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【家族の始まり】
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「お前、意外とバカなんじゃな」
「…………へ?」
(バカって)
意味が分からず顔を上げると、じいちゃんは、ものすごーく呆れた顔をしていた。
「よう考えてみぃ。結婚は他人とするもんじゃろが。つまり家族の始まりは他人からじゃ。じいちゃんはばあちゃんと血が繋がってないし、お前の父さんとも血が繋がってない。どこの家族も、みーんな、血のつながってない人たちが混ざっとる。なのに、なんで孫と血がつながってないと可愛いがれんことになるんだ? 意味わからん。血が繋がってないと可愛くないなら、じいちゃんはばあちゃんと連れ添ってられん。ばあちゃんはああ見えて、可愛げのある女だぞ。近頃ちょっとデカいが、まあそれもご愛敬じゃ」
「……だけど」
「ちなみに、じいちゃんはこのサツマイモもめちゃんこ可愛いぞ。こーんな苗の時から手間暇かけて立派に育ててやったんじゃ。手塩にかけたってやつじゃ。水やって、肥料やって、悪い虫がつかんように気ぃ付けてな。長いこと世話してきたもんは、みぃんな可愛い。年月が増えれば増えるほど愛情は増すもんじゃろ。お前とは何年の付き合いだと思うとる? 畑で立ちションを伝授してやったのはじいちゃんだぞ。小2の時に、スイカ食べ過ぎてやらかしたお前のねしょんべんを、母さんたちに内緒でこっそり洗ってやったのもじいちゃんじゃろが。それから」
「も、もういい! そんなの、ずっと昔の話だろ!」
黒歴史を暴露されて真っ赤になる柚樹に、じいちゃんがにやっと笑う。
「そうだ。ずっと昔の話だ。それだけ、じいちゃんとお前の間には積もりに積もった年月があるってことを忘れるな」
「あ」
ぐしゃっと、じいちゃんが軍手のまま柚樹の頭を乱暴に撫でた。
「確かにお前の家族はちょっとイレギュラーかもしれん。いろいろ難しい部分もあるじゃろ。だから、二人目は今だったんだと思うぞ」
「?」
顔を上げる柚樹を地面に押し込むみたいに、じいちゃんがぐりぐりと頭を強めに撫でながら続ける。
「ユズの成長を見て、新しい家族が増えても大丈夫だと父さんと母さんが判断したから、妹が生まれるんじゃろ」
「……」
じいちゃんは、いつになく優しい口調で、噛みしめるようにゆっくりと、でもはっきりと断言した。
「お前はいい子にすくすく育っとる。じいちゃんとばあちゃんの自慢の孫じゃ」
心の中にあった黒い黒い塊が解けていく。
サツマイモを食べようとしたら、ぽたぽたと、柚樹の目から大粒の涙がこぼれていった。
「いいぞ! 泣け泣け! 全部出せ」
笑いながらじいちゃんは、柚樹の頭をわしゃわしゃ撫で続ける。
「やめろよ、オレ、泣いてなんか」
その先は、涙と鼻水と嗚咽のせいで、言葉にならなかった。
そのあと、じいちゃんと二人で一本の焼き芋を半分こにして食べた。
「じいちゃん」
すっきりした心で、柚樹はじいちゃんに話しかける。晴れ上がった心の代わりに、瞼がどんよりもったり重たい。
目、腫れてるんだろうな、と思う。あんなに泣いたのは、本当に久しぶりだ。
ちょっと、ハズい。
「なんだ?」とじいちゃんが聞く。
これを言うのは、もっとハズいけど。覚悟を決めて、伝える。
「ありがとう」
「……そういうんは、もぞがゆいからやめぇ」と、じいちゃんが眉をしかめた。照れ隠しのしかめっ面。照れるじいちゃんが面白い。
「そろそろ帰るか? 友達も待っとるじゃろ?」とそっぽを向きながらじいちゃんが言った。
(それって……柚葉のこと?)
「じいちゃん、見えてたの?」
「当たり前じゃろ。幽霊じゃあるまいし。それに海猿、山猿と呼ばれたじいちゃんの目をなめるなよ。年上の彼女か? お前もなかなかやるな」
このぉ、と言いながら、じいちゃんがニヤリとする。
「ち、違うに決まってるだろ!」
「心配せんでもばあちゃんらには秘密にしといてやるから。土産に焚火イモ持ってけ。女は甘いもんでイチコロじゃあ」
「だから本当に違うんだってば!」
「そうかそうか」
ニヤニヤするじいちゃんにパンチを繰り出すと「お、このじいちゃんとやる気か?」と、じいちゃんが笑った。
「…………へ?」
(バカって)
意味が分からず顔を上げると、じいちゃんは、ものすごーく呆れた顔をしていた。
「よう考えてみぃ。結婚は他人とするもんじゃろが。つまり家族の始まりは他人からじゃ。じいちゃんはばあちゃんと血が繋がってないし、お前の父さんとも血が繋がってない。どこの家族も、みーんな、血のつながってない人たちが混ざっとる。なのに、なんで孫と血がつながってないと可愛いがれんことになるんだ? 意味わからん。血が繋がってないと可愛くないなら、じいちゃんはばあちゃんと連れ添ってられん。ばあちゃんはああ見えて、可愛げのある女だぞ。近頃ちょっとデカいが、まあそれもご愛敬じゃ」
「……だけど」
「ちなみに、じいちゃんはこのサツマイモもめちゃんこ可愛いぞ。こーんな苗の時から手間暇かけて立派に育ててやったんじゃ。手塩にかけたってやつじゃ。水やって、肥料やって、悪い虫がつかんように気ぃ付けてな。長いこと世話してきたもんは、みぃんな可愛い。年月が増えれば増えるほど愛情は増すもんじゃろ。お前とは何年の付き合いだと思うとる? 畑で立ちションを伝授してやったのはじいちゃんだぞ。小2の時に、スイカ食べ過ぎてやらかしたお前のねしょんべんを、母さんたちに内緒でこっそり洗ってやったのもじいちゃんじゃろが。それから」
「も、もういい! そんなの、ずっと昔の話だろ!」
黒歴史を暴露されて真っ赤になる柚樹に、じいちゃんがにやっと笑う。
「そうだ。ずっと昔の話だ。それだけ、じいちゃんとお前の間には積もりに積もった年月があるってことを忘れるな」
「あ」
ぐしゃっと、じいちゃんが軍手のまま柚樹の頭を乱暴に撫でた。
「確かにお前の家族はちょっとイレギュラーかもしれん。いろいろ難しい部分もあるじゃろ。だから、二人目は今だったんだと思うぞ」
「?」
顔を上げる柚樹を地面に押し込むみたいに、じいちゃんがぐりぐりと頭を強めに撫でながら続ける。
「ユズの成長を見て、新しい家族が増えても大丈夫だと父さんと母さんが判断したから、妹が生まれるんじゃろ」
「……」
じいちゃんは、いつになく優しい口調で、噛みしめるようにゆっくりと、でもはっきりと断言した。
「お前はいい子にすくすく育っとる。じいちゃんとばあちゃんの自慢の孫じゃ」
心の中にあった黒い黒い塊が解けていく。
サツマイモを食べようとしたら、ぽたぽたと、柚樹の目から大粒の涙がこぼれていった。
「いいぞ! 泣け泣け! 全部出せ」
笑いながらじいちゃんは、柚樹の頭をわしゃわしゃ撫で続ける。
「やめろよ、オレ、泣いてなんか」
その先は、涙と鼻水と嗚咽のせいで、言葉にならなかった。
そのあと、じいちゃんと二人で一本の焼き芋を半分こにして食べた。
「じいちゃん」
すっきりした心で、柚樹はじいちゃんに話しかける。晴れ上がった心の代わりに、瞼がどんよりもったり重たい。
目、腫れてるんだろうな、と思う。あんなに泣いたのは、本当に久しぶりだ。
ちょっと、ハズい。
「なんだ?」とじいちゃんが聞く。
これを言うのは、もっとハズいけど。覚悟を決めて、伝える。
「ありがとう」
「……そういうんは、もぞがゆいからやめぇ」と、じいちゃんが眉をしかめた。照れ隠しのしかめっ面。照れるじいちゃんが面白い。
「そろそろ帰るか? 友達も待っとるじゃろ?」とそっぽを向きながらじいちゃんが言った。
(それって……柚葉のこと?)
「じいちゃん、見えてたの?」
「当たり前じゃろ。幽霊じゃあるまいし。それに海猿、山猿と呼ばれたじいちゃんの目をなめるなよ。年上の彼女か? お前もなかなかやるな」
このぉ、と言いながら、じいちゃんがニヤリとする。
「ち、違うに決まってるだろ!」
「心配せんでもばあちゃんらには秘密にしといてやるから。土産に焚火イモ持ってけ。女は甘いもんでイチコロじゃあ」
「だから本当に違うんだってば!」
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