだろう。
「大丈夫です。髪なんてまた直ぐに伸びますもの。」
「ソニアにはどう説明するんだ?」
レイフォードに言われてハッとするシルヴィア。
見る見るうちに顔が蒼褪めていく。
「そ、そうでしたわ!どうしましょう・・・。
確実に怒られるでしょうね・・・。
あああ、二時間以上お説教コースかしら・・・。」
「俺から、話をしておく。
だが、少しばかりお小言があるのは覚悟しておくんだな。
アイツは本当にお前を大事に思っているのだから。」
ジュードが声を掛ける。
「はい!お父様分かりました。」
「がーはっはっはっは!」
大声で笑う声。
タレスが、腹を抱えて笑っている。
「自分の髪を切るよりも、誰ぞの叱責の方が怖いとは!
なるほど、なるほど。
豪気な娘だ。
此処まで来た甲斐があったわ!」
「シルヴィアちゃん、取り敢えずさ、その髪の毛を整えよう?
直ぐに侍女を寄越すから。
ふ、ふふふ。」
サリュエルも肩を震わせ笑う。
「何か面白い事がありましたの?」
レイフォードにシルヴィアが聞く。
レイフォードはふいと顔を逸らし素っ気なく言う。
「知らん!」
シルヴィアは肩を落とす。
(ああ、また私の行動がレイフォード様の気に障ったのね・・・。
本当に、私はどうして後先考えずに行動してしまうのかしら。)
「デューイ、これで満足か?」
一頻り笑った後、タレスがデューイに問うた。
恐らくは、戯れに言ったであろう一言。
女性にとって髪は命と同等と考える者が多いサルデージャ国。
揶揄い半分、興味半分でやった行為。
泣きながら、それだけはと懇願し、代わりを要求するつもりだった。
自国でよく行う遊び。
自分の気の済むまで相手をさせる。
滞在中、ずっと。
まさか、本当に髪を斬って差し出されるとは思っていなかった。
「・・・・いいや。いいや、親父殿。」
瞳がまた輝き出す。にんまりと満面の笑みを見せる。
つかつかと大股で歩き、またシルヴィアに近寄る。
シルヴィアの腰に手を当て、自分の体へ引き寄せる。
「気に入った!お前、俺の妻になれ!」
「は、はああああああ!!??」
レイフォードは思わず声が出る。
「え?え!?ええええ!!!」
シルヴィアもデューイと密着している状態で、
瞳を溢れんばかりに見開いて、声を上げる。
タレスは顔を手で覆い、項垂れる。
「ちょ、ちょっとお待ちくださいませ、殿下!!」
デューイの体を押して、離れようとするも更に強く引き寄せられる。
デューイは顔を近づけ、、シルヴィアの頬を指で擽る。
「ひえっ!!御放しくださいませ!
殿下、私は殿下の妻にはなれません!!」
シルヴィアは変な声が出て、背筋が伸びる。
「何故?勿論、ちゃんと正室だぞ。
俺にはまだ婚約者が居ないからな。
お前が嫌だというなら、側室も我慢しよう。
王族の、しかも将来、王となる俺の妻だ。
これ以上の幸福はないだろう?」
必死にデューイを押し返そうとするシルヴィア。
そのシルヴィアのお腹に後ろから腕が巻き付き、凄い力で引き寄せられる。
バランスを崩し、後ろ向きのまま倒れそうになる。
思わず、衝撃に備えて目を瞑るが、ぼすっと誰かの体に倒れ込んだようだった。
目を開けて、見上げると直ぐ近くにレイフォードの端正な顔があった。
恐ろしいほどの憤怒の表情で、デューイを睨みつけている。
「デューイ殿下、シルヴィアは私の妻です。
ですので、殿下の妻になることはありません。」
それがどうしたと言う顔でデューイがさらりと言い放つ。
「そんなもの、離縁すればいいだろう?」
「そう軽々と離縁など出来る筈が無いでしょう?」
レイフォードが憎々し気に吐く。
「王子である俺と結婚するのだぞ。命が下れば容易く出来るさ。」
「それは殿下の国の民であれば、の話です。シルヴィアはトランスヴァニア国の人間です。」
「・・・・。」
両者の睨み合いの中、間に挟まれたシルヴィアはまだ事態に付いて行けずにいた。
ふと、下を見ると自分のお腹にレイフォードの腕がしっかりと絡みついている。
(こ、これはどういう状況なの!?)
後ろから抱きしめられた状態で、ピッタリとレイフォードと密着している。
しかも衆人環視で。
顔がこれ以上無いほど赤く染まり上がる。
「だ、だんなさま。あの、あの、これ、え?」
レイフォードはデューイに向けた表情から、蕩ける様な甘い微笑みを乗せてシルヴィアを見つめる。
「ん?どうした?シルヴィア。」
その微笑みに言葉を失う。
「・・・・す、」
「す?」
一度呼吸を整え、レイフォードに請う。
「・・・少し、離れて欲しいのです。」
デューイと密着したのは、只々驚きの感情しかなかった。
自分の好いているレイフォードに密着されるのは正直言って辛い。
顔がずっと火照ったままだし、動悸も激しい。
このままだとまた意識を手放してしまう。
そんなシルヴィアの願いも虚しく
「何故?俺達は夫婦だろう?」
「そうなのですが、あの、皆様がいらっしゃるので、その。」
(何?何故?レイフォード様、一体どうして?)
「恥ずかしい?」
俯きながら何度も頷く。
「では、また後でゆっくりと、な。」
意味深な言葉を吐き、そっとシルヴィアを解放した。
火照った頬に手を当て、息を深く吐いた。
「シルヴィア、だったな。」
背後から声。
タレスが後ろに立っていた。
「すまぬ。我が息子の愚行を許してくれ。」
頭を下げる。
シルヴィアはぶんぶんと両手を横に振る。
「陛下!頭をお上げください。少し驚いただけですから、お気になさらないでください。」
「そうだぞ。親父殿、何を謝る必要がある。」
いつの間にかシルヴィアの横に並んだデューイが、悪びれもせず言う。
すっとタレスは立ち上がり、その屈強な腕を頭上まで振り上げ、
デューイの脳天目掛けて振り下ろす。
ドゴッ。
タレスの拳骨によって、鈍い音と共にデューイの頭が首にめり込んだ。
「・・・・・・。」
「くぉんの・・・・・馬鹿息子がああああああああ!!!!!!」
怒髪天を衝いたタレスの怒号が、部屋に響き渡る。
「い、ってえええええええ!!!
何すんだよ!!この糞親父!!!!」
頭を手で押さえながら、デューイも大声でタレスに噛みつく。
「お前こそ、何してくれとるんじゃ。この大馬鹿者!
トランスヴァニア国と我が国の友好関係を、断絶させるつもりか!」
「ああ?何でこれくらいで、そんな事になるんだよ!」
「お前は誰の娘にちょっかいをかけているのかも分からんのか!阿呆!」
「誰のって・・・・・・。!!!!」
デューイがタレスに言われてシルヴィアを一瞥し、
その後ろで、禍禍しい気配を察知する。
「今頃気づいたのか、馬鹿者め。」
デューイの視線の先には、
血の様に赤く、業火の様に熱い瞳を宿したジュードが、しっかりとデューイを見据え笑っていた。
「・・・タレス陛下。殿下は随分奔放な性格にお育ちになりましたな。」
デューイから視線を逸らさぬまま、タレスに話しかける。
「妻がコイツを隠すように囲い込みおって、やっと解放したと思ったらこの通りよ。
ほとほと手を焼いておる。」
「左様で。これからの陛下の苦労が目に浮かびますな。
俺としては、娘に害を為さなければ、関知する所では御座いませんので。
娘は大層このレイフォードを慕っております。
それを無理に引き離して、娘の心、尊厳を傷つけるようであれば、
鬼神の名の通り、一切容赦は致しません。
例え王族であろうとも。」
漸く瞳をタレスに合わせて、にこりと笑う。
タレスは一筋、汗が頬を伝う。
「ああ、肝に命じておこう。」
ジュードは視線をシルヴィアへ移し、痛ましげな表情で優しく話す。
「シルヴィア、後で話をするとして、取り敢えずその髪を整えて貰え。」
「分かりました。」
「おい、「はーい!シルヴィアちゃん。侍女に案内させるから、付いて行って?」
ジュードが言う前に、サリュエルがシルヴィアを促す。
「シルヴィア、俺も一緒に行く。」
「旦那様・・・。はい!ありがとうございます。」
レイフォードがシルヴィアの手を引く。
再び頬に紅が差す。
「・・・・・・。」
レイフォードの顔が少し翳る。
「旦那様?」
「何でもない。さぁ、行こう。」
「?はい。」
二人は退室する。
タレスは長い溜息を吐き、
「・・・どっと疲れたわ・・・。」
「僕は面白い物を見れたから良かったけどね。」
サリュエルはニヤニヤとほくそ笑みながら、タレスの肩を叩く。
「他人事だと思って・・・。」
「旦那様?
