全部欲しい満足

nano ひにゃ

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最後に3

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「明るいうちからは嫌だとかないよな?」

 國実はためらいなくスーツを脱いでいくので、泉水はドギマギしてどうしていいか分からなくなっていた。もちろん今日何のためにここに来たのかは理解しているし、初めての國実との行為に期待もあるし、これで別れるかもしれない不安、あと自分が國実とのノーマルなもので満足できないかもしれないという自分自身への不安もあった。
 でもそれこそ試してみないと分からない。
 だからこそ今日という日は待ちに待った日なのだ。
 それなのに、國実が目の前でいつにない動きを見せると驚きで挙動不審になってしまった。そのせいで、國実に変な心配をさせている。わかっているのに、ウロウロと部屋の中を歩き回るしかできない。
 ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外して首元を緩めるところまでで國実の動きもいったん止まった。

「泉水、大丈夫だから」

 國実はその泉水の心情を察したのか、笑いながらも泉水を捕まえベッドの端へといざなってくれた。

「國実さん……」
「一緒に風呂でも入るか、ほれ、脱がしてやるから」

 されるがままに泉水はパンツ一枚まで脱がされ、パウダールームに導かれ、そこですべてを晒す。
 國実もそこですべてを脱いだ。
 わけもなく泉水は目を逸らした。
 どこの生娘だと自分でも思ったが、初めて見る國実の裸を直視できない。
 國実もそんな泉水を笑ってはいたが、何も言わずバスルームの扉を開けシャワーを出すとその下に泉水を立たせた。 独立したバスタブにお湯を溜め始めると、泉水とともにシャワーを浴び始めた。
 濡れる二人はお湯以外の熱を感じられるほど密着する。

「ぁ」

 泉水が國実の表情を確かめるように顔をあげるとおもむろに口を塞がれた。
 口の中に國実の舌を感じると、堰を切ったように泉水はそれをむさぼり始め息もままならないほど夢中になっていた。 
 激しい口づけは泉水の脳を痺れさせ、余計なことはどこかへいってしまった。
 今目の前にいる男が欲しい。
 本能としては、同性を欲することはおかしいのかもしれないが、泉水はそれでも欲望のままに男を求める。

「っん、・・・・・・ぁあ」

 足りない。
 唇が離れていくと追いかけようとする泉水の首筋に手を這わせその動きをいなすと、國実の唇は鎖骨のあたりに降りていき、首元の手はさらにその下へ撫で降りていく。
 胸にある突起を流れる水の滑りで潰すようにゆるく撫でまわされる。

「あっ、ぁあ・・・・・・、くんっあ」

 そこをさらに口に含まれれば快感は何倍にも膨れ上がる。
 國実に抱かれている、この三か月散々快楽におぼれさせてもらっていたのに、全く別もののように体が喜びを訴える。

「くぅ、國実、さんっ、あぁきもちぃい」

 呼べば國実と目があった。
 しぶきの中で國実が笑ったように見えた、すると。

「あぁあ!!」

 そこにゆるくでも歯を立てられた。
 軽い痛みではあるが予想だにしなかったその刺激に、泉水にはぜるような衝撃。
 イッったわけでもないのに腰を支えられていなかったら、泉水は確実に床に倒れた。

「はぁ、あ、なっなんで・・・・・・?」

 若干虚ろになった目で見れば國実の頭はすでにそこになく、泉水を抱きすくめるようにされて國実の顔は見えなくなった。
 変わりに息がかかるほどの耳元で声が聞こえた。

「これくらいは普通だろ」

 そのまま耳をかじられると、泉水に反論の余裕はない。
 一気に過敏になった泉水の体は全身で國実を感じとり密着する胸板から伝わる鼓動も、泉水の下腹部にあたる國実の熱もまだまだ弱くはあったがちゃんと反応してくれていることを教えてくれていた。
 腰を支えていた國実の手はゆっくりと下がり、目的の場所をそっと撫でた。

「準備はしてきたか?」

 コクリと頷くと、指が入ってくる感覚があった。

「あっ、・・・・・・ん」

 それは慣れたもの。
 指は確かめるように奥へ進んでいき、大丈夫だと分かると指はさらに増えた。
 強く刺激するつもりはないようで、探るようにそこを広げていく。

「ん、・・・・・・ぁ・・・・・・あ」

 時折かすめるようにしていいところを過ぎていく。
 國実はちゃんと知っている。泉水のどこが良くてどうされるとより感じるかを、泉水以上に把握しているはずだ。
 だからここでは過度に熱を高ぶらせないようにしていると泉水にも分かっていた。
 國実の指がそこからいなくなるのにさほど時間はかからなかった。

「湯に浸かるか」

 促されるまま泉水は國実にもたれるようにして二人で浴槽に入ると、お湯の温度で体は緩んだ。
 泉水からは國実の顔は全く見えない。代わりに背後から回された國実の腕がよく見え、左腕は体を固定するように、右手は泉水の中心へ行き、優しくしごき始める。
 ダイレクトな快感に國実の腕にすがるように手を絡めると、左手は泉水の左手を握り指を絡める。

「一回くらいイッとくか?」
「ぃや、やだ」

 フルフルと頭を動かす泉水に國実は苦笑を浮かべたが、その主張を尊重し、國実の右手は決して泉水を刺激し過ぎずに、のぼせる前にさっさと湯から上がった。
 二人ともバスローブを羽織り、軽く頭をタオルドライしながらベッドに座る。

「國実さん、俺もしちゃダメ?」

 國実がしっかり手加減したおかげで、体は熱を持ちながらも焦るほど追いつめられていなかった泉水は自分からも國実を高めたいと思った。
 國実は愉快そうに笑う。

「どうぞ」

 泉水は國実の前に座り、バスローブの中から國実の反応しきってないそれを取り出し、重さを手の中に感じながらそっと口づけた。
 泉水は何度もやってきたことだから少し余裕があるはずだと思ったのに、余裕どころか泉水の方がどんどん夢中になっていっていく。
 初めてじっくり目にする國実のものは泉水の手と口で確実に体積を増し、それが嬉しくてもっともっとと泉水は頑張ってしまう。國実の顔を見ることも忘れ、喉の乾いた犬が水をもらったようにペロペロと必死に舌を動かたり、口いっぱいにそれを含めばどんどん奥へ飲み込もうとする。
 最初は國実も好きにさせていたが、あまりの集中に快感より心配が先に立った。
 そっと泉水の頭に片手を置くと髪を梳くように撫でながら体と距離を取るように促し、それでいて自分のいいところを教えるように少し腰を動かす。
 泉水はそれを正しく理解し、的確に応えていく。

「・・・・・・っ、上手」

 僅かに熱のこもったその声に、泉水はやっと目線を國実に向けた。
 今までプレイの時に見せていた笑顔じゃない、泉水が逆らえないあの笑顔じゃなくて、それなのに泉水はいつもと変わらず、それ以上に体を熱くさせてその笑顔から目が離せなくなる。
 慈しむそうな優しい笑顔、その中に感じてくれていると分かる色気があった。
 泉水はむさぼりそうになるのを止めて、國実と感覚を共有するように丁寧な動きに変わっていく。
 すると泉水は自分の手や口が別物になったように、そこから快感が引き出されているようだった。

(なにこれ・・・気持ちいい)

 過去の男に同じ行為をするとき、泉水は自分が道具になったような気持ちで相手をよくすることだけを考えていた。
 だから相手が強引に動き出して自分が苦しくても気持ちいいと思われるなら構わないと。逆に自分のテクニックに夢中にさせるのも楽しかったので、相手を責め立てることだけを考えながらしていた。
 それなのに、泉水は今自分の快楽を追っている。自分で慰めているわけではなく、全部國実を満たすために動いているはずなのにだ。
 口の中にある國実のものは口内を撫でまわすように、そこに触れる手は熱を分け与えられるようにそこから離せない。

「もう大丈夫だ」

 そう言われるまでうっとりとそれを堪能した泉水は名残惜しそうに手放した。

「まだ終わってないぞ」

 國実は困ったように笑っている。
 自分にはまったく触っていないのに熱に浮かされたようにホワホワとしながらベッドにあがる泉水に、國実はもうあまり手加減せずに押し倒すと、バスローブの紐を解き膝を広げて泉水の秘部をあらわにする。
 傍らに準備しておいたローションをそこへたらすと指を滑り込ませる。

「あっ、・・・・・・」

 泉水は自分で膝を抱え、國実の動きをぼんやりを見やる。
 いくらもしないうちに、その場所に熱いものをあてられる。

「入るぞ」

 泉水の返事は必要なかったようで、すぐさま体を開く感覚が泉水を支配し始める。
 ゆっくりでも確実に体内に収められていく、その重さに泉水は背をのけぞらせ手は枕を掴む。
 浮いた膝を國実が支えるように持つと、さらに押さえ込み深く楔を打ち込むように腰を進めていく。

「ああ・・・っあ、く、にみさ、ん」

 痛みなどまるでない、ただそこが熱くて仕方なく、溶けるように疼くように体がそれを求める。

「んんっあぁ、はぁ、・・・・・・ぁああ」

 泉水は自分でも気が付かぬ間にイッていた。
 せり上がるもとは違い、高ぶったものが溢れるようにイッたために、解放されたのではなくそれどころか次の備えのためだけのようだった。
 國実も泉水がイッたことはあまり気にしていないようで、一旦奥まで入れたものを間をおかずにゆっくりと抜き始める。

「ぅん、あぁ」

 國実の動作は少しずつ速度を増していった。
 たっぷりと使われたぬめりが卑猥な音を部屋中に響かせ、それと泉水の嬌声が相まって行為の激しさを物語っていた。

「あんっ、・・・・・・ひぅ、はああぅあっ、っ」

 何度もキスをして、國実に縋るように抱き付き、それでも泉水は快感溺れはせずに、國実に抱かれていると強く意識していた。
 気持ちよくてわけが分からなくなっても、そこにいるのが誰か、そうさせているのは誰が、そして自分でちゃんと感じてくれているとそれだけはちゃんと分かった。
 その事実が泉水を幸せにさせた。

 自分が何度達したか全く変わらなかったが、國実がイクときだけは分かった。
 三度。
 体を思いやってしっかりゴムを付けている國実は、イッたあと体内からいなくなることで泉水が切なそうな顔を見せるのであらたに付け直して泉水を満たしてくれた。
 
 イクことが目的でないセックスは初めてだった。


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