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港町アマリン編
交渉される
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王都王宮。
アマリンから、王都へ帰ってきてすぐに、王太子殿下に呼ばれた。まぁ、要件はわからなくはない。
「やぁ公子、大変だったようだね?」
「王太子殿下におかれましては……」
「あぁいいよ楽にしてくれ。公子に畏まられると、返って気持ちが悪い」
失礼なと言いたいところだが、普段宝飾店では、無礼講とはまではいかないが、王族に対する態度ではないと理解はするので口を紡ぐ。
王太子殿下、結構寛大な方だよなぁ……。逆行前は関わりがあまりにもなくて、印象がとても薄いのだが。
モートンが紅茶を準備し、席に座るよう促されたので、従う。
場が整ったとばかりに、殿下は紅茶を手に取ると、視線をこちらに寄越した。
「さて、サフィ辺境伯、及び、ミルモア伯爵令息についてだけれど」
「えぇ」
サルジュは今、王族を拉致したとして、国家転覆罪及び、拉致罪に問われている。
よって、寄り親である我がバーナード公爵家、ミルモア伯爵家、それぞれの当主が右往左往している現状だ。
その中で呼び出された、バーナード公爵令息……一体どんな話し合いが行われるというのか、社交界は固唾を飲んでいることだろう。
実際、俺自身も、この件で呼ばれただろうとは予測できても、どう落とし所を付けるのかが予測できないでいる。
さて、何を言われるのやら。
「まず、辺境伯については、取り潰す。サフィ辺境伯には息子が一人いるのだけれど、その息子も取り潰しでいいとのことだ。どうやら貴族社会が苦手だったようだね」
「では、誰か別の者を派遣するので?」
「あぁ、今はまだ候補だけれど、ティーアが是非と言っていてね。今は留学中だけれど、ルフス公爵家には嫡男がいるから、まぁ、許可が降りるんじゃないかな?」
ティーアには二歳下の弟がいる。見聞を広めるとかで、他国に留学中だ。
俺がティーアと関わるようになった頃には他国に行っていたので、まだ会ったことはない。互いに嫡男の立場だから、そのうち嫌でも会うだろう。
ティーアは現状婚約者もいないし、ルフス公爵家なら信用に値するという事なのだろう。
「とはいえ、ティーアは領地経営の知識があるわけじゃない。しばらくは辺境伯子息が補佐に入ってくれることになっている」
「息子は信用に値する……と」
「あぁ。父親とは反りが合わなかったようで、辺境の騎士団にずっといたらしい。領地のこともよくわかっているし、民からも慕われているようだから、問題ないと判断した」
辺境の地はこれで問題なさそうだ。
むしろ、問題があるのは我が公爵家の方か。
父は既に、降格処分されてもおかしくはないと考えているようだし、そうなれば、俺とキャロの婚約もどうなる事やら。
想いはあっても、身分はどうしようもない。それが、貴族社会である。
「さて、次はミルモア伯爵家……というかバーナード公爵家についてだけれど」
「はい」
「……公子、君爵位継いでくれない?」
「…………は?」
間抜けな声が出た。爵位を継ぐ? いやまぁ、嫡男だし、それは構わない、構わないが。
父はまだ健在だ、なぜ、今、その話題を。
「公子は今回の立役者だ、それに三年前の建国祭の件もある。王家は君に感謝する立場であって、淘汰する立場ではない。けれどそれは、メルア・バーナード個人についての評価だ」
「はぁ……」
「だから、ね? 君が公爵になってくれたら、より良い関係が築けるはずなんだよ」
それには現公爵、邪魔だよね? と、それはそれは良い笑顔でのたまってくださった。
それにより、俺は彼が言わんとすることを理解する。
「つまり両親には隠居しろ、と」
「今まで、領地をほったらかしにしてきたんだ。公爵としての仕事をしろってことさ」
「ミルモア伯爵は」
「存続できると思う?」
はい、とも、いいえ、とも言えなかった。
両親を領地に送れと言われた時点で分かることだ。
サフィ辺境伯同様、ミルモア伯爵家も取り潰す。そう、王家は判断した。
「爵位授与と同時に、キャロとの婚約も王家公認で発表する。どう? 悪い話ではないだろう? これで、誰も文句は言えないし、バーナード公爵家は今までのように日陰の存在じゃなくなる」
「俺としては、日陰の存在で構わないのだが」
「私が構う。君とこうやって情報交換ができないじゃないか」
今まで、こちらが有利な場面が多かった。だからこそ、この王太子の本質を理解しきれていない。
今まさに、彼はこちらに商談を持ちかけているのだ。それも、俺が断れないものを。
「情報を寄越せというか」
「王家もさ、綺麗事ではどうにもならないんだ。ねぇ、公子、王家専属の情報屋、やってもらえないかな?」
全てはこの国のために。
王家が嫌う、裏までも利用しようというのだ。それも、元から繋がっている俺を使って。
「くくっ、ふふふっ」
「公子?」
「ははっ、あー……なるほどなぁ……」
この本性、逆行する前に知りたかったなと思いつつ、今のメルア・バーナードだからこそ知れたとも思う。
悪くない、この王だったら、俺も着いていこうと思える。
「ラインハルト・ファストロ陛下」
「まだ、殿下だけど?」
ソファから立ち上がり、右手を胸にあて、ポウ・アンド・スクレープの形をとる。
俺が急に畏まったものだから、息を飲む声がした。
「メルア・バーナード、その命しかと受け取りました……今後公爵家は王家に変わらぬ忠誠を誓うと宣言致します……なんなりとお使いくださいませ」
