全部欲しい満足

nano ひにゃ

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セカンドコンタクト 2

「イズミ? 歳言うの嫌か?」
「ち、違います! 名前!」
「え?」
「初めて名前呼んでもらったから、嬉しくて」
「そうだっけ? てか泉水って名前だったんだな」
「はい! 二ノ宮泉水です。今年で25です」
「25かぁ、若く見えるな。社会人してるって言われてなきゃ大学生でも。……服装変えれば高校生もいけるんじゃないか?」

 横に座る泉水の姿をちょっとだけ体を離して眺めた國実は真剣に羨ましく思っていったのだが、泉水にとってしてみればため息もののセリフで少し気分が沈む。

「昔からそうなんです……きっと早生れなせいもあると思うんですけど。実は、来年の三月にならないと25歳にはならないんです」
「さっきは今年って言ったぞ」
「学年的にはって事で、少しでも大人に見られたいんです」
「そのうち嫌でも年取るのにもったいないな。ちゃんと自分で生活してる大人なんだから気にする必要ないと思うけど」
「……國実さん大人っぽいから」

 今度は國実の方が沈む番だった。別に日頃老けているなんて言われたことのない國実だが、五歳年下の泉水に言われるとつい気になってしまった。

「なんかショック……そんな老けて見えるか?」
「そういう意味ではなくて、カッコいいって言うか、スーツとか凄く似合うし」
「サラリーマンがスーツ似合わないとか不味いから……」
「スタイリッシュって言うか、仕事できる感じがするって言うか」

 必死というわけではないが、止めないといつまでも言い募りそうな泉水になんだが照れくさくなってきた國実はとりあえず言い分を受け入れることにした。

「お世辞でも嬉しいって一応言っておくよ」
「本気ですよ! 僕以外にもそう思ってる人たくさんいますよ」
「そうかなー、普通だと思うけど」
「そう思ってるのは國実さんだけです」

 國実は苦笑いで、否定するだけ無駄だと諦めた。

「まあ、じゃあとりあえず、ありがとうってことで」
「はい!」

 大きく頷いた泉水に少し呆れながらも國実は気を取り直して話を進める。

「で、オレのこともセフレってわけでもなさそうだから、お試し期間も継続だな。オレとしては正式になるまで本番するつもりないんだけど?」
「それは、國実さんの言うところの遊びだけってことですか?」

 國実は頷く。

「オレ達の大きく合わないところはそこの趣味だからさ。多少のことは変えられても、性の不一致ってのは致命的だ。無理して付き合っても先は見えてるだろ?」
「そう……ですね」
「だからこそのお試し期間。あっ、重要なこと忘れてた。これこそ言っておかないとだな」
「何ですか?」

 一呼吸置いてはっきりとした声で言った。

「オレ、セックスは普通なんだ」
「普通?」
「縛ったり、道具使ったりしないってこと」

 戸惑った泉水は、当然理由を知りたがった。

「縛ると気になって集中できないし、セックスしたい時って相手に触れていたい時だから道具使っても楽しくないんだよね」

 泉水は何も言うことができず、しかし國実が泉水との付き合いを簡単に承諾しないことに少し納得がいったところもあり、ふと考え込んでしまった。

「…………」
「嫌になった? 今なら全然止められるよ。なんせお試しだから」
「ううん……嫌にはなってない」

 そう言いながらも浮かない表情の泉水に國実は答えを求めた。

「ノーマルなのでも平気? というかした事あるのか?」
「……ありますけど、正直イマイチでした」
「じゃあオレともダメじゃないか?」
「それはやってみないと分かりません!」

 なんと言われても泉水は諦められない。寧ろ最初から切り捨てるでもなく、ちゃんと泉水と向き合ってくれる國実をもっと知りたくなっていく。
 國実としては来るもの拒まずなところがあるので泉水が望むなら突き放したりはしないが、経験上この関係を積極的に深めることには若干の抵抗があった。

「分かると思うけどな」
「分かりません!」
「……そうですか。じゃあもし3ヵ月間オレとの遊びでイズミの欲求が満足できて、オレもイズミのこと真剣に好きになったら、最終関門としてセックスしよ。それでお互い納得できたら、はれて恋人ってことでどうだ?」

 泉水は笑顔で大きく頷いた。

「はい、それでお願いします」
「嘘や誤魔化しはなしだからな。オレはそういうの見抜くの長けてるから、騙すだけ無駄だぞ」
「わかってます」

 わざわざ念押しするように言った言葉にも怯む様子もなく受け入れる泉水に、國実の方が考えを変えられていくような感覚を覚えていた。

「イズミは変わってるな」
「そうですか?」
「普通ここまで言われたら引いたりするだろ?」
「國実さんの言うこと間違ってないと思うから。僕が長く付き合ったりできないのは、結局そういうところをいい加減にしてきたせいだと思うんです。だから最初にちゃんと話したり、お互いを理解する時間をくれる國実さんは僕にとってとっても貴重な人なんです」

 確かに恋愛するのにこんな段取りを決める人間はそういないだろうと國実も普通に思う。見えない駆け引きや、感情の盛り上がりや勢いでするものを、わざわざ話し合うなんて情緒もなにもあったもんじゃない。それを逆に良いと褒められてしまっては肩透かしをくらっているようなもので、國実もついつい受け入れてしまう。

「そっか。イズミは真面目なんだな」
「國実さんもそうだと思いますよ。それに優しいです」
「そうかなー」
「そうです」
「断言か、あとで幻滅しても知らないからな」
「大丈夫です」
「…………さわやかな笑顔すぎて遊ぶ雰囲気じゃなくなったな」

 とてもこれから卑猥な行為をするようなムードではない。優しいなんて言われたあとでは尚更だ。
 しかし泉水にはあまり関係ないらしく、國実の呟きに悲しそうな顔をする。

「…………してくれないんですか?」

 國実には欲情するしないは関係ないことなので遊びたいと言われれば拒む理由もない。

「ご要望と有らば」

 ニヤリと笑えば、泉水はすぐに雰囲気のある表情に変わる。

「して欲しいです」
「じゃあ服脱いでベッドな」


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