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第2話 フィリピン最南端。過疎の港町スラム地区!ガキんちょ達との凄惨な戦いが始まる。(5)
しおりを挟む乾季の時期。スラムのガキんちょどもは暑さ高じて日がな一日水場に集結です。
雨季を終えたフィリピン。5月初旬の頃でしたか⁉私がスラムで暮らし始めて2~3か月程が過ぎていました。熱帯地方フィリピンに息苦しい熱波が到来し連日猛暑が続きました。乾いた風が辺りを舐めては行きますが其(そ)れは勿論熱風です。スラムの至る所で蚊と蠅が何時(いつ)にも増して大量発生。そして強烈な汚臭に腐臭です。私は幾分慣れてはきていたものの、時折ゲーセンモドキの商いを閉めて、寝込む事もシバシバ・・・・・・
そんな時、決まって私を世話する薬物中毒のジョイの姉。私の傍(かたわ)らに寄り添うジョイを押しのけ追いやり、薬物中毒の彼女は私を一心不乱に看護です。
何故に彼女は私を看護してくれるのか?思い当たる事件がひとつ。
それは、
只々(ただただ)ゲーム画面をボンヤリ眺め過ごすだけだった彼女が、ガキんちょどもに交じってゲームプレイを始めた当初の出来事でした。『ドンキーコング』をプレイの最中、いつものようにゲームオーバーを繰り返す彼女。兎も角最初の一面もクリア出来ません。其(そ)れもそのはず・・・其(そ)れには機敏な反射神経と或(あ)る種の平常心と『慣れ』が必要なのです(恐らく!?)。私は見るに見かねて手助けです。そんな事を2~3日繰り返した或る日。要領を得た彼女が要約先の面へと歩を進めた時・・・
突然、彼女は両手の平を口に宛(あて)がい奇声を発して目を白黒。とうにゲームなど投げ出して、額から大量の汗を流し上半身をモンドリ打って椅子にへたり込みました。やおら起きたその症状。つまりは中毒の発作のようでした。私は急いでキッチンから水桶と自前のタオルを手配です。そんな時に限って、キッチンからリビング辺りにかけ、呆れた事に誰ひとり見当たらない。木造の潰れそうな椅子にしな垂れた彼女。額と首回りを濡れタオルで拭(ぬぐ)いました。ポカンと口を空け此方(こちら)を伺うガキんちょども。私はガキんちょどもに叫びました。
「ジョイ!ジョイだあァァ!!!」
理解できたと見えて・・・ガキんちょどもの幾人かがジョイが営む店へと駆け出して行きました。
「アアアァ!!!!!!」
彼女は大声で喚(わめ)きます。
「★○▼▽▲△■!!!」
そしてテーブルに突っ伏したまま何語かの唸り声。私には其(そ)のビサヤ語だか何語だかがさっぱり理解できません。彼女の口からは大量の涎(よだれ)が垂れ流されて幾筋もの糸を引いている。慌てて彼女の口周りを拭(ぬぐ)う私。其(そ)の刹那(せつな)、激しい勢いで私を殴りつける彼女。女性らしからぬ強烈な本気パンチと罵声。どうやら彼女『触るな』と叫んだようでした。ジョイと違い長身で肉付きの良い、アスリート的なスタイルだけは抜群な彼女。尋常でない痛みが走る。何度も殴られ床にへたり込む。私は完全に萎(な)えてしまいました。
何故なら・・・
口内が何やら切れてしまったからでした。口許から鉄臭さ気味の血がにじみ出していたのです。私はすっかり萎(な)えてしまいました。その時、唐突に私の脳裏に映画やドラマのワンシーンとジョイの姉の姿が重なり浮かび上がった。それは精神病錬。危険な患者と目されたのか!?ベット上にガチガチに幅広ベルトで縛られた喚(わめ)き狂う彼女の姿。
「タロ。原因は虫だァ。ゲームの虫だァ!」
やがて数時間の後の落ち着いた姉から事情を聴き出したジョイ。彼女はゲームの2面以上の先々に潜(ひそ)む蜂キャラに大きく反応したようでした。
実はそんな発作が、その後2~3回繰り返された。ところが驚いた事にジョイ及びジョイの大家族は、私を誰ひとりとしてフォローしてくれません。そして、そんな事が繰り返された後でも、相変わら薬物中毒の姉は私のゲーセンモドキ部屋に居座りました。何故誰も止めないのか?私に任せっ切りなのです。そんな訳で私は思案しました。
『ドンキーコング』ではダメだぞッと・・・
私も狂ってしまいそうな蜂キャラ登場の面。
そこで彼女に宛(あて)がったのは、落ち着き払った大人なパズルゲーム『上海』でした。
落ち着いてプレイ出来る上に絵柄も選択可能。単純ですが奥の深い名作ゲームです。彼女には正(まさ)に最適でした。
私と出会い人生で初めてゲームに触れた彼女。いよいよ麻薬的(まさかの薬物中毒的)にハマりにハマりな日々でした。そして朝から晩まで長時間、我がゲーセンもどき部屋に居座りプレイに没頭の彼女。やがて発作の周期が治まり始め、穏やかに過ごす日々が続きました。
此(こ)れは所謂(いわゆる)・・・リハビリな効果を発揮だったのでしょうか⁉定かではありません。つまりは只々(ただただ)タイミングが良かっただけの事。薬との縁をキッパリ断ち切った後の、禁断症状が緩和され始めたタイミングです。定かではないのですが・・・
乾季に入った5月初旬。熱帯の猛暑とスラムの環境に打ちのめされてた・・・まだまだヒ弱だったあの頃の私。寝込む私の傍(かたわ)らで必死な面持ちで看護してくれたジョイの姉さん。あの時の彼女の出で立ちや面持ちからは、薬物中毒の姿は微塵も感じなかった。極々平凡に暮らす普通の女性に見えたのです。
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