なーんか、色が含んだ関係に見えないんだよなぁ。
あの二人。」
王同士が話している横で、デューイは一人呟いた。
ジュードはそれを聞き逃す事なく、
ただ、じっとデューイを見つめていた。
誰も声を発する事が出来ない。
一様にシルヴィアの行動が予想外で、目を大きく見開いたまま。
そんな中、シルヴィアはにこりと微笑み、斬った自分の髪の束を手に、
デューイの元へ歩いて行く。
「殿下、どうぞ納め下さい。」
デューイも言われるがまま、受け取る。
淑女の礼を取り、くるりと後ろへ向き、父親の元へ戻る。
「お父様、ありがとうございます。」
シルヴィアから刀剣を受け取り鞘にしまう。
そして、漸く思考が戻ってくる。
「シルヴィア、お前、」
「シルヴィア!!!何て馬鹿な事を!!!」
ジュードに被さる様に大声を出したレイフォード。
シルヴィアの不揃いに斬られた髪に触れる。
腰近くまであった銀の髪が、今は頬辺りまでになってしまっている。
「お前は・・・何て、何て馬鹿な事を、こんな、こんなに美しい髪を・・・。」
悲し気に顔を歪ませ、シルヴィアの髪を撫でる。
シルヴィアはレイフォードが自分の髪に触れている事実にドギマギしながら答える。
「あのままの、雰囲気では折角、この国を楽しんで頂けないと思いましたの。
私の、この髪で場が収まるのなら、幾らでも差し上げますわ。
あ、でも、全部と言われましたら、困ってしまいますけれどね。」
最後にふふふとおどけて見せるシルヴィア。
「だからと言って、こんな斬り方があるか。」
レイフォードは脱力し、弱弱しく話す。
勢い良く刃物で斬った髪は本当に不揃いで、この状態で屋敷に帰れば、確実に大騒ぎになるだろう。
「大丈夫です。髪なんてまた直ぐに伸びますもの。」
「ソニアにはどう説明するんだ?」
レイフォードに言われてハッとするシルヴィア。
見る見るうちに顔が蒼褪めていく。
「そ、そうでしたわ!どうしましょう・・・。
確実に怒られるでしょうね・・・。
あああ、二時間以上お説教コースかしら・・・。」
「俺から、話をしておく。
だが、少しばかりお小言があるのは覚悟しておくんだな。
アイツは本当にお前を大事に思っているのだから。」
ジュードが声を掛ける。
「はい!お父様分かりました。」
「がーはっはっはっは!」
大声で笑う声。
タレスが、腹を抱えて笑っている。
「自分の髪を切るよりも、誰ぞの叱責の方が怖いとは!
なるほど、なるほど。
豪気な娘だ。
此処まで来た甲斐があったわ!」
「シルヴィアちゃん、取り敢えずさ、その髪の毛を整えよう?
