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<夏草と旗>1
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「またアイツ負け戦の応援に来るのかな?」
「アレだと応援される方が恥ずかしいよな」
明らかに相手を馬鹿にした小学生達の笑い声が男子トイレ内に響く。
「俺達が恥ずかしくない応援でも見せてやるかな~!」
騒がしく悪乗りしていた集団がトイレから出て行った後、男子トイレの個室に偶然居た健太は怒りをあらわにしてまだ小さな拳を握り締めていた。
剣幕な表情でトイレから外に出た健太の心情とは違い、外の景色は良く晴れた青空だった。
苛立つ気分を振り払うように、健太が階段を駆け降りた先のグラウンドには、小学生の野球部員達が試合前の円陣を組んでいる。
「健太さん、もう試合が始まりますよ」
先に座って待っていたハカセが健太を呼び寄せる
と健太は「試合の時は団長と呼べ」とハカセにメガホンを見せつけた。
「ハイハイ、解りましたよ団長さん」
およそ小学生らしからぬ口調で、ハカセは同級生の健太に笑顔を反した。
「今日こそ勝つやろ、絶対!」
陣取っていた前列の客席に、団長らしく健太は腕組み座る。
「そんな急には勝率変わらないですよ」
打率・防御率・勝率のデータが、びっしりと書き込まれたノートを数枚めくり確認するハカセ。
「大丈夫やって、俺が奇跡を呼び込むからな!」
健太はハカセに笑顔を反して、手に持っていたメガホンを二回試し打ちした。
健太の自信とは裏腹に、対戦チームの観客席と比べると明らかに少ない観客が、戦歴と期待度を物語っている。
試合が始まるとピンチはすぐに訪れた。
健太の応援するガンバルズ先攻無得点の1回、対戦チームレッドレックス先頭の1番内野手が対戦チーム初安打となる右前打。
ブラスバンド部の応援練習も兼ねている為、練習試合だとは思えない程に盛り上がるレッドレックス応援席。
毎試合付いて回るブラスバンド部が、流行りの曲を吹き鳴らしている。
ここから2死満塁と攻め立てられ、健太の声援届かず、4番外野手の中前適時打で先制点を奪われた。
応援席で前屈みにうなだれる健太が顔を上げると、レッドレックスの応援席でニヤつくブラスバンド部員数人と視線が合う。
試合が始まる数分前の出来事を思い出すには十分の状況だった。
「あいつら~!ふざけやがって!」
怒りをあらわにして叫び声をあげる健太に、驚くハカセが「どうしたんです急に?」と尋ねるが健太は「今‥‥あいつら、あいつらが‥‥」と指す指を震わせ、言葉に出来なくなっている。
健太が指差す先を見て、状況を理解したハカセは「あぁ‥‥そういう事ですか」と小さく数回頷き再びノートに視線を落とした。
その間にもレッドレックスの攻撃は続き、キレた健太は「バット折れろ、ランナーこけろ」等を叫ぶ暴言で反撃を開始するが、結局2点を追加されてしまった。
「もう勝敗は見えましたね」
冷めた口調でノートに追加記入していくハカセに健太は「まだ試合は終わってないやろ!」と立ち上がり声を荒げるが、ハカセは気にもとめない様子で記入を続けている。
一時間三十分後ハカセの予想どうりに終わった試合の結果は、7-0でレッドレックス圧勝だった。
数分後には沢山居たレッドレックスの応援者達も帰り、静まり返るグラウンドでは両チームが整備をしている。
試合後の二人には会話も無く、気の抜けた健太が良く晴れた空を見上げていると、近寄って来たガンバルズの監督が「健太君、いつも応援してくれるのは有り難いけど暴言は駄目だぞ」と軽く注意を受ける。
健太は無言で小さく頷き、監督が立ち去ると深いため息をついた。
「気にする事ないですよ」