ニヤリと笑えば、ラインハルト殿下はしばらく固まり、その後爆笑した。
アマリンから、王都へ帰ってきてすぐに、王太子殿下に呼ばれた。まぁ、要件はわからなくはない。
「やぁ公子、大変だったようだね?」
「王太子殿下におかれましては……」
「あぁいいよ楽にしてくれ。公子に畏まられると、返って気持ちが悪い」
失礼なと言いたいところだが、普段宝飾店では、無礼講とはまではいかないが、王族に対する態度ではないと理解はするので口を紡ぐ。
王太子殿下、結構寛大な方だよなぁ……。逆行前は関わりがあまりにもなくて、印象がとても薄いのだが。
モートンが紅茶を準備し、席に座るよう促されたので、従う。
場が整ったとばかりに、殿下は紅茶を手に取ると、視線をこちらに寄越した。
「さて、サフィ辺境伯、及び、ミルモア伯爵令息についてだけれど」
「えぇ」
サルジュは今、王族を拉致したとして、国家転覆罪及び、拉致罪に問われている。
よって、寄り親である我がバーナード公爵家、ミルモア伯爵家、それぞれの当主が右往左往している現状だ。
その中で呼び出された、バーナード公爵令息……一体どんな話し合いが行われるというのか、社交界は固唾を飲んでいることだろう。
実際、俺自身も、この件で呼ばれただろうとは予測できても、どう落とし所を付けるのかが予測できないでいる。
さて、何を言われるのやら。
「まず、辺境伯については、取り潰す。サフィ辺境伯には息子が一人いるのだけれど、その息子も取り潰しでいいとのことだ。どうやら貴族社会が苦手だったようだね」
「では、誰か別の者を派遣するので?」
「あぁ、今はまだ候補だけれど、ティーアが是非と言っていてね。今は留学中だけれど、ルフス公爵家には嫡男がいるから、まぁ、許可が降りるんじゃないかな?」
ティーアには二歳下の弟がいる。見聞を広めるとかで、他国に留学中だ。
俺がティーアと関わるようになった頃には他国に行っていたので、まだ会ったことはない。互いに嫡男の立場だから、そのうち嫌でも会うだろう。
ティーアは現状婚約者もいないし、ルフス公爵家なら信用に値するという事なのだろう。
「とはいえ、ティーアは領地経営の知識があるわけじゃない。しばらくは辺境伯子息が補佐に入ってくれることになっている」
「息子は信用に値する……と」
「あぁ。父親とは反りが合わなかったようで、辺境の騎士団にずっといたらしい。領地のこともよくわかっているし、民からも慕われているようだから、問題ないと判断した」
辺境の地はこれで問題なさそうだ。
むしろ、問題があるのは我が公爵家の方か。
父は既に、降格処分されてもおかしくはないと考えているようだし、そうなれば、俺とキャロの婚約もどうなる事やら。
想いはあっても、身分はどうしようもない。それが、貴族社会である。
「さて、次はミルモア伯爵家……というかバーナード公爵家についてだけれど」
「はい」
「……公子、君爵位継いでくれない?」
「…………は?」
間抜けな声が出た。爵位を継ぐ? いやまぁ、嫡男だし、それは構わない、構わないが。
父はまだ健在だ、なぜ、今、その話題を。
「公子は今回の立役者だ、それに三年前の建国祭の件もある。王家は君に感謝する立場であって、淘汰する立場ではない。けれどそれは、メルア・バーナード個人についての評価だ」
「はぁ……」
「だから、ね? 君が公爵になってくれたら、より良い関係が築けるはずなんだよ」
それには現公爵、邪魔だよね? と、それはそれは良い笑顔でのたまってくださった。
それにより、俺は彼が言わんとすることを理解する。
「つまり両親には隠居しろ、と」
「今まで、領地をほったらかしにしてきたんだ。公爵としての仕事をしろってことさ」
「ミルモア伯爵は」
「存続できると思う?」
はい、とも、いいえ、とも言えなかった。
両親を領地に送れと言われた時点で分かることだ。
サフィ辺境伯同様、ミルモア伯爵家も取り潰す。そう、王家は判断した。
「爵位授与と同時に、キャロとの婚約も王家公認で発表する。どう? 悪い話ではないだろう? これで、誰も文句は言えないし、バーナード公爵家は今までのように日陰の存在じゃなくなる」
「俺としては、日陰の存在で構わないのだが」
「私が構う。君とこうやって情報交換ができないじゃないか」
今まで、こちらが有利な場面が多かった。だからこそ、この王太子の本質を理解しきれていない。
今まさに、彼はこちらに商談を持ちかけているのだ。それも、俺が断れないものを。
「情報を寄越せというか」
「王家もさ、綺麗事ではどうにもならないんだ。ねぇ、公子、王家専属の情報屋、やってもらえないかな?」
全てはこの国のために。
王家が嫌う、裏までも利用しようというのだ。それも、元から繋がっている俺を使って。
「くくっ、ふふふっ」
「公子?」
「ははっ、あー……なるほどなぁ……」
この本性、逆行する前に知りたかったなと思いつつ、今のメルア・バーナードだからこそ知れたとも思う。
悪くない、この王だったら、俺も着いていこうと思える。
「ラインハルト・ファストロ陛下」
「まだ、殿下だけど?」
ソファから立ち上がり、右手を胸にあて、ポウ・アンド・スクレープの形をとる。
俺が急に畏まったものだから、息を飲む声がした。
「メルア・バーナード、その命しかと受け取りました……今後公爵家は王家に変わらぬ忠誠を誓うと宣言致します……なんなりとお使いくださいませ」
ニヤリと笑えば、ラインハルト殿下はしばらく固まり、その後爆笑した。
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