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29 鶴の一声
しおりを挟む今まではただの献身的で信仰心が厚い、健気で可哀想な元貴族の深窓ご令嬢だとスカーレットはとても運のいいことに神殿長に勘違いされしまい、そう認識されて、ある程度好きなように、自由に好きなだけ働く事を容認されていたが
この日社畜を神殿長は心配してからなのだが、神殿長室に呼び出され神殿長と個人面談を行われた結果、
スカーレットの、プロの訓練された社畜の人として、生物としての生存に対する危うさに実は結構有能な神殿長に気付かれてしまい、
スカーレットが自主的に、勝手に、欲望のままに行っていた、深夜残業、早朝早出行為が……。
残業行為全般が禁止されただけではなく、行動制限まで課せられてしまうことになった。
行動制限とは当面の間身体が本調子に戻るまでは、礼拝堂での仕事も禁止という、普通の神官ならば大喜びするがスカーレットにとってはあまりにも酷すぎるそれは処刑宣告だった。
せっかくここまで頑張って身を粉にして、
血反吐をはきながら、築きあげたものが上司の天から一言により全てお釈迦になるような。
大事に大事に育てあげた……あと一歩で最高の焼き加減という焼肉を横から、食べないの? と奪われるような。
それは社畜時代に何度も何度も何度も…経験した頑張って休日返上で作りあげた企画書を上司があたかも自分で作成したもののように勝手に持ち出して発表したり。
営業であと一歩の所というところで他の社員と担当替えが行われたり……。
そんなこと、社畜時代になんども経験して何度もやけ酒を繰り返してきたことだが、まさか悪役令嬢となり、神殿に追放されてやっと好き勝手好きなだけ己の欲望の赴くままに働いていただけなのに、ちょっと風邪をひいたくらいでまた同じ天からの鶴の一声で…
仕事を全て取り上げられるなんて。
それば神殿長がスカーレットの事を身体を精神を思って行った正しすぎる行為なのだが、スカーレットにとって社畜にとってしてみれば、それは理不尽以外の何者でもなかったのだ。
だから、この瞬間にあまり興味のないたまに会うただ造形が綺麗なだけの上司が、死ぬほど大嫌いな糞上司に昇格した瞬間である。
そして訓練された社畜は持って生まれてしまった溢れ出すハングリー精神であの手この手をつかい、神殿長の監視を巧妙にくぐり抜けまた勝手に働きに出かけるなんて簡単に予想がつく……。
それにそのくぐり抜けた達成感がまた社畜を喜ばせるという。
そしてそれに気付いた神殿長とのいたちごっこを無駄に繰り返し始めた。
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