心配そうにハカセはフォローするが健太は「よし決めた!昼飯食い終わってから基地で反省会やろう!」と何事も無かったかのように立ち上がった。
それぞれの家で昼食を食べ終えた二人は、自転車で横断歩道下の河原に作った基地に集合した。
およそ河原には似つかわしくないカラフルな赤いソファーに、まるで我が家のようにくつろいだ様子で腰を下ろす二人。
「今日も駄目だったか~」
見込みの無い勝利を悔しがる健太。
「やはり予想どうりの結果でしたね」
満足気にノートを見せつけるハカセに健太は「負けた結果とか、そんな事より一緒に応援しようぜ」と持っていたメガホンを手渡そうしたがハカセは受け取らず「応援しても変わらないですよ、結果はデータどうりですからね」と冷たく受け流した。
「なんでも予想どうりじゃ面白くないだろ」と食い下がる健太にハカセは「僕にはデータ予想の方が面白いですから」と再びノートを見せつける。
「面白いと思うけどな~応援団」
両手を伸ばし退屈そうに背伸びする健太。
「二人では応援団とは言えないですからね」
ハカセの軽はずみな一言に健太は「じゃあ三人だったら良いよな」とまるでかぶりつくように前のめりになって、断る隙を与えない。
「どうせ集まらないですよ」
負け惜しみのようなハカセの一言に健太は「よし!決定~!」とハカセの了承も無いまま一人で納得している。
「そうと決まれば、先ずは団旗と団員募集のチラシだな~」
健太の企みをハカセが白々しく聞き流していると「団員はやっぱり声の大きい奴が良いな」と健太は自分の言葉に頷き、応援団拡大妄想に耽けっていた。
「それよりもさっきからあそこで見ている人が居ますよ」
話しを逸らしハカセが指差す先には、同級生の光久が笑顔で立っている。
河原の周りには基地以外何も無く、普段は人も通らない場所なので二人は不思議そうに首を傾げていた。
「丁度良いや、あいつ応援団に誘ってみようかな」
ソファーに置いていたメガホンを見て思い出したように呟く健太。
「アレだと応援される方が恥ずかしいよな」
明らかに相手を馬鹿にした小学生達の笑い声が男子トイレ内に響く。
「俺達が恥ずかしくない応援でも見せてやるかな~!」
騒がしく悪乗りしていた集団がトイレから出て行った後、男子トイレの個室に偶然居た健太は怒りをあらわにしてまだ小さな拳を握り締めていた。
剣幕な表情でトイレから外に出た健太の心情とは違い、外の景色は良く晴れた青空だった。
苛立つ気分を振り払うように、健太が階段を駆け降りた先のグラウンドには、小学生の野球部員達が試合前の円陣を組んでいる。
「健太さん、もう試合が始まりますよ」
先に座って待っていたハカセが健太を呼び寄せる
と健太は「試合の時は団長と呼べ」とハカセにメガホンを見せつけた。
「ハイハイ、解りましたよ団長さん」
およそ小学生らしからぬ口調で、ハカセは同級生の健太に笑顔を反した。
「今日こそ勝つやろ、絶対!」
陣取っていた前列の客席に、団長らしく健太は腕組み座る。
「そんな急には勝率変わらないですよ」
打率・防御率・勝率のデータが、びっしりと書き込まれたノートを数枚めくり確認するハカセ。
「大丈夫やって、俺が奇跡を呼び込むからな!」
健太はハカセに笑顔を反して、手に持っていたメガホンを二回試し打ちした。
健太の自信とは裏腹に、対戦チームの観客席と比べると明らかに少ない観客が、戦歴と期待度を物語っている。
試合が始まるとピンチはすぐに訪れた。
健太の応援するガンバルズ先攻無得点の1回、対戦チームレッドレックス先頭の1番内野手が対戦チーム初安打となる右前打。
ブラスバンド部の応援練習も兼ねている為、練習試合だとは思えない程に盛り上がるレッドレックス応援席。
毎試合付いて回るブラスバンド部が、流行りの曲を吹き鳴らしている。
ここから2死満塁と攻め立てられ、健太の声援届かず、4番外野手の中前適時打で先制点を奪われた。
応援席で前屈みにうなだれる健太が顔を上げると、レッドレックスの応援席でニヤつくブラスバンド部員数人と視線が合う。
試合が始まる数分前の出来事を思い出すには十分の状況だった。
「あいつら~!ふざけやがって!」
怒りをあらわにして叫び声をあげる健太に、驚くハカセが「どうしたんです急に?」と尋ねるが健太は「今‥‥あいつら、あいつらが‥‥」と指す指を震わせ、言葉に出来なくなっている。
健太が指差す先を見て、状況を理解したハカセは「あぁ‥‥そういう事ですか」と小さく数回頷き再びノートに視線を落とした。
その間にもレッドレックスの攻撃は続き、キレた健太は「バット折れろ、ランナーこけろ」等を叫ぶ暴言で反撃を開始するが、結局2点を追加されてしまった。
「もう勝敗は見えましたね」
冷めた口調でノートに追加記入していくハカセに健太は「まだ試合は終わってないやろ!」と立ち上がり声を荒げるが、ハカセは気にもとめない様子で記入を続けている。
一時間三十分後ハカセの予想どうりに終わった試合の結果は、7-0でレッドレックス圧勝だった。
数分後には沢山居たレッドレックスの応援者達も帰り、静まり返るグラウンドでは両チームが整備をしている。
試合後の二人には会話も無く、気の抜けた健太が良く晴れた空を見上げていると、近寄って来たガンバルズの監督が「健太君、いつも応援してくれるのは有り難いけど暴言は駄目だぞ」と軽く注意を受ける。
健太は無言で小さく頷き、監督が立ち去ると深いため息をついた。
「気にする事ないですよ」
心配そうにハカセはフォローするが健太は「よし決めた!昼飯食い終わってから基地で反省会やろう!」と何事も無かったかのように立ち上がった。
それぞれの家で昼食を食べ終えた二人は、自転車で横断歩道下の河原に作った基地に集合した。
およそ河原には似つかわしくないカラフルな赤いソファーに、まるで我が家のようにくつろいだ様子で腰を下ろす二人。
「今日も駄目だったか~」
見込みの無い勝利を悔しがる健太。
「やはり予想どうりの結果でしたね」
満足気にノートを見せつけるハカセに健太は「負けた結果とか、そんな事より一緒に応援しようぜ」と持っていたメガホンを手渡そうしたがハカセは受け取らず「応援しても変わらないですよ、結果はデータどうりですからね」と冷たく受け流した。
「なんでも予想どうりじゃ面白くないだろ」と食い下がる健太にハカセは「僕にはデータ予想の方が面白いですから」と再びノートを見せつける。
「面白いと思うけどな~応援団」
両手を伸ばし退屈そうに背伸びする健太。
「二人では応援団とは言えないですからね」
ハカセの軽はずみな一言に健太は「じゃあ三人だったら良いよな」とまるでかぶりつくように前のめりになって、断る隙を与えない。
「どうせ集まらないですよ」
負け惜しみのようなハカセの一言に健太は「よし!決定~!」とハカセの了承も無いまま一人で納得している。
「そうと決まれば、先ずは団旗と団員募集のチラシだな~」
健太の企みをハカセが白々しく聞き流していると「団員はやっぱり声の大きい奴が良いな」と健太は自分の言葉に頷き、応援団拡大妄想に耽けっていた。
「それよりもさっきからあそこで見ている人が居ますよ」
話しを逸らしハカセが指差す先には、同級生の光久が笑顔で立っている。
河原の周りには基地以外何も無く、普段は人も通らない場所なので二人は不思議そうに首を傾げていた。
「丁度良いや、あいつ応援団に誘ってみようかな」
ソファーに置いていたメガホンを見て思い出したように呟く健太。
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