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30 3日坊主?
しおりを挟む神殿長に体調が改善するまで通常業務まで禁止と厳しく言い渡されてから……。
今日で早3日が経過し、礼拝堂の早朝掃除も、孤児院で深夜残業も、全てまるっと禁止されたスカーレットは。
転生後の社畜にしては大変珍しく大人しく言いつけを守り、自分の私室で過ごしていたが私室では聖書を読み込むしかやることがなくてとても暇だった。
だがそれしかやることがないので、やはり大人しく休むなんて社畜の辞書にはないらしく……。
プロの社畜は文机に聖書をささっと広げ実家から持ち込んだお洒落な文鎮で、紙を押さえて、インクに羽ペンという、今から勉強するぞ!という完璧な体制を整えてここに珈琲があれば完璧なのになと思うが無いもんは仕方ないなと諦めて
そして……。
女神シャダンの聖書を、創業者の教えを丸暗記してないなんて社畜が、すたる!
と…いう一般人には不可解な社畜の理論を展開し今日も暗記作業に没頭し始めた。
聖書はなかなかに分厚い本だが受験勉強の過酷さに比べればなんのその。
それに社畜は今は十代のぴちぴちの若者だ。
脳も大変に若々しく、昔の社畜生活の中で疲れた身体に鞭打って、残業まみれで寝不足の中で覚えた国家資格の参考書に比べれば実に容易い。
やればやるだけスポンジの如く吸収していき、これがなかなかに面白い。
それに食堂にいけば食事も用意もしてくれるし部屋は個室で他の神官達は皆自分の担当の職場に仕事に出掛けた為に、神殿の奥の神官達が住まうこの場所はとても静かだった。
学生時代は勉強なんてたいして面白くもないだけどやらなくてはならない義務だったが
成人し大人としてある程度過ごしてわかる学生時代の有意義さ。
学生という身分はなんて素晴らしいのかと転生した悪役令嬢時代にとても感じた。
……この世界の存在理由である
乙女ゲームの舞台は学校だった。
その学校事態は義理妹のフローレンスや王太子サミュエル、攻略対象者達のせいで全く楽しくはなかったが授業はとても楽しめた。
知らない事を知れるというのは実にいい。
質問しても会社のようにめんどくさがられないし、
「なんでそんなことも知らないの?」
「今は忙しいからあとで」
等の精神攻撃もされないし、親切に教えてくれた。
教師達はスカーレットに対しても平等に
接して学ばせてくれた。
王妃になることは決してないとわかっていたが
王妃教育もなかなかに有意義だったなと思う。
マナーやダンスがとても難しく苦労したが
上手く出来ればとても褒めて貰えたし。
だが、いかんせん本ばかりで読んでいてもやっぱり全然楽しくないし満たされない。
やはり汗水たらして、駆けずり回り必死に苦労してなにか達成したい。
それに一人きりでずっといると少し寂しくなってきた。
静かすぎる私室でひとりぼっち。
悪役令嬢時代を思いだしてしまう。
家でも学校でもいつも一人きり。
一人は別に苦ではないが、常に一人だとさすがの社畜でも寂しくなってくる。
礼拝堂で礼拝に来る平民のご近所さん達と、おはようというあいさつすら今はない。
孤児院での、夜泣きする子ども達のお世話も禁止されたし。
……夜泣きのお世話の禁止?
じゃあ昼間のお世話は?
それは禁止とは神殿長は言っていない…。
それに孤児院に出入り禁止とも言われてない。
「……ふーん?」
スカーレットは社畜は、閃いてはいけないことを閃いてはしまった瞬間である。
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