34 / 97
二度目のチャイム
御簾の奥の高貴な人
しおりを挟む
「どうする?」と、優太君が緊張気味に、ほたるを見た。
「どうしようもなにも、行くしかなくない?」
「……だよな」
言いながらも、二人とも動けずにいると
「む~、じれったい」
御簾の奥の高貴な人が、着物の内側から閉じた扇子のようなものを取りだして、くいくいと二度振った。
「うわっ」
「きゃっ」
磁石の引力に引っ張られるように、ほたるたちの足が勝手に拝殿の方へ進んでいく。
「なにこれ!」
驚いている間に、金ぴかのお賽銭箱が迫る。
ぶつかったら絶対痛いやつ。
てゆーか、痛いじゃすまされないやつ。
でも、意思とは関係なく足は勝手に進み続けて……。
(ぶつかる!)
思わずほたるが目を閉じた時、両足がびたん、と、止まった。
「わわわわわ」
いきなり足が止まって、身体がつんのめる。
「ほたる!」
その腕を、咄嗟に優太君が掴んで引っ張った。
「た、助かったぁ~! 優太君ありがとう」
「ダメほたる、運動音痴かよ」
「えへへ、面目ない」
うほん、と、御簾の奥から大きな咳払いがした。
ハッと、ほたるたちは黙り込む。
もし神様なら、粗相のないようにしないとバチが当たるかも。
「ねえ、優太君。あの人、神様だと思う?」
ほたるは気づかれないように、顎でちょっと御簾の先を指し示し、優太君に囁いた。
「うーん……あの服、よく見えないけどたぶん狩衣(かりぎぬ)だな。狩衣は神職の常装として使われてるから、普通に考えたら神主さん的な人だけど……でも、平安時代は貴族の普段着で、安倍晴明みたいな陰陽師も着てたんだよな。あんなことができるってことは、陰陽師かも」
「陰陽師……神様じゃなくて?」
「貴族よりも位の高い天皇は、狩衣を着なかったんだ。黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)っていう、赤みがかかった黄色に染められた布地の着物を着てたんだけど、あの御簾の隙間から見えてる着物の色は、水色か黄緑色だろ? てことは、黄櫨染御袍じゃない。日本の神様って天皇と等しいか、それ以上の地位のはずだから、神様ではないんじゃないかな」
「さすが優太君、相変わらず博識」
「オレ、ダメほたると違って賢いから」
「ダメほたると違って、が、余計よ」
ひそひそ言葉を交わしながら、ほたるは御簾の奥の人をチラ見した。
確かに、御簾の隙間から見える狩衣の色は、碧ちゃんのワンピースに似た水黄緑色で、赤みがかかった黄色ではない。
(てゆーか、あの狩衣、なんか見覚えがあるような)
「どうしようもなにも、行くしかなくない?」
「……だよな」
言いながらも、二人とも動けずにいると
「む~、じれったい」
御簾の奥の高貴な人が、着物の内側から閉じた扇子のようなものを取りだして、くいくいと二度振った。
「うわっ」
「きゃっ」
磁石の引力に引っ張られるように、ほたるたちの足が勝手に拝殿の方へ進んでいく。
「なにこれ!」
驚いている間に、金ぴかのお賽銭箱が迫る。
ぶつかったら絶対痛いやつ。
てゆーか、痛いじゃすまされないやつ。
でも、意思とは関係なく足は勝手に進み続けて……。
(ぶつかる!)
思わずほたるが目を閉じた時、両足がびたん、と、止まった。
「わわわわわ」
いきなり足が止まって、身体がつんのめる。
「ほたる!」
その腕を、咄嗟に優太君が掴んで引っ張った。
「た、助かったぁ~! 優太君ありがとう」
「ダメほたる、運動音痴かよ」
「えへへ、面目ない」
うほん、と、御簾の奥から大きな咳払いがした。
ハッと、ほたるたちは黙り込む。
もし神様なら、粗相のないようにしないとバチが当たるかも。
「ねえ、優太君。あの人、神様だと思う?」
ほたるは気づかれないように、顎でちょっと御簾の先を指し示し、優太君に囁いた。
「うーん……あの服、よく見えないけどたぶん狩衣(かりぎぬ)だな。狩衣は神職の常装として使われてるから、普通に考えたら神主さん的な人だけど……でも、平安時代は貴族の普段着で、安倍晴明みたいな陰陽師も着てたんだよな。あんなことができるってことは、陰陽師かも」
「陰陽師……神様じゃなくて?」
「貴族よりも位の高い天皇は、狩衣を着なかったんだ。黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)っていう、赤みがかかった黄色に染められた布地の着物を着てたんだけど、あの御簾の隙間から見えてる着物の色は、水色か黄緑色だろ? てことは、黄櫨染御袍じゃない。日本の神様って天皇と等しいか、それ以上の地位のはずだから、神様ではないんじゃないかな」
「さすが優太君、相変わらず博識」
「オレ、ダメほたると違って賢いから」
「ダメほたると違って、が、余計よ」
ひそひそ言葉を交わしながら、ほたるは御簾の奥の人をチラ見した。
確かに、御簾の隙間から見える狩衣の色は、碧ちゃんのワンピースに似た水黄緑色で、赤みがかかった黄色ではない。
(てゆーか、あの狩衣、なんか見覚えがあるような)
0
あなたにおすすめの小説
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
たったひとつの願いごと
りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。
その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。
少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。
それは…
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる