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56 氷の微笑み
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フリード相手に貴族らしい遠回しな言い方で聞いても、きっと時間の無駄になる。
それに少しでも言葉を誤れば、きっとフリードは巧みに躱して煙に巻いてくるでしょう。
だから私は。
――単刀直入に聞いてみることにしたのです。
「……フリード。私になにか隠し事ですか?」
フリードは一瞬驚いたように私を見たあと、苦しげな表情で視線を逸らした。
……けれどすぐ息を整え、覚悟を決めたようにこちらを見据えてきたのです。
「フランツェスカ。私は……貴女に隠し事をしたくない。ですがこれを伝えることによって貴女を苦しませてしまう。私はそんな姿、見たくありません」
「ではそれは私に関すること、なのですね?」
「ええ、そうです。そしてこれは昨夜貴女に頼まれた内容でもあります」
「……そうですか。でも、大丈夫です! 私は今、一人じゃない。ヘルマも……それにフリードも、私のそばにいてくださいますでしょう?」
私がそう答えると。
フリードはふぅ……と息を吐き。
まるで『国を揺るがすような重大な問題が発生している』とでも言いたげな顔をした。
「わかりました、話しましょう。ですが落ち着いて聞いてくださいね」
「はい」
「――実は、貴女のお父上が言っていた例の件です」
「……置き土産、ですか?」
「はい、その通りです。詳しくは……帝国の皇帝陛下からの手紙を読んでいただければ……」
帝国の皇帝陛下といえば今は亡きお母様のお兄様で、私にとっては叔父にあたる方。
そして私の誕生日には、毎年欠かさず素敵なプレゼントを贈ってくださる姪思いの優しい叔父様。
「確かに……皇帝陛下の印章が入ってますね」
フリードから手紙を受け取り、印章を確認する。
見覚えのある帝国の封蝋、間違いありません。
それにこの印章は何度も見たことがありますから、皇帝陛下の手紙で間違いないでしょう。
「はい、封蝋も間違いなく帝国のものでした。そしてこれを所持されていたのはそこにいる貴女の侍女ヘルマです」
「え、ヘルマが?」
驚いて顔を向けると、ヘルマは真剣な表情で小さく頷いた。
「これは一応私宛でしたが。実際はフランツェスカ、貴女宛てです」
手紙を受け取り、急いで文面に目を通す。
――血の気が引いた。
手紙に記されていた内容が、あまりにも酷く。
信じがたいものだったから――。
――今から二十年前。
帝国はとある条件と引き換えに、莫大な資金をモルゲンロートへ援助した。
……その条件とは。
皇女アダルハイダを正妃に迎えること。
そして、皇女アダルハイダが産んだ子を次代の王に据えること。
さらに、その約定を破った場合。
モルゲンロートは帝国の属国とされ、王族は全員処刑。
貴族は例外なく全ての財産を没収、そして爵位を剥奪されて平民へと落とされる。
――という衝撃的なものだったのです。
「は……?」
信じられない。
けれどこの印章も手紙の筆跡も、間違いなく皇帝陛下のもの。
何度も見た、見間違えるはずがない。
だからこれは紛れもなく。
――真実。
私が怒って騒ぎだすか、泣くとでも思っているのでしょう。
視界の端で、フリードが気遣わしげな顔で私の様子を伺っているのが見えました。
……でも大丈夫。
この程度で泣いたり怒ったりはいたしません。
丁寧に手紙を折り畳みそっと封筒へ戻す。
そして私は優雅に微笑んだ。
「フリード。お父様を呼んでいただけますか? ああ、それと……フリードのご両親もご一緒に」
フリード相手に貴族らしい遠回しな言い方で聞いても、きっと時間の無駄になる。
それに少しでも言葉を誤れば、きっとフリードは巧みに躱して煙に巻いてくるでしょう。
だから私は。
――単刀直入に聞いてみることにしたのです。
「……フリード。私になにか隠し事ですか?」
フリードは一瞬驚いたように私を見たあと、苦しげな表情で視線を逸らした。
……けれどすぐ息を整え、覚悟を決めたようにこちらを見据えてきたのです。
「フランツェスカ。私は……貴女に隠し事をしたくない。ですがこれを伝えることによって貴女を苦しませてしまう。私はそんな姿、見たくありません」
「ではそれは私に関すること、なのですね?」
「ええ、そうです。そしてこれは昨夜貴女に頼まれた内容でもあります」
「……そうですか。でも、大丈夫です! 私は今、一人じゃない。ヘルマも……それにフリードも、私のそばにいてくださいますでしょう?」
私がそう答えると。
フリードはふぅ……と息を吐き。
まるで『国を揺るがすような重大な問題が発生している』とでも言いたげな顔をした。
「わかりました、話しましょう。ですが落ち着いて聞いてくださいね」
「はい」
「――実は、貴女のお父上が言っていた例の件です」
「……置き土産、ですか?」
「はい、その通りです。詳しくは……帝国の皇帝陛下からの手紙を読んでいただければ……」
帝国の皇帝陛下といえば今は亡きお母様のお兄様で、私にとっては叔父にあたる方。
そして私の誕生日には、毎年欠かさず素敵なプレゼントを贈ってくださる姪思いの優しい叔父様。
「確かに……皇帝陛下の印章が入ってますね」
フリードから手紙を受け取り、印章を確認する。
見覚えのある帝国の封蝋、間違いありません。
それにこの印章は何度も見たことがありますから、皇帝陛下の手紙で間違いないでしょう。
「はい、封蝋も間違いなく帝国のものでした。そしてこれを所持されていたのはそこにいる貴女の侍女ヘルマです」
「え、ヘルマが?」
驚いて顔を向けると、ヘルマは真剣な表情で小さく頷いた。
「これは一応私宛でしたが。実際はフランツェスカ、貴女宛てです」
手紙を受け取り、急いで文面に目を通す。
――血の気が引いた。
手紙に記されていた内容が、あまりにも酷く。
信じがたいものだったから――。
――今から二十年前。
帝国はとある条件と引き換えに、莫大な資金をモルゲンロートへ援助した。
……その条件とは。
皇女アダルハイダを正妃に迎えること。
そして、皇女アダルハイダが産んだ子を次代の王に据えること。
さらに、その約定を破った場合。
モルゲンロートは帝国の属国とされ、王族は全員処刑。
貴族は例外なく全ての財産を没収、そして爵位を剥奪されて平民へと落とされる。
――という衝撃的なものだったのです。
「は……?」
信じられない。
けれどこの印章も手紙の筆跡も、間違いなく皇帝陛下のもの。
何度も見た、見間違えるはずがない。
だからこれは紛れもなく。
――真実。
私が怒って騒ぎだすか、泣くとでも思っているのでしょう。
視界の端で、フリードが気遣わしげな顔で私の様子を伺っているのが見えました。
……でも大丈夫。
この程度で泣いたり怒ったりはいたしません。
丁寧に手紙を折り畳みそっと封筒へ戻す。
そして私は優雅に微笑んだ。
「フリード。お父様を呼んでいただけますか? ああ、それと……フリードのご両親もご一緒に」
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