花冷え

霞野

文字の大きさ
2 / 2
出会い

春の雪

しおりを挟む
風に運ばれて、白い桜の花びらがドアを開け放っている玄関へ舞い込んできている。
菫は玄関の横にある金縁の全身鏡で乱れたところは無いか入念にチェックする。
今日は入学式。
夢にまで見た名門○○女子高等学校生活最初の一日目だ。
菫は寮に入っているので敷地内にはもう足を踏み入れているのだが、それでも胸の高鳴りはおさまらない。
これから、私の素敵な高校生活が始まるんだ!
ピカピカのローファーをはいた足を踏み出して、菫は校舎へと向かう。

入学式が終わり、割り振られたクラスの教室へ行く途中の中庭で、同じ寮で顔見知りの三つ編みの女の子が声をかけてきた。
「寮一緒だよね、私まり。お友達にならない?」
菫は入学式で周りのお嬢様具合に友達ができるか少し不安になっていたので、安心して首を縦に振ろうとした。
その時だった。
強い力で肩を押されて、菫はバランスを崩した。
「?!」
振り向くと、菫を押しのけたであろう人物と目が合った。
菫はその少女に目が奪われた。
陶器のように白い肌。サラサラの長い髪をハーフアップにしている。鼻がすっと通っていて、小さな唇は熟したように赤い。整った眉のすぐ下にあるアーモンド型の瞳は冷たい光を宿していて、氷の矢のように菫を射抜いた。
しかし、長いまつ毛をぱちりと閉じた次の瞬間には、その光はきれいさっぱり消えていた。
「ごめんなさい、少し急いでて。あら、頭に花びらが付いてるわよ」
クスリと笑ってその子は菫の頭に手を伸ばした。
菫は、思わず後ずさってしまった。こんな美しい人に触れられるのは恥ずかしい、という気持ちと、なにか違和感、恐怖を感じたのだ。
「じ、自分でとります」
「そう」
その子は一瞬菫の全身をなぞるように見つめ、笑顔に戻ってまたね、と言って去っていった。

これが、菫と咲雪の出会いだった。

咲雪が行ってしまうと、まりが、咲雪の行ってしまった方角を眺めながら、
「私、中学からこの学校なんだけど、今の人はちょっと有名な人よ」
と菫に教えてくれた。
「えっ、まりちゃんエスカレーター組なの?」
菫はまずその事に驚いてまりの顔を見た。
「正真正銘のお嬢様だあ!」
憧れを込めた響きで菫が感嘆の声をあげると、まりが首を横に振って、
「それは今の人、咲雪さんみたいな人を言うのよ」
と諭すように教えてくれた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

処理中です...