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20 世間は広いようで狭い
カシウス様の細身に見えて実は逞しい腕に、肩をがっちりと抱かれまして。
普通の令嬢ならばこの状況、喜びで胸が高鳴り弾む事でしょう!
ですが残念ながらこの私は、恐怖で胸が高鳴るという悲しい状態でございます。
それに身体がカタカタと震えております。
だって私の命は風前の灯火……ですから。
「ほら行くよ、足元に気を付けて?」
「え? 行くってどちらに……」
「……王城、勝手に結婚されても困るからね? 君を今すぐ城に連れて帰る事にするよ」
王城に連れて帰られるのはとても困ります、だってそれ逃げられないじゃないですか!?
まだ首とはお別れしたくないので、とりあえず命乞いの方をさせて頂いてもいいでしょうか?
もしかしたら気が変わるかもしれませんし!
「あ、アレ? そのご令嬢……は……」
「……ああライアス、やっと見つかったよ」
「え!? うそだろ……いやでも、その子って!」
はて、どちら様でしょう?
この方を私は存じ上げませんが、この近衛騎士の方は私をご存知な様子です。
それに私の顔をそんな穴が開きそうな程見つめられて、きっとこの方は私の事を。
『皇太子に酒を飲ませ手篭めにした、痴女』
だと、思われている事でしょう……!
実際カシウス様の美貌にムラっときたであろうあの夜の私が、美味しく頂いてしまったはずなので。
その視線は致し方ないとは思います。
ですがそんな風に見つめられますと、穴があったら入りたいくらい恥ずかしくなります!
あ、でも墓穴は嫌ですけれど……!
「ライアス……彼女と知り合いだったのか?」
「……いや知り合いとかじゃないけど。そのご令嬢さ、たぶんオーギュストの……婚約者だぞ」
「……は?」
なんとこの方はオーギュスト様のお知り合いみたいです、なんともまぁ世間って狭いのですね?
「あー……一応確認なんだけどさ? 君って、オーギュスト・マルタンの婚約者……だよね?」
「はい、マルタン公爵家のオーギュスト様とは婚約をさせて頂いておりますが……お知り合いの方ですか?」
「……カシウス? これちょっと不味い、オーギュストの婚約者だとすると、面倒な事になるぞ」
もしやオーギュスト様に免じて、私は断頭台に行かなくても済むかもしれません。
ここは良い婚約者を演じねば……!
婚約して初めてオーギュスト様に感謝致します!
「……知るかそんなもん」
「いや、オーギュストの婚約者だぞ!? 自分の側近の婚約者奪ったってなったら……」
「じゃあオーギュスト・マルタンを、私の側近から外せばいいだけだね?」
「いやいや、そんな簡単に……」
うわ……それは初耳です。
オーギュスト様ってカシウス様の側近だったのですね、社交の場に殆ど連れていって頂けませんの知りませんでした。
「とりあえず……レニエ伯爵に事情を全て話すか、その後アンジェリークを城に連れて帰る」
「ああそうだな、それがいい」
「まっ……待って下さい……!? そ、それは……それだけは! お父様に話すのだけは絶対に止めて下さい! カシウス様! お願いします……!」
両親に知られたら大変な事になる。
殴られるどころじゃ終わらない。
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