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6章
再認識
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無言で歩き続けるレイフォードとシルヴィア。
シルヴィアはその間、一人思考の旅へ出発していた。
(先程の事、一体何だったのかしら?
レイフォード様のあの様な艶やかなお顔、初めてだったわ。
何故、私に?
しかも、陛下やお父様の居る前で。
あああああああ、思い出すだけで顔が燃える位熱くなってしまうわ。
他の事を考えましょう。
ええと・・・・・。屋敷に帰って、サッシュの実で塗り薬の改良をしないといけないわね。
後、ソニアに剣の鍛錬を・・・・の前に、ソニアのお説教があるわよね。
あ、一気に顔が冷えたわ。良かった。
この間、怒られたばかりなのに、どうしましょう・・・。
愛想を尽かされてしまったら、私・・・。)
「・・・ヴィア。」
(とにかく、謝り通すしかないわ。)
「・・ルヴィア。」
(取り敢えず、今日帰るのが恐ろしいけれど、
覚悟を決めるしかないわね!)
「シルヴィア!」
「はいいいい!!」
レイフォードの声で、意識が帰郷したシルヴィアは、背筋をピンと伸ばして大声で返事をする。
レイフォードを見ると、驚いた表情でこちらを見ていた。
そして、呆れた表情に変わる。
「幾ら呼んでも何も反応しなかったが、どうしたのだ?」
「いいえ!何でもありません。少し考え事をしていただけなのです。」
「部屋に着いたぞ。」
「あら、いつの間に!」
「お前・・・。入るぞ。」
「はい!」
部屋に入ると、侍女が3人準備万全で待機していた。
「さあ、シルヴィア様、早速整えましょう。」
「レイフォード様、申し訳ございませんが、ここで。」
侍女の1人がレイフォードの退室を促す。
「隣の部屋で待たせて貰って良いだろうか。」
レイフォードが請う。
侍女達は考えるまでもなく了承する。
「ええ。畏まりました。」
レイフォードは中扉から、隣の部屋へ入る。
それを見計らい、侍女達がシルヴィアにわっと詰め掛ける。
「さあて!!やりますよ!!」
「随分とばっさりと切ってしまいましたね・・・。」
「ふむ。ここがこうなわけだから、反対側を同じ様に合わせる形が良いですね。」
三人が同時に話し出す。
「余計な仕事を増やしてしまってごめんなさい。」
シルヴィアの言葉に三人は顔を見合わせて、笑い出す。
「何言っているのですか。シルヴィア様のお世話が出来ると聞いて、
皆くじ引きしたくらいですよ。」
「そうそう。あの夜会の件からシルヴィア様の話題で持ち切りですよ。」
「みーんな、シルヴィア様にお会いしたい者達ばかりですからね。」
「え?そうなの?」
三人とも大きく頷く。
「さ、さ、座ってくださいな。もっと、もっとお綺麗に仕上げますよ!」
一時間後、両サイドを短くする、所謂姫カットと言う髪型に整えて貰った。
侍女達は、可愛い、可愛いと一頻り褒めちぎった後、自分達の持ち場に戻って行った。
侍女達が去って、暫くするとノック音が聞こえた。
「もう入って大丈夫か?」
シルヴィアは扉の方へ向かい、レイフォードに応え扉を開ける。
「はい。もう終わりましたので、大丈夫です。」
シルヴィアの髪を見て、安堵する。
「また、随分と可愛らしい髪型になったな。」
壊れ物を触るかのように、シルヴィアの髪に触れる。
シルヴィアはその優しい仕草に、胸がどうしようもなく高鳴る。
「あ、あああ、ありがとうございます?」
「悪かったな。」
「え?」
「人前であんな事、お前は慣れていないのに。」
先程の事を詫びるレイフォードの眉が少し下がる。
シルヴィアは思い出して、顔がほんのり赤くなる。
「い、いいえ。少し驚きましたけれど、大丈夫です。」
「なら、いいんだ。デューイ殿下を退けるためとは言え、やり過ぎた。」
レイフォードの言葉で、シルヴィアはピンときた。
(ああ!殿下に困っている私の為に、レイフォード様はお芝居をなさってくれたのだわ!
ちゃんとお礼を言わないと!!)
「旦那様!」
「なんだ?」
「ありがとうございました!」
シルヴィアががばっと頭を下げる。
「いきなりどうした?」
「先程の事、私が困っていたから、旦那様はお芝居をしてくださったのですよね?
