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港町アマリン編
逆行した悪役、悪人になる
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豪華絢爛な大広間。
本日は建国祭ではなく、俺の爵位授後継式である。
全ては恙無く進み、俺が爵位を継ぐのを反対するかと思われた両親も、爵位を息子に継がないなら、降格すると言われ、渋々首を縦に振った。
それから大急ぎで授与式の準備がなされた。
その間に、サフィ辺境伯は毒杯を与えられ、サルジュは、バーナード公爵領にある、鉱山へと送られた。
憂いもなくなったところで、バーナード公爵家の当主が変わることが発表されたのである。
この間、半年ほどであり、俺とキャロの婚約が本決まりしたのだと、社交界では噂になった。
ま、噂に間違いはないのだが。
「キャロ、手を」
「は、はい!」
この半年、キャロを甘やかそうとしたのだが、本人がそれはもう嫌がったので、結局普段通りである。
とはいえ、今日は王家主催の夜会。キャロをエスコートするのは、俺の役目である。
腕に手を添えるだけで照れるキャロは可愛いと思う。
俺の心が欲しいなどと大胆なことを言っておきながら、いざ距離を詰めたら、恥ずかしいからやめてくれという。
嗜虐心が煽られるが、ぐっと我慢する。嫌われたい訳ではないからな。
大広間では、様々な情報交換がされており、話題のバーナード公爵家が入ると、ざわっとしたが、遠目で見るだけで話しかけてくるわけではない。
まだ、様子見の段階なのだ。
陛下それから、王太子殿下が会場入りする。
しんっと静まった室内。殿下が前に出ると、俺の名を呼んだ。
陛下じゃなくて殿下なのか、と不思議に思いつつも、前に進む。
そもそも爵位を継ぐだけだったら、ここまで盛大に発表しなくても良いのだが、婚約発表があるから、こうなったのだろうなと。
この時の俺は考えていたのだ。
「今ここに、バーナード公爵家新当主が誕生したと宣言する!」
「光栄にございます。メルア・バーナード、公爵家の名に恥じぬよう、精進して参ります」
型通りの受け答えをしたはずだ、それだというのに、ラインハルト殿下は意地悪い笑顔を浮かべた。
まるで、逃がしはしないと言われているようである。
「それから、バーナード公子……いやもう、バーナード公と呼ぶべきか、君に一つ役目を与えようと思う」
「役目……ですか?」
ここは公の場。一応敬語を使うが、訝しげになるのは大目に見て欲しい。
情報屋になれ、みたいなことは言っていたが、まさかここで言うわけもあるまい。では何を俺に任せようとしているのか。
「ラインハルト・ファストロの名において、貴殿を宰相に命ずる。精進したまえ? バーナード公」
「さい……しょう……?」
んな話聞いてないぞ! 確かに現宰相家には、次の宰相に相応しい人物はいない。
けれど、現宰相閣下もお年ではあるので、ラインハルト殿下が、陛下と呼ばれる前に世代交代が望ましい。
それを、俺がやれと。
「なんなりと使えと言ったのは公だ、忘れている訳ではないだろう?」
「た、確かに言いましたが! それとこれとは話が違います!」
「いや違わないさ、何より公は情報収集に長けている……何度宰相が公により、頭を抱えたと思う? その頭脳と情報能力、王家のために役立てろ……拒否は許さん」
横暴な。
キャロとの婚約だけでは、俺の手綱は握れないと踏んだのか、前々から目をつけられていたのか……。
「……俺のような者に権力を渡すのですか?」
「ようなとは、公らしくない発言だな」
「話をそらさないでください。この国がどうなっても、俺は責任を負いかねますが?」
シナリオンを使った葉巻を広めたのは、誰だと思って? と心の中で呟きつつ、ラインハルト殿下を見る。
しかし彼は、無邪気な笑顔を返してきた。
「悪人には悪人にしかわからないものがある。公の視野は王家に必要不可欠だ。公の働きに期待する、王家のための悪人になれ、以上だ」
「……拝命致します」
何を言ってもダメそうだと、深々と頭を下げる。
逆行前、言われのない罪で悪役として、第二王子に処刑された俺だが、それを回避した先にあるのも、王家のための悪人のようである。
本日は建国祭ではなく、俺の爵位授後継式である。
全ては恙無く進み、俺が爵位を継ぐのを反対するかと思われた両親も、爵位を息子に継がないなら、降格すると言われ、渋々首を縦に振った。
それから大急ぎで授与式の準備がなされた。
その間に、サフィ辺境伯は毒杯を与えられ、サルジュは、バーナード公爵領にある、鉱山へと送られた。
憂いもなくなったところで、バーナード公爵家の当主が変わることが発表されたのである。
この間、半年ほどであり、俺とキャロの婚約が本決まりしたのだと、社交界では噂になった。
ま、噂に間違いはないのだが。
「キャロ、手を」
「は、はい!」
この半年、キャロを甘やかそうとしたのだが、本人がそれはもう嫌がったので、結局普段通りである。
とはいえ、今日は王家主催の夜会。キャロをエスコートするのは、俺の役目である。
腕に手を添えるだけで照れるキャロは可愛いと思う。
俺の心が欲しいなどと大胆なことを言っておきながら、いざ距離を詰めたら、恥ずかしいからやめてくれという。
嗜虐心が煽られるが、ぐっと我慢する。嫌われたい訳ではないからな。
大広間では、様々な情報交換がされており、話題のバーナード公爵家が入ると、ざわっとしたが、遠目で見るだけで話しかけてくるわけではない。
まだ、様子見の段階なのだ。
陛下それから、王太子殿下が会場入りする。
しんっと静まった室内。殿下が前に出ると、俺の名を呼んだ。
陛下じゃなくて殿下なのか、と不思議に思いつつも、前に進む。
そもそも爵位を継ぐだけだったら、ここまで盛大に発表しなくても良いのだが、婚約発表があるから、こうなったのだろうなと。
この時の俺は考えていたのだ。
「今ここに、バーナード公爵家新当主が誕生したと宣言する!」
「光栄にございます。メルア・バーナード、公爵家の名に恥じぬよう、精進して参ります」
型通りの受け答えをしたはずだ、それだというのに、ラインハルト殿下は意地悪い笑顔を浮かべた。
まるで、逃がしはしないと言われているようである。
「それから、バーナード公子……いやもう、バーナード公と呼ぶべきか、君に一つ役目を与えようと思う」
「役目……ですか?」
ここは公の場。一応敬語を使うが、訝しげになるのは大目に見て欲しい。
情報屋になれ、みたいなことは言っていたが、まさかここで言うわけもあるまい。では何を俺に任せようとしているのか。
「ラインハルト・ファストロの名において、貴殿を宰相に命ずる。精進したまえ? バーナード公」
「さい……しょう……?」
んな話聞いてないぞ! 確かに現宰相家には、次の宰相に相応しい人物はいない。
けれど、現宰相閣下もお年ではあるので、ラインハルト殿下が、陛下と呼ばれる前に世代交代が望ましい。
それを、俺がやれと。
「なんなりと使えと言ったのは公だ、忘れている訳ではないだろう?」
「た、確かに言いましたが! それとこれとは話が違います!」
「いや違わないさ、何より公は情報収集に長けている……何度宰相が公により、頭を抱えたと思う? その頭脳と情報能力、王家のために役立てろ……拒否は許さん」
横暴な。
キャロとの婚約だけでは、俺の手綱は握れないと踏んだのか、前々から目をつけられていたのか……。
「……俺のような者に権力を渡すのですか?」
「ようなとは、公らしくない発言だな」
「話をそらさないでください。この国がどうなっても、俺は責任を負いかねますが?」
シナリオンを使った葉巻を広めたのは、誰だと思って? と心の中で呟きつつ、ラインハルト殿下を見る。
しかし彼は、無邪気な笑顔を返してきた。
「悪人には悪人にしかわからないものがある。公の視野は王家に必要不可欠だ。公の働きに期待する、王家のための悪人になれ、以上だ」
「……拝命致します」
何を言ってもダメそうだと、深々と頭を下げる。
逆行前、言われのない罪で悪役として、第二王子に処刑された俺だが、それを回避した先にあるのも、王家のための悪人のようである。
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