直ぐに侍女を寄越すから。
ふ、ふふふ。」
サリュエルも肩を震わせ笑う。
「何か面白い事がありましたの?」
レイフォードにシルヴィアが聞く。
レイフォードはふいと顔を逸らし素っ気なく言う。
「知らん!」
シルヴィアは肩を落とす。
(ああ、また私の行動がレイフォード様の気に障ったのね・・・。
本当に、私はどうして後先考えずに行動してしまうのかしら。)
「デューイ、これで満足か?」
一頻り笑った後、タレスがデューイに問うた。
恐らくは、戯れに言ったであろう一言。
女性にとって髪は命と同等と考える者が多いサルデージャ国。
揶揄い半分、興味半分でやった行為。
泣きながら、それだけはと懇願し、代わりを要求するつもりだった。
自国でよく行う遊び。
自分の気の済むまで相手をさせる。
滞在中、ずっと。
まさか、本当に髪を斬って差し出されるとは思っていなかった。
「・・・・いいや。いいや、親父殿。」
瞳がまた輝き出す。にんまりと満面の笑みを見せる。
つかつかと大股で歩き、またシルヴィアに近寄る。
シルヴィアの腰に手を当て、自分の体へ引き寄せる。
「気に入った!お前、俺の妻になれ!」
「は、はああああああ!!??」
レイフォードは思わず声が出る。
「え?え!?ええええ!!!」
シルヴィアもデューイと密着している状態で、
瞳を溢れんばかりに見開いて、声を上げる。
タレスは顔を手で覆い、項垂れる。
「ちょ、ちょっとお待ちくださいませ、殿下!!」
デューイの体を押して、離れようとするも更に強く引き寄せられる。
デューイは顔を近づけ、、シルヴィアの頬を指で擽る。
「ひえっ!!御放しくださいませ!
殿下、私は殿下の妻にはなれません!!」
シルヴィアは変な声が出て、背筋が伸びる。
「何故?勿論、ちゃんと正室だぞ。
俺にはまだ婚約者が居ないからな。
お前が嫌だというなら、側室も我慢しよう。
王族の、しかも将来、王となる俺の妻だ。
これ以上の幸福はないだろう?」
必死にデューイを押し返そうとするシルヴィア。
そのシルヴィアのお腹に後ろから腕が巻き付き、凄い力で引き寄せられる。
バランスを崩し、後ろ向きのまま倒れそうになる。
思わず、衝撃に備えて目を瞑るが、ぼすっと誰かの体に倒れ込んだようだった。
目を開けて、見上げると直ぐ近くにレイフォードの端正な顔があった。
恐ろしいほどの憤怒の表情で、デューイを睨みつけている。
「デューイ殿下、シルヴィアは私の妻です。
ですので、殿下の妻になることはありません。」
それがどうしたと言う顔でデューイがさらりと言い放つ。
「そんなもの、離縁すればいいだろう?」
「そう軽々と離縁など出来る筈が無いでしょう?」
レイフォードが憎々し気に吐く。
「王子である俺と結婚するのだぞ。命が下れば容易く出来るさ。」
「それは殿下の国の民であれば、の話です。シルヴィアはトランスヴァニア国の人間です。」
「・・・・。」
両者の睨み合いの中、間に挟まれたシルヴィアはまだ事態に付いて行けずにいた。
ふと、下を見ると自分のお腹にレイフォードの腕がしっかりと絡みついている。
(こ、これはどういう状況なの!?)
後ろから抱きしめられた状態で、ピッタリとレイフォードと密着している。
しかも衆人環視で。
顔がこれ以上無いほど赤く染まり上がる。
「だ、だんなさま。あの、あの、これ、え?」
レイフォードはデューイに向けた表情から、蕩ける様な甘い微笑みを乗せてシルヴィアを見つめる。
「ん?どうした?シルヴィア。」
その微笑みに言葉を失う。
「・・・・す、」
「す?」
一度呼吸を整え、レイフォードに請う。
「・・・少し、離れて欲しいのです。」
デューイと密着したのは、只々驚きの感情しかなかった。
自分の好いているレイフォードに密着されるのは正直言って辛い。
顔がずっと火照ったままだし、動悸も激しい。
このままだとまた意識を手放してしまう。
そんなシルヴィアの願いも虚しく
「何故?俺達は夫婦だろう?」
「そうなのですが、あの、皆様がいらっしゃるので、その。」
(何?何故?レイフォード様、一体どうして?)
「恥ずかしい?」
俯きながら何度も頷く。
「では、また後でゆっくりと、な。」
意味深な言葉を吐き、そっとシルヴィアを解放した。
火照った頬に手を当て、息を深く吐いた。
「シルヴィア、だったな。」
背後から声。
タレスが後ろに立っていた。
「すまぬ。我が息子の愚行を許してくれ。」
頭を下げる。
シルヴィアはぶんぶんと両手を横に振る。
「陛下!頭をお上げください。少し驚いただけですから、お気になさらないでください。」
「そうだぞ。親父殿、何を謝る必要がある。」
いつの間にかシルヴィアの横に並んだデューイが、悪びれもせず言う。
すっとタレスは立ち上がり、その屈強な腕を頭上まで振り上げ、
デューイの脳天目掛けて振り下ろす。
ドゴッ。
タレスの拳骨によって、鈍い音と共にデューイの頭が首にめり込んだ。
「・・・・・・。」
「くぉんの・・・・・馬鹿息子がああああああああ!!!!!!」
怒髪天を衝いたタレスの怒号が、部屋に響き渡る。
「い、ってえええええええ!!!
何すんだよ!!この糞親父!!!!」
頭を手で押さえながら、デューイも大声でタレスに噛みつく。
「お前こそ、何してくれとるんじゃ。この大馬鹿者!
トランスヴァニア国と我が国の友好関係を、断絶させるつもりか!」
「ああ?何でこれくらいで、そんな事になるんだよ!」
「お前は誰の娘にちょっかいをかけているのかも分からんのか!阿呆!」
「誰のって・・・・・・。!!!!」
デューイがタレスに言われてシルヴィアを一瞥し、
その後ろで、禍禍しい気配を察知する。
「今頃気づいたのか、馬鹿者め。」
デューイの視線の先には、
血の様に赤く、業火の様に熱い瞳を宿したジュードが、しっかりとデューイを見据え笑っていた。
「・・・タレス陛下。殿下は随分奔放な性格にお育ちになりましたな。」
デューイから視線を逸らさぬまま、タレスに話しかける。
「妻がコイツを隠すように囲い込みおって、やっと解放したと思ったらこの通りよ。
ほとほと手を焼いておる。」
「左様で。これからの陛下の苦労が目に浮かびますな。
俺としては、娘に害を為さなければ、関知する所では御座いませんので。
娘は大層このレイフォードを慕っております。
それを無理に引き離して、娘の心、尊厳を傷つけるようであれば、
鬼神の名の通り、一切容赦は致しません。
例え王族であろうとも。」
漸く瞳をタレスに合わせて、にこりと笑う。
タレスは一筋、汗が頬を伝う。
「ああ、肝に命じておこう。」
ジュードは視線をシルヴィアへ移し、痛ましげな表情で優しく話す。
「シルヴィア、後で話をするとして、取り敢えずその髪を整えて貰え。」
「分かりました。」
「おい、「はーい!シルヴィアちゃん。侍女に案内させるから、付いて行って?」
ジュードが言う前に、サリュエルがシルヴィアを促す。
「シルヴィア、俺も一緒に行く。」
「旦那様・・・。はい!ありがとうございます。」
レイフォードがシルヴィアの手を引く。
再び頬に紅が差す。
「・・・・・・。」
レイフォードの顔が少し翳る。
「旦那様?」
「何でもない。さぁ、行こう。」
「?はい。」
二人は退室する。
タレスは長い溜息を吐き、
「・・・どっと疲れたわ・・・。」
「僕は面白い物を見れたから良かったけどね。」
サリュエルはニヤニヤとほくそ笑みながら、タレスの肩を叩く。
「他人事だと思って・・・。」
「旦那様?
なーんか、色が含んだ関係に見えないんだよなぁ。
あの二人。」
王同士が話している横で、デューイは一人呟いた。
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