ああすれば、殿下も諦めて下さるであろうと。
あの時に気付いていれば、もっとちゃんとお芝居出来たのですが、
頭が回らなくて申し訳ございませんでした。」
「・・・・・・・・・・・。」
「でも、本当にありがとうございました。
旦那様は本当にお優しいのですね。」
シルヴィアは興奮しながら、早口で捲くし立てる。
「・・・・・ちょっと待ってくれ。」
にこにこ笑いながら話すシルヴィアをレイフォードが制止する。
「はい?」
「芝居・・・・?だと?」
レイフォードは我が耳を疑った言葉を口にする。
シルヴィアはとても良い笑顔を見せる。
「はい!旦那様のお芝居がとてもお上手でしたので、私も騙されてしまいましたわ!
敵を欺くには味方からと言いますもんね!」
「は、ははははは・・・・。嘘だろ・・・。」
頭を抱え、その場にしゃがみ込むレイフォード。
「ええええ!どうなされたのですか!!??」
いきなりの事で慌てふためくシルヴィア。
(ああ、もう舐めていたよ・・・。ここまで鈍いなんて。
いや、俺が悪いのだけれどな。
・・・・早く屋敷に帰りたい・・・。)
自分の中で折り合いを付け、すくっと立ち上がる。
頭上に疑問符が浮かび上がっているのが分かる程、
狼狽えているシルヴィアが目の前に立っている。
「もう、手加減しないからな。」
にこりとレイフォードは微笑む。
「????て、手加減?」
(お前が幾ら恥ずかしがろうが関係ない。絶対に逃がさないからな。)
「もう、ここでの用件は終わっただろう。早めに帰るとしよう。」
「では、お父様にご挨拶をしないと。」
「必要ない。」
「え?」
レイフォードはシルヴィアの手を取る。
「伯とは先程、話をして俺の屋敷に立ち寄ってもらう。
王にも話は通っているから、もう帰っても大丈夫だ。」
シルヴィアがデューイに迫られていた時に、レイフォードとジュード、サリュエルは
これ以上長居をしては、またひと悶着あるだろうと考え、
シルヴィアの髪を整えたら、帰っても良いと許可を得ていた。
「だから、早々に立ち去るぞ。」
「そうだったのですね。分かりました。」
レイフォードに手を引かれてシルヴィアは城を後にする。
帰りの馬車の中。
終始レイフォードはシルヴィアを隣に座らせ、手を握ったまま離そうとしなかった。
シルヴィアはその間、一人思考の旅へ出発していた。
(先程の事、一体何だったのかしら?
レイフォード様のあの様な艶やかなお顔、初めてだったわ。
何故、私に?
しかも、陛下やお父様の居る前で。
あああああああ、思い出すだけで顔が燃える位熱くなってしまうわ。
他の事を考えましょう。
ええと・・・・・。屋敷に帰って、サッシュの実で塗り薬の改良をしないといけないわね。
後、ソニアに剣の鍛錬を・・・・の前に、ソニアのお説教があるわよね。
あ、一気に顔が冷えたわ。良かった。
この間、怒られたばかりなのに、どうしましょう・・・。
愛想を尽かされてしまったら、私・・・。)
「・・・ヴィア。」
(とにかく、謝り通すしかないわ。)
「・・ルヴィア。」
(取り敢えず、今日帰るのが恐ろしいけれど、
覚悟を決めるしかないわね!)
