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むしコンシェルジュの業務
アメイジングなキッズ
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「古来より中国では、人は生まれ落ちた時から上尸(じょうし)中尸(ちゅうし)下尸(げし)と呼ばれる三尺(さんし)という虫を体内に宿しているとされ、上尸は青または黒色を帯び、金欲や首より上の病気を、中尸は白色または青色及び黄色を帯び、食欲や臓器の病気を、下尸は白色または黒色を帯び、淫欲や下肢の病気を引き起こすとされてきました。また、六十日に一度訪れる庚申の日に眠ると、人の体内から離れた三尸が、人命を司る神様に宿主の悪事を告げ口し、寿命を縮ませるとも言われています。日本では、昔から赤ちゃんの夜泣きや癇癪は赤ちゃんの体内に宿る疳の虫が騒ぐせいと言われていますね。虫の居所が悪い、虫が好かない、腹の虫が収まらないなど、人間の感情を虫で表現した慣用句も数多く存在するのはご存知のとおり。これらの虫、つまり人の体内に宿る虫が当方の取り扱うむし、虫の中に人の文字が二つ入るむしのことなのです」
(これも、あたしの時と同じセリフ)
このむしについての説明も、何か意味があるのかな?
隣のアキアカネさんを振り返りかけて、ほたるはやめた。
ここでアキアカネさんに尋ねたら、また、隣の碧ちゃんが騒ぎ出して、きっとまた、ソファの上で土下座することになる。
いや、次は土下座じゃ済まないかもしれない。
向尸井さんなら、本気で宇宙のかなたに追い出しかねない。
ほたるの脳裏に「昇竜拳~」と、叫んだ向尸井さんが、ほたるたちをぴゅーっと宇宙のかなたへ吹っ飛ばす映像が浮かんだ。
向尸井さんなら、それくらいやりそうだ。
ぶるりと、体を震わせたほたるは、ともかく、むしの説明云々は、また今度、聞いてみることにしようと、考え直した。
(てゆーか、いくら賢いとはいえ、優太君みたいな子供にこんな難しい話をしても、理解できないんじゃないかな)
心配になって優太君の顔を見たら、案の定、細いつり目をぱちくりさせ、口を半開きにして向尸井さんの話をぽかんと聞いている。
思った通り、難しすぎてフリーズしちゃってるみたい。
そりゃあそうだ。この説明を聞くのが二回目のほたるでさえ、未だに意味がチンプンカンプンなんだから。
黒い服の上司? 三下?
意味不明。
「すげぇ」
その時、優太君が、ぽつりと呟いた。
ふるふる、と握った拳を震わせている。
そして。
だん! と、年輪テーブルを叩いて立ち上がった。
「やっべぇ! オレ、そういう話めっちゃ好き! つか、三尸の尸って、向尸井さんの苗字の尸と同じですよね。もしかして、この苗字、むし屋の主人が代々襲名する苗字だったりするんですか? 名前のオサムも漢字は違うけど、手塚治虫と同じオサム! オサムシのオサムですよね??」
「なっ……」
興奮ひっきりなしに、まくし立てる優太君。面食らった向尸井さんが、言葉に詰まった。
今度は向尸井さんが「な」の形のまま、口をぽかんと開けている。
やがて、胸の前で組んだ向尸井さんの手が、小刻みに揺れ始めた。
そして。
だだん!!
向尸井さんまで年輪テーブルを叩いて立ち上がった。
「なんてアメイジングなキッズなんだ!!」
(これも、あたしの時と同じセリフ)
このむしについての説明も、何か意味があるのかな?
隣のアキアカネさんを振り返りかけて、ほたるはやめた。
ここでアキアカネさんに尋ねたら、また、隣の碧ちゃんが騒ぎ出して、きっとまた、ソファの上で土下座することになる。
いや、次は土下座じゃ済まないかもしれない。
向尸井さんなら、本気で宇宙のかなたに追い出しかねない。
ほたるの脳裏に「昇竜拳~」と、叫んだ向尸井さんが、ほたるたちをぴゅーっと宇宙のかなたへ吹っ飛ばす映像が浮かんだ。
向尸井さんなら、それくらいやりそうだ。
ぶるりと、体を震わせたほたるは、ともかく、むしの説明云々は、また今度、聞いてみることにしようと、考え直した。
(てゆーか、いくら賢いとはいえ、優太君みたいな子供にこんな難しい話をしても、理解できないんじゃないかな)
心配になって優太君の顔を見たら、案の定、細いつり目をぱちくりさせ、口を半開きにして向尸井さんの話をぽかんと聞いている。
思った通り、難しすぎてフリーズしちゃってるみたい。
そりゃあそうだ。この説明を聞くのが二回目のほたるでさえ、未だに意味がチンプンカンプンなんだから。
黒い服の上司? 三下?
意味不明。
「すげぇ」
その時、優太君が、ぽつりと呟いた。
ふるふる、と握った拳を震わせている。
そして。
だん! と、年輪テーブルを叩いて立ち上がった。
「やっべぇ! オレ、そういう話めっちゃ好き! つか、三尸の尸って、向尸井さんの苗字の尸と同じですよね。もしかして、この苗字、むし屋の主人が代々襲名する苗字だったりするんですか? 名前のオサムも漢字は違うけど、手塚治虫と同じオサム! オサムシのオサムですよね??」
「なっ……」
興奮ひっきりなしに、まくし立てる優太君。面食らった向尸井さんが、言葉に詰まった。
今度は向尸井さんが「な」の形のまま、口をぽかんと開けている。
やがて、胸の前で組んだ向尸井さんの手が、小刻みに揺れ始めた。
そして。
だだん!!
向尸井さんまで年輪テーブルを叩いて立ち上がった。
「なんてアメイジングなