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16 お得意様は攻略対象者

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 次の日からなぜか攻略対象者1さんが、礼拝に毎日来られるようになられました。

 ここ、平民用のご近所さん用の礼拝堂でお貴族様は奥なんだけどな?

 そして、とても迷惑な事に来られる度に話しかけてくる。
 
 私、暇そうに見えて色々と忙しいのですが。
 
 下っ端なので雑用しかまだ出来ませんが、雑用も多岐にわたりまして、色々とあるんです。

「スカーレット、困ってる事はない?」

 ……貴方が来て困ってます。

 平民さん達も貴族がいたら落ち着かなくて大変困ってます!

 なーんて社会人として言えるはずもなく

「いいえ、特には。お気遣い頂きましてありがとうございます」

 と、当たり障りのない模範解答を述べておく。

「そうか……なにかあったら出来るだけ用意するから、遠慮せずに言って欲しい」

「……はい。かしこまりました」

 ……暇なのかな?この人。


 なぜ自分達で貴族の位奪って神殿に送った癖にかまいにやってくるのか。

 でもここは神殿だし?礼拝堂だし?

 私は神官だし?お貴族様だし……?

 貴賤に関係なくウェルカムだし?

 帰ってって迷惑ですって言えないのが痛いところではある。

 献金をいっぱい置いていってくれるお得意様なんだよな。

 毎度ありがとうございます。

 それに名前を未だに思いだせない為に、現在私は図書室で貴族名鑑とにらめっこ中だ。

 お得意様の名前忘れるなんて社畜としてはさすがに不味い。

「あ、ライリーか。そうそう……そんな名前」


 ……図書室そういえば初めてきたな。

 神殿での仕事……普通に本を読めたりする時間まであるんだよなぁ。

 前は本なんて読む時間なかったもんな。

 資料読み込む時間と、メールチェックで移動の時間も終わってたし。

 本を読む時間があったとしても訓練された社畜の場合は自己啓発本を読むだろう。

 悪役令嬢スカーレット時代も本なんていくらでも読む時間があったのにのんびり読書など、一切行わず狂ったように課題をこなす日々。

 悪役令嬢回避もそんな事ばかりやってるから上手くいかなかった可能性すらある。

 動いてないと働いてないと死んでしまう、まるでマグロである。

 そして、この社畜は不味いことに分厚いこの神殿が奉る女神シャダンの聖書に興味を示す。

 ……あ、創業者の本の内容丸暗記してないなんて。

 私……やばくない?!
 
 と、さすが社畜である。

 創業者が出した本を丸暗記して朝礼で朗読会とかしちゃってたもんね。

 ボロボロになるまで読むのが誉れみたいな会社だったもんな。

 
 この日から訓練された社畜は暇があれば聖書を読み漁り、神官にも信者にもなんて、信心が深いのかと勘違いを発生させて、それもまた聖女への布石となってしまっていたなんてこの時も予想はしてなかった。
 
 
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