「シルヴィア!」
「はいいいい!!」
レイフォードの声で、意識が帰郷したシルヴィアは、背筋をピンと伸ばして大声で返事をする。
レイフォードを見ると、驚いた表情でこちらを見ていた。
そして、呆れた表情に変わる。
「幾ら呼んでも何も反応しなかったが、どうしたのだ?」
「いいえ!何でもありません。少し考え事をしていただけなのです。」
「部屋に着いたぞ。」
「あら、いつの間に!」
「お前・・・。入るぞ。」
「はい!」
部屋に入ると、侍女が3人準備万全で待機していた。
「さあ、シルヴィア様、早速整えましょう。」
「レイフォード様、申し訳ございませんが、ここで。」
侍女の1人がレイフォードの退室を促す。
「隣の部屋で待たせて貰って良いだろうか。」
レイフォードが請う。
侍女達は考えるまでもなく了承する。
「ええ。畏まりました。」
レイフォードは中扉から、隣の部屋へ入る。
それを見計らい、侍女達がシルヴィアにわっと詰め掛ける。
「さあて!!やりますよ!!」
「随分とばっさりと切ってしまいましたね・・・。」
「ふむ。ここがこうなわけだから、反対側を同じ様に合わせる形が良いですね。」
三人が同時に話し出す。
「余計な仕事を増やしてしまってごめんなさい。」
シルヴィアの言葉に三人は顔を見合わせて、笑い出す。
「何言っているのですか。シルヴィア様のお世話が出来ると聞いて、
皆くじ引きしたくらいですよ。」
「そうそう。あの夜会の件からシルヴィア様の話題で持ち切りですよ。」
「みーんな、シルヴィア様にお会いしたい者達ばかりですからね。」
「え?そうなの?」
三人とも大きく頷く。
「さ、さ、座ってくださいな。もっと、もっとお綺麗に仕上げますよ!」
一時間後、両サイドを短くする、所謂姫カットと言う髪型に整えて貰った。
侍女達は、可愛い、可愛いと一頻り褒めちぎった後、自分達の持ち場に戻って行った。
侍女達が去って、暫くするとノック音が聞こえた。
「もう入って大丈夫か?」
シルヴィアは扉の方へ向かい、レイフォードに応え扉を開ける。
「はい。もう終わりましたので、大丈夫です。」
シルヴィアの髪を見て、安堵する。
「また、随分と可愛らしい髪型になったな。」
壊れ物を触るかのように、シルヴィアの髪に触れる。
シルヴィアはその優しい仕草に、胸がどうしようもなく高鳴る。
「あ、あああ、ありがとうございます?」
「悪かったな。」
「え?」
「人前であんな事、お前は慣れていないのに。」
先程の事を詫びるレイフォードの眉が少し下がる。
シルヴィアは思い出して、顔がほんのり赤くなる。
「い、いいえ。少し驚きましたけれど、大丈夫です。」
「なら、いいんだ。デューイ殿下を退けるためとは言え、やり過ぎた。」
レイフォードの言葉で、シルヴィアはピンときた。
(ああ!殿下に困っている私の為に、レイフォード様はお芝居をなさってくれたのだわ!
ちゃんとお礼を言わないと!!)
「旦那様!」
「なんだ?」
「ありがとうございました!」
シルヴィアががばっと頭を下げる。
「いきなりどうした?」
「先程の事、私が困っていたから、旦那様はお芝居をしてくださったのですよね?
ああすれば、殿下も諦めて下さるであろうと。
あの時に気付いていれば、もっとちゃんとお芝居出来たのですが、
頭が回らなくて申し訳ございませんでした。」
「・・・・・・・・・・・。」
「でも、本当にありがとうございました。
旦那様は本当にお優しいのですね。」
シルヴィアは興奮しながら、早口で捲くし立てる。
「・・・・・ちょっと待ってくれ。」
にこにこ笑いながら話すシルヴィアをレイフォードが制止する。
「はい?」
「芝居・・・・?だと?」
レイフォードは我が耳を疑った言葉を口にする。
シルヴィアはとても良い笑顔を見せる。
「はい!旦那様のお芝居がとてもお上手でしたので、私も騙されてしまいましたわ!
敵を欺くには味方からと言いますもんね!」
「は、ははははは・・・・。嘘だろ・・・。」
頭を抱え、その場にしゃがみ込むレイフォード。
「ええええ!どうなされたのですか!!??」
いきなりの事で慌てふためくシルヴィア。
(ああ、もう舐めていたよ・・・。ここまで鈍いなんて。
いや、俺が悪いのだけれどな。
・・・・早く屋敷に帰りたい・・・。)
自分の中で折り合いを付け、すくっと立ち上がる。
頭上に疑問符が浮かび上がっているのが分かる程、
狼狽えているシルヴィアが目の前に立っている。
「もう、手加減しないからな。」
にこりとレイフォードは微笑む。
「????て、手加減?」
(お前が幾ら恥ずかしがろうが関係ない。絶対に逃がさないからな。)
「もう、ここでの用件は終わっただろう。早めに帰るとしよう。」
「では、お父様にご挨拶をしないと。」
「必要ない。」
「え?」
レイフォードはシルヴィアの手を取る。
「伯とは先程、話をして俺の屋敷に立ち寄ってもらう。
王にも話は通っているから、もう帰っても大丈夫だ。」
シルヴィアがデューイに迫られていた時に、レイフォードとジュード、サリュエルは
これ以上長居をしては、またひと悶着あるだろうと考え、
シルヴィアの髪を整えたら、帰っても良いと許可を得ていた。
「だから、早々に立ち去るぞ。」
「そうだったのですね。分かりました。」
レイフォードに手を引かれてシルヴィアは城を後にする。
帰りの馬車の中。
終始レイフォードはシルヴィアを隣に座らせ、手を握ったまま離そうとしなかった。
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