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18 胸に刺さる言葉
しおりを挟むすごい拍子抜け。
魑魅魍魎が蔓延る地獄の一丁目だと覚悟していたのに、ほのぼのした雰囲気で終始にこやかで朗らかなお茶会。
きっとそれはひとえにアイリーン王太子妃殿下の人徳の成せるわざなのだろう。
私もあんな風に自信に満ち溢れる笑顔で明るく振る舞えたら、何か変わっていたのだろうかと思ったが。
絶対に無理だし、やりたくない。
元来私は一人静かに部屋でのんびりするのが好きで、ただ窓の外を眺めるのも楽しいし、物思いにふけっているのも好きだし、空を見上げている時間が堪らなく好きで。
ごくたまにだけなら良いが、人が多いところはあまり好きじゃないし外に出るのが好きじゃない。
だからアイリーン王太子妃に憧れはするが、羨ましいとは全くもって思えない。
……でもきっと今生の親が欲しかったのは。
私みたいな暗くて引きこもってばかりいる令嬢より、アイリーン皇太子妃みたいな明るくて社交的な令嬢だったのだろう。
だから出来の悪い私は。
明るい姉が婿取りする為の費用を捻出する為に、まるで売られるようにしてフォンテーヌ公爵家のお飾りの妻になった。
貧乏男爵家の令嬢の癖に分相応な令息に恋をした姉は、家の資金繰りが立ち行かなくなるほどのドレスを着て意中の令息に会うために夜会に行く。
そんな明るく美しい姉の事ばかり贔屓にする今生の両親は幼い頃から姉を手元に残し婿取りしたがってたし、こうなるだろう事はわかっていた。
きっと私が転生者でなければ心が病んでしまっていただろうが、転生者である私はそんなもんかと気にするのをやめた。
なのに久々に浴びせられた今生の父の言葉が胸に刺さって、じくじくと痛んだ。
「そうだわ、ねぇアイリス! これから王妃殿下とお会いするのだけど一緒にいかない?」
「え……」
お茶会もお開きとなり、やっと帰れると思っていた所にアイリーン王太子妃殿下からの望まぬお誘い。
「社交界の大輪の薔薇、王妃殿下も貴女にお会いしたいと私が茶会を開く話をした時に仰っていたの! でも公務でこの時間空いていなくてね、すごく残念がっていらして……!」
「……えっ……と」
「あらもしかしてこの後ご予定が?」
「っいえ……大した用ではなく……夫に会って行こうかと思っていただけです!」
困った時のラファエル公爵頼み!
なんかあれば対応するとか言ってたし?
使えるもんは使っておく。
「あらあら! そうなの! ふふっ! あのいけ好かない女が、貴女達の結婚式の後もフォンテーヌ公爵と夜会に来ていたからとても腹が立っていたのだけど……よくやったわアイリス!」
「え……はい」
「なら早く行ってもっとフォンテーヌ公爵をメロメロにしてあげなさい! 社交界の大輪薔薇である王妃殿下にはまた今度と、私から上手く伝えておくわ!」
「は……はい」
淑女の鏡が『いけすかない』とか言ってる!?
どんだけ嫌われてたんだ平民の美人な彼女!
でも私はそんなに嫌いじゃない。
だって彼女がいたおかげで私は、お飾りの妻という平和な生活を手に入れたのだから。
そしてアイリーン王太子妃殿下が手配してくれたメイドの案内でやってきました近衛隊長の執務室。
……来る気なんて全くなかった!
出来れば会いたくなかったが王妃殿下の御前に行くよりは幾分かはラファエル公爵の方がマシである。
ノック……したくないなあ……!
あれから全然顔を合わせていない。
どの面下げて私は会えばいい!?
案内してくれたメイドはもう何処かに行ったし、このまま会わずに帰ってもアイリーン王太子妃殿下にはバレないだろう。
だが私は小心者なのでバレた時が怖いので部屋の前でずっと悶々と悩んでいると。
ガチャ……っと目の前の扉が開いて部屋から出てきたラファエル公爵と、私はこんにちはした。
「えっ……と……どうしてアイリス、君がここに?」
「お茶会で城に来ましたので……公爵様にご挨拶を……と、こちらまでやって参りました」
「君が……私に会いに来てくれたのか?」
「そう言う事になりますね?」
アイリスの突然訪問に驚いて目を丸くしていたラファエル公爵は途端に笑顔になるから。
別にラファエル公爵を喜ばすつもりはなかったんだけどなと、アイリスは複雑な心境である。
「……そうか、なら今日はもう屋敷に帰るとしよう、一緒に帰ろうかアイリス」
「えっ……ですがお仕事が……!」
いやまだお昼過ぎだよ!
亭主元気で留守がいいのです!
「ん? ああ残りは書類仕事たがら明日に回せばいい、君といる時間の方が私には大切だからな」
……大切?
どの口がそんなこと言うんだか。
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