ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

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神明山の遊歩道

家族写真が多すぎる

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 大家さんの家のリビングには、重厚なダイニングテーブルと、アンティークソファがどかんと置いてあった。部屋の隅には暖炉。
 外見通りの大正ロマン的なお屋敷だ。
 花模様の壁紙には、優太君一家の家族写真が所せましと飾られている。

(自慢の息子一家なんだろうな)

 写真の中でにっこり笑う優太君のお母さんは、大きな瞳が印象的なはつらつと元気な感じの女の人だった。
 優太君のお父さんは、つり目にメガネをかけたインテリ風。いかにもデキる弁護士っぽくて、ちょっと冷血な感じがする。
「意義あり!」とか、言いそう。

 てゆーか、大家さんのつり目遺伝子、息子と孫にしっかり受け継がれているなぁ。優性遺伝?

 家族写真は、どうやら優太君が赤ちゃんの時から幼稚園の卒園式までのようだった。小学生以降の写真がないのは、飾る場所がないからだろう。
 たぶん、別室の客間なんかに優太君の小学校入学式以降の写真がだだっと飾られているんだろうな。

(それにしても、すごい量。これ全部、写真屋さんで撮影したやつだよね)
 この分量だと、一ヶ月に一回のペースで撮ってるんじゃないかしら。

(あたしが写真屋さんで撮った写真なんて、数えるくらいしかないのに。七五三とか、入学式とか)

 さすが、いいところのお坊ちゃまは違う。

 ほたるは、赤ちゃんの優太君を抱いてにっこり笑う優太君のお母さんの写真をマジマジと見つめ、首を傾げた。
(この人、どっかで見たことある気がするんだけど)

「お紅茶が入ったザマスよ。あなたはそこに座って」

 写真にくぎ付けになっていたら、お盆を持った大家さんがリビングに入ってきた。
 アールグレイのよい香りが室内に充満する。

 ほたるは大家さんに指定されたテーブル席につき、優太君はほたるの対面の席に座る。大家さんが二人の前に、紅茶の入ったティーカップと、もっこり四角いカステラの乗ったお皿を置いていった。
 ことりと、置かれたお皿の上で、カステラがぷるんっと揺れる。
 こ、このカステラは!

「台湾カステラ、あたし食べるの初めてです!!」
「蜻蛉町のような田舎には、洒落たスイーツはないザマスものねー」

(うわ、一言多い~。てゆーか、ザマスに戻ってる)

「神明市は、みちのくの小東京と言われているんザマス。そこの神明通りは、西麻布や表参道で人気のスイーツ店も分店を出しているし、優太の家がある彩都神明地区は、未来型居住都市開発地区に指定されて、道路や公園が整備されているし、国際交流も盛んなところザマス。優太の父親の弁護士事務所も優太の通っている私立神明学園小学校もそこにあるんザマスよ。蜻蛉町なんかとは比べ物にならないくらい神明市は発展しているんザマスの」

 優太君の隣に座った大家さんが、ふふん、と誇らしげに、紅茶を啜る。

「はあ、そーなんですねー」

 みちのくの小東京……初めて聞く言葉だ。
 みちのくの小京都なら聞いたことあるけれど。
 てゆーか、みちのくのなんとかって、田舎に多いような気がするけど。
 
 ともかく大家さんは、神明市に誇りを持っているようだった。
 由緒正しい大地主だから郷土愛がスゴイのかもしれない。

(そんなことより、カステラ、カステラっと♪)
 ほたるは台湾カステラをスプーンで掬って口に入れる。

「うわ、おいし~」
 想像以上にふわっふわ。ちょっとはちみつっぽい味がして、しゅわっと解けるくちどけが素晴らしい!
 その上、カステラなのに、つるんとした喉ごし。

「うふふ。優太のお友達が気に入ってくれてよかったわぁ。これね、花岡先生の奥様の頂き物なのよ。神明百貨店近くに新しくできたお店のかすていらなんですって。さすがは由緒正しい神明三家の花岡家だわぁ。こんなハイカラなものを知っているなんて素敵ねぇ。私も神明三家の嫁として見習わなくっちゃ」

「へ?」

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