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11 傷物
今から遡る事、約7年前。
マルタン公爵家の嫡男オーギュスト15歳、そしてアンジェリークが12歳の時に婚約は結ばれた。
その婚約は両家の利害から決められたもので婚約する本人達の意思はそこにはない。
でもそれは貴族社会ではよくあることだった。
……初めてオーギュスト様にお会いした時。
なんて素敵な方なのだろうかと、何も知らなかった私は嬉しくなって胸が弾みました。
だけど嬉しかったのは私だけで、明らかにオーギュスト様は私の事をなんとも思ってはいませんでした。
でも、それでも。
最初の内はそれなりに仲良くして頂いていたと思います、オーギュスト様がイレーヌお姉様にお会いするあの日までは。
たとえ恋愛感情は無くても、人としてオーギュスト様は礼儀正しく私に接してくれていた。
だけど、イレーヌお姉様にお会いしてからのオーギュスト様は変わられてしまった。
両親にイレーヌお姉様と比べられ罵られるのはもう慣れておりました、でも婚約者であるオーギュスト様までなんてとても悲しかった。
イレーヌお姉様に会ってからオーギュスト様は無能には手を触れる事すら嫌だと言って、私のエスコートをしてくださらなくなって。
私を侮辱し気に入らなければ、暴力を振った。
なのに、今は。
穢らわしい欲を孕んだ目で私を見下ろし、身体に触れるなんて……身勝手過ぎて。
怖いとか気持ち悪いとかそんな可愛らしい感情ではなく、冷たく凍えるような殺意が芽生えた。
私の事を応接室のソファに力ずくで押し倒し、強引にドレスのボタンを外し脱がそうとするこの男に。
身体に触れようとする手を払い除ける。
「私の身体に触らないで下さい、嫌です」
「抵抗するな、アンジェリーク!」
抵抗するに決まっています。
誰が好き好んで自分に婚約破棄を叩き付けた男に、身体を許すと思うのでしょうか?
無能だと出来損ないだと私を侮辱し蔑むのならば、最後まで侮辱して嫌っていればいいのです。
それに無能には手すら触りたくないと、宣っていた口はどの口なのでしょうか?
「っいや……!」
身体を抑えつけられて、ボタンを全て外されて。
ドレスの胸元がはだけ下着が見えてしまい、羞恥で顔が赤くなっているのが自分でもわかった。
「アンジェリーク? ……なんだこれは」
はだけた胸元をオーギュスト様が驚いたような、信じられないモノを見たような顔で見ている。
「っえ……?」
「アンジェリーク? お前、昨夜の夜会からどうやって帰った? 伯爵家の馬車で帰ったと思っていたが」
「あー……その辻馬車で……一人で帰りました」
「あんな夜に辻馬車はない」
「あはは、そうでしたっけ……? でもどうして……」
「……アンジェリーク、お前……それ誰に付けられた? 男に乱暴されたのか?」
「っ……え? あ……」
アンジェリークはふと思い出す。
じっとオーギュストが見つめる自分の胸元には、赤い痕が無数に残されていたと。
「あの後見かけないと思っていたら、犯されていたのか……」
「いや……これは……」
ヤバイ。
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「面倒って……」
「公爵家と伯爵家の業務提携の為に結ばれた私たちの政略結婚だからな? お前と別れる事は出来ない、だからお前は私の言うことだけ聞いて大人しくしてろ、傷物のお前を貰ってやるんだから」
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