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67 閑話 乙女ゲーム中の社畜。
しおりを挟む訓練された社畜と共存を始めた悪役令嬢スカーレットは、とうとう乙女ゲームが始まったのか……と、フローレンスの学園入学を横目に、これから始まるであろう自分が邪魔者扱いされる日々に胃がキリキリと痛んだ。
どうせなら、ヒロインとして転生したかったなと何度か思ったが、なってしまったものは仕方がないと諦めて悪役令嬢スカーレットとして今まで過ごしてきた。
金髪縦ロールなんて奇抜なヘアスタイルなのに誰も何も言わない不思議な世界には、これ以上に奇抜な色とりどり髪色があって、金髪縦ロール程度じゃ目立たなかった。
家じゃ父親は空気だし、継母はなんか目が笑ってなくて気持ち悪いし、義理の妹でヒロインは小さい頃からつまらない悪戯ばかりしてきて疲れるし、義理の弟は影が薄いし、家に居ても楽しく無かった。
深窓のご令嬢生活なんて三日で飽きた。
それに比べて学園は知らない事を知れるし、教師は質問したら答えてくれるし、勉強していい成績をとっただけで、褒めて貰えるなんて、なんて楽な世界かと、社会人は、社畜は思う。
大人になれば、社会に出れば、人に褒めて貰えるなんて事はほとんどなくなる、出来て当たり前、出来ないほうがおかしいし、認めて貰うにはそれ相応のスキルだったり、なにかしらの特別な行いが必要になってくる。
スカーレットにとって学園は唯一安らげる場所だった。
なのに、とうとう乙女ゲームが安らぎの学園で始まってしまう、それはスカーレットにとってストレスだった。
だけど、なるべく乙女ゲームの断罪を回避したいなと、思って王太子サミュエルにも攻略対象者達にも関わらず、ヒロインである妹にも近づかないようにして、徹底的に回避した。
まさか、それが裏目に出て、ヒロインであるフローレンスのやる気に火をつけてしまうなんて、スカーレットは予想だにしなかった。
まさか、フローレンスがシスコンを拗らせているなんて、スカーレットは考えない。
それに王太子サミュエルに、悪い印象を残さない様に、完璧な淑女として、本音を全て包み隠し、うわべだけの関係で接し続けていた事が、まさか裏目に出ているなんて、スカーレットは気づかない。
そして、自分と関係ない所で、公爵令嬢レオノーラが、フローレンスに嫉妬して嫌がらせを行っていたなんて、フローレンスから逃げ続けていたスカーレットは気づけない。
じゃあそっちで乙女ゲーム開始したら良かったのにと、このゲームやっぱりだけは営業したくないなと、この事実に気付いていたら言ったであろう。
社畜が悪役令嬢を回避しようとして、行っていた全ての行動が裏目に出ていたなんて。
それもその筈で、社畜はこの世界が乙女ゲームの世界だと知ってはいるが、この乙女ゲームをやらない? と、会社でお誘いされただけで、実際はやっていないのだから。
登場人物の性格や、背景など何も知らないし、この乙女ゲームがどういった内容かも知らないし。
登場人物の簡単な説明と、名前しか知らなかった。
それで、上手く悪役令嬢を、断罪を回避しろと、いうほうが間違っている。
だから、自分の事すら何も知らぬままで、周りの思惑も知らずに空回りしながら回避し続けた。
乙女ゲームの強制力というよりは、全てをガン無視し放置し続けたのが悪かったのだ。
関わらなければ何も起こらないなんて、そんなことはないのに。
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