22 / 52
22 ご機嫌な引きこもり
しおりを挟む皆が寝静まった星が輝く夜だけが彼女にとっては唯一の心が休まる時間で。
空に朝日が昇ればどこか憂鬱になった。
引きこもりで夜行性の彼女にしてみれば夜は活動時間で、朝と昼はは眠る時間。
だから明るい太陽の光が差す日中は、寝台の上で静かに過ごすから、周囲の人間達はアイリスの身体が弱いと錯覚した。
でもアイリスの身体は至って健康。
部屋に引きこもってばかりいて運動をしないから筋肉がないし、ほぼ動かないから食も細いがどこも悪い所なんてない。
薄幸の美少女、深窓令嬢なんて周りがその見た目に勘違いして勝手に想像した偶像で、それをアイリスは利用しているだけ。
そんなアイリスは本日大変ご機嫌で、久しぶりに軽快なステップを華麗に踏んで。
深夜に小躍りを一人軽やかに踊る。
小躍りを踊るアイリスの表情はきらきらと煌めいて明日への希望に満ち溢れ、輝いている。
それもそのはずで。
引きこもり許可を、あのラファエル公爵から勝ち取ったからだ。
本当はラファエル公爵となんてアイリスは一緒に住みたくはないけど、そこは仕方ないと。
私も大人だ妥協する!
と、納得し。
どうせ部屋に引きこもってたら会わないし?
執事のリカルドがラファエル公爵と会わせようと色々と企ててきて鬱陶しいが。
そこは本人に許可貰ったから放置しても無問題!
だと、アイリスはとても強気で。
さぁて、祝いに今日はなにして遊ぼうか!
と、アイリスは満足そうに可愛らしく微笑んだ。
……まさかラファエル公爵も思っても見なかっただろう、同じ屋敷に住んでいるのにあれから約1ヶ月アイリスと一度も顔を会わせる事がないなんて。
確かに好きなだけ屋敷から出ずに過ごして良いとラファエル公爵はアイリスに言ってしまった。
だがアイリスが部屋からも全く出てこないとは夢にもラファエル公爵は思っていなかったし、屋敷にばかりいては直ぐに飽きるだろうと思っていた。
だってラファエル公爵は屋敷内に一日中いる事なんて殆どなく、仕事が休みの日でも何かしら用事で外出しているから。
ラファエル公爵には、引きこもるアイリスの気持ちが全くわからなかった。
「リカルド、アイリスは……彼女は……どうしている? 顔を全く見ない……大丈夫なのか?」
「……その、アイリス奥様は特に何も問題なくお部屋で静かに過ごされていると、メイドのジェシカが今日も申しておりました」
「っ……そっ、そうか。なら……うん、いいのだが」
毎日屋敷に帰宅すると共に、ラファエル公爵は執事リカルドにアイリスのその日の様子を聞くが、いつも同じ報告しかされない。
実際アイリスは今日も何の問題もなく昼間は寝ていたし、今の時間はちょうど目覚めの湯浴み中である。
だからそれ以外答えようがないのだが、毎日毎日同じだと生存しているのかさえラファエル公爵はとても不安になってくる。
同じ屋根の下で住んでいるにも関わらず、驚くほど顔を会わせないから、これならば領地にアイリスが居たときの方がまだ顔を見れた。
こっそりと物陰に隠れてリビングで刺繍を刺す姿とか、夕方に散歩する後ろ姿とか色々なアイリスを見れたのにと思うが。
自分が外に出なくて良いと言ってしまった手前、部屋から出てこいとも言えず、ラファエル公爵は悶々一人で過ごすしかない。
同じ屋敷に住んでいれば今はアイリスに嫌われていても、そのうち情が湧いて仲良くなれるかもしれないと期待していたラファエル公爵の予想は大きく外れて。
そしてこの1ヶ月間ラファエル公爵は、アイリスに会うことすら出来ない悲しい日々を過ごしていた。
一方ラファエル公爵が会いたくて堪らない、妻のアイリスはこの1ヶ月間とても充実し楽しい日々を過ごしていた。
一度奪われてしまったもう戻らないと思っていた平和で穏やかな引きこもりライフが戻ってきて、以前にも増してアイリスは引きこもりを楽しんでいる。
そんなアイリスを専属メイドのジェシカは微笑ましく眺め、執事リカルドには毎日適当にその様子を報告している。
だってアイリスが深窓の令嬢イメージを絶対に崩したくないと、ジェシカは知っているから。
本当はそんな深窓の令嬢のように可愛いげのあるものでなく、毎日毎日怠惰にダラダラと過ごしていてもアイリスが楽しそうならそれでいいかと、ジェシカは真実を明かさない。
だから一緒に住んでいるのに一人寂しい夜をラファエル公爵は過ごし、会えないアイリスへ幻想や甘い想いを毎日毎日募らせていく。
まさかその頃アイリスが悠々自適に趣味の時間を楽しんでいるとも知らずに……。
353
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた
ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」
「嫌ですけど」
何かしら、今の台詞は。
思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。
ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻R-15は保険です。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる