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神明山の遊歩道
昆虫愛が強すぎる
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「ほら、タガメとかタイコウチとかコオイムシとか、田んぼに住んでるカメムシ目の昆虫だよ」
(コオイムシ……)
ほたるは向尸井さんの昆虫図鑑で見た写真を思い出し、ぶるっと身体を震わせた。
「た、タガメなら知ってる。田んぼにいるゴキブリみたいなやつでしょ。小学生の頃、夏休みの自由研究でタガメの研究してる男子がいて、小さい水槽に入れて小学校に持ってきてたよ」
「ゴキブリと一緒にすんなよ。ぜんっぜん似てねーじゃん。あの前脚の上腕二頭筋みたいなマッチョな感じゴキブリにないし。アレがめっちゃかっけーんだよな。あの前脚使って、田んぼに落ちた虫とか、小さなカエルとかも、こう、ガッて捕まえて、長い口をブスっとぶっさしてジューって体液を吸うんだぜ!! リアルモンスターだよ。でも見た目のエグさで言ったら、断然コオイムシだな。背中にびっしり白い卵を乗せてるの昆虫館で見たんだけどさ、あれはさすがのオレでも、ぞわわわって、鳥肌立つもん。田んぼで泳いでるとこ見てみてぇー」
「へえ~……変わってるね」
(向尸井さん並みに昆虫マニアだな)
「『虫を制する者は、虫を制す!』って、言うのが、オレのマ、母親の方針だったんだよ。だから、昆虫全般興味あんだよな。つか、今考えると、虫を制する者は虫を制すって、そのままじゃね?」
(てゆーか、今、ママって言いかけたよね。家ではお母さんのこと、ママって呼んでるんだ。へぇ~。ふう~ん)
それを隠しているあたり、なんか小4って感じがする。案外可愛いとこあるじゃん。ニヤッとほたるは優太君を見た。
優太君はそれに気づかず、お母さんの話を続けている。
「しかもさー、寝る前の読み聞かせの本が昆虫図鑑だったんだぜ。ウケるよな」
「え……それはまた……変わってるね」
寝る前にあんなもの見せられたら、悪夢にうなされるに違いない。
「だろ? 幼稚園の帰りとかにさ、いきなりフィールドワーク行こう~とか言って、わざわざ電車に乗って遠くの野山に幼稚園児連れ回すんだぜ。最終的に、優太にはルナモスって言うガの守護神がついてるのよ。とか言っちゃうし。どんだけ昆虫愛強いんだって感じ。そんな母親に育てられて昆虫好きにならない方が無理だぜ」
「へえ~、意外~、こんな可愛らしいお母さんなのに」
ほたるは、壁に飾られた家族写真の優太君のお母さんに目を向けた。
写真を見る限り、全然昆虫マニアな感じがしないのに。どんな人なんだろ。
「今度会ってみたいな、優太君のお母さんに」
「ああ、もう死んじゃったけどね」
さくっと、優太君が衝撃発言。
「え?」と、ほたるは固まった。
「オレが小学校に入学する前に、いきなり倒れてそのまま眠るように死んじゃった」
それで、リビングの写真は。
「ごめん、優太君。あたし」
「おっと、やめろよな。小さいうちに母親が死んで可哀想みたいなの。オレ、別に可哀想じゃねーし」
ぱちん!
強い調子で、角のマスに黒いコマを置いた優太君が、周りの白を次々ひっくり返しながら、きっぱり言った。
「オレさ、オレの周りにいるガリ勉小学生たちより、断然幸せな自信あるし」
にぃっと笑って「早く打てよ」と、促す。
そうだったと、オセロ版に目を落としたほたるは、ゲッとなった。
真っ黒になってる。
白は息絶え絶えと言った感じ。
『黒組強いです! 白組も、頑張ってください!』
小学校の運動会で応援放送をしていた、幼き日のさなえちゃんの声が、ほたるの脳内放送で声を張り上げている。
「あのさ……これ、誰にも言ったことないんだけど」と、優太君が上目遣いにこちらを見た。
「?」
つり目の中の小さな瞳が、少し揺れている。言おうかどうしようかと、しばらく迷った後で、優太君は決心したように口を開いた。
「たぶんマ、オレの母親は、何年も前から、自分の寿命を知ってたと思うんだよな」
(コオイムシ……)
ほたるは向尸井さんの昆虫図鑑で見た写真を思い出し、ぶるっと身体を震わせた。
「た、タガメなら知ってる。田んぼにいるゴキブリみたいなやつでしょ。小学生の頃、夏休みの自由研究でタガメの研究してる男子がいて、小さい水槽に入れて小学校に持ってきてたよ」
「ゴキブリと一緒にすんなよ。ぜんっぜん似てねーじゃん。あの前脚の上腕二頭筋みたいなマッチョな感じゴキブリにないし。アレがめっちゃかっけーんだよな。あの前脚使って、田んぼに落ちた虫とか、小さなカエルとかも、こう、ガッて捕まえて、長い口をブスっとぶっさしてジューって体液を吸うんだぜ!! リアルモンスターだよ。でも見た目のエグさで言ったら、断然コオイムシだな。背中にびっしり白い卵を乗せてるの昆虫館で見たんだけどさ、あれはさすがのオレでも、ぞわわわって、鳥肌立つもん。田んぼで泳いでるとこ見てみてぇー」
「へえ~……変わってるね」
(向尸井さん並みに昆虫マニアだな)
「『虫を制する者は、虫を制す!』って、言うのが、オレのマ、母親の方針だったんだよ。だから、昆虫全般興味あんだよな。つか、今考えると、虫を制する者は虫を制すって、そのままじゃね?」
(てゆーか、今、ママって言いかけたよね。家ではお母さんのこと、ママって呼んでるんだ。へぇ~。ふう~ん)
それを隠しているあたり、なんか小4って感じがする。案外可愛いとこあるじゃん。ニヤッとほたるは優太君を見た。
優太君はそれに気づかず、お母さんの話を続けている。
「しかもさー、寝る前の読み聞かせの本が昆虫図鑑だったんだぜ。ウケるよな」
「え……それはまた……変わってるね」
寝る前にあんなもの見せられたら、悪夢にうなされるに違いない。
「だろ? 幼稚園の帰りとかにさ、いきなりフィールドワーク行こう~とか言って、わざわざ電車に乗って遠くの野山に幼稚園児連れ回すんだぜ。最終的に、優太にはルナモスって言うガの守護神がついてるのよ。とか言っちゃうし。どんだけ昆虫愛強いんだって感じ。そんな母親に育てられて昆虫好きにならない方が無理だぜ」
「へえ~、意外~、こんな可愛らしいお母さんなのに」
ほたるは、壁に飾られた家族写真の優太君のお母さんに目を向けた。
写真を見る限り、全然昆虫マニアな感じがしないのに。どんな人なんだろ。
「今度会ってみたいな、優太君のお母さんに」
「ああ、もう死んじゃったけどね」
さくっと、優太君が衝撃発言。
「え?」と、ほたるは固まった。
「オレが小学校に入学する前に、いきなり倒れてそのまま眠るように死んじゃった」
それで、リビングの写真は。
「ごめん、優太君。あたし」
「おっと、やめろよな。小さいうちに母親が死んで可哀想みたいなの。オレ、別に可哀想じゃねーし」
ぱちん!
強い調子で、角のマスに黒いコマを置いた優太君が、周りの白を次々ひっくり返しながら、きっぱり言った。
「オレさ、オレの周りにいるガリ勉小学生たちより、断然幸せな自信あるし」
にぃっと笑って「早く打てよ」と、促す。
そうだったと、オセロ版に目を落としたほたるは、ゲッとなった。
真っ黒になってる。
白は息絶え絶えと言った感じ。
『黒組強いです! 白組も、頑張ってください!』
小学校の運動会で応援放送をしていた、幼き日のさなえちゃんの声が、ほたるの脳内放送で声を張り上げている。
「あのさ……これ、誰にも言ったことないんだけど」と、優太君が上目遣いにこちらを見た。
「?」
つり目の中の小さな瞳が、少し揺れている。言おうかどうしようかと、しばらく迷った後で、優太君は決心したように口を開いた。
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