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雨実 和兎

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<百円分の出来事>2

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数日後の放課後、寂れた商店街横の神社に訪れた三人は、希望に満ちた眼差しで神社を見上げていた。

「やっぱり日本人が祈るなら神社やんな‥‥」

賽銭箱の前に立った健太は、入れようとした百円玉を心惜しそうに握りしめている。

「なんだか一日来ないと来るの久しぶりな感じですね」

振り返り公園を眺めるハカセが感傷的に呟くと、同調するようにチビも頷く。

「どうかヨロシクお願いします、俺のアイス代なので‥‥」

一人健太だけは景色に目もくれず、手の中の百円玉を見つめている。

「もしかして、百円入れる気ですか?」

意外そうにハカセが聞くと「その、もしかやで絶対効果が違うはずや!」と健太は頬を膨らませ断言するが、まだ手放せず握りしめている。

「団長早くしてくださいよ、ココに居ると又注意されるかも知れないので」

そう言ってハカセは早々と賽銭を投げ入れ、お祈りを済ました。

「そんな急ぐもんじゃないやろ-!」

まるで呪術のような手つきで健太は百円玉に気を送り「お願いしま~す!!」と神様が驚く位に大きな声で叫び、百円を投げ入れた。

「完璧やろ!」

祈り終えて振り返る健太は、一仕事やり切ったサラリーマンのように強く息を吐き出している。

「そんな大声だと神様でも心臓止まりますよ」

飽きれ口調でハカセが笑うと「コレでどこに居ても聞こえるやろ」と健太は誇らしげに笑顔を返した。

「さあ早く基地に行きましょう!警察が来ると誤解されますよ!」

不安がるハカセに急かされ、三人は早々と移動を始める。

「ここは相変わらずお客さん少ないですね‥‥」

自転車でのんびりと商店街を進む三人は、自分達が応援した成果を確認しているようだった。

「増える前に辞めさせられたからな~」

健太は残念そうに、数少ない客に視線を送る。

「百円分良い事有ると良いですけどね!」

からかい気味のハカセに健太は「まあ気休めやけどな!」とさっき迄の必死さを忘れて、いっちょ前に格好つけている。

「でも、なんでかな~?みんな俺達の事をうるさいって思ってたんかな~?」

警官に注意された事を思い出したのか、見るからに元気を無くす健太。

「みんながみんなという訳ではないと思いますけどね‥‥」

慰めるようにハカセが呟くとチビも頷くが、結果を思い返してか二人共下を向いたままでいる。
落ち込んだ三人が会話も無く、ダラダラと商店街を進んでいると「あらっ!坊や達、もしかして公園で商店街応援してくれてた子かい?」と三人は何故か、惣菜屋の小肥りな女店主に呼び止められた。

ハカセは注意されるのを恐れてか「いえ、違います」と小声で答えるが同時に「そうやで!俺が団長!」と健太の大声に掻き消されてしまう。

「まだ若いのに坊や達、偉いね~」

感心する店主の言葉に、三人は照れ臭そうな顔を見合わせている。

「褒めても応援は出来ひんで、警察に禁止されたから!」

思い出してか見るからに落ち込む三人を、見兼ねた店主は「そう‥‥それは残念やね~、コレでも食べて元気出して!」とパック入りの唐揚げを三人に差し出す。

「大丈夫です、僕達そんなにお金持っていないので‥‥」

ハカセは気まずそうに返そうとするが「子供が遠慮なんかせんの!お金なんて良いから貰ってって」と店主は笑顔で手渡した。

「ヤッター!腹減ってたんや俺!」

遠慮無く受け取る健太の代わりに「ありがとうございます、次に来る時は必ず親と買いにきますので」とハカセは深々と頭を下げて、丁寧にお礼を述べる。

「そんなん良い~の、気にせんといて!」

気持ちを強調するような店主の大袈裟な手振りと笑い声で、遠慮気味だったハカセとチビも笑顔に変わっていた。

「元気出して、また遊びに来てね!」

声援をくれた店主に手を振り商店街を離れた三人は、基地で唐揚げをほうばっていた。

「旨~い!やっぱり商店街応援して正解やったな~!」
「続けれたらもっと貰えたかも知れないですよ」

唐揚げをぱくつきながらハカセが冗談づくと、チビも嬉しそうに頷く。

「いや~、もう充分満足や!」

一人先に食べ終わった健太は幸せそうに、くつろいでいる。

「百円分良い事有りましたね」

神社での出来事を思い出したのか、ハカセがからかうように笑うと「その百円分のせいで、アイスは食べれんようになったけどな」と健太は強がり、笑い返した。

その頃三人が通う小学校の校長室では、校長が地域雑誌を感慨深げに眺めていた。
小さくだがその地域雑誌の一面には、三人が商店街を応援する写真とコメントが載っている。
それは百円分の良い事だと言って三人が笑いあっていた予想を上回る程、三人には都合の良い出来事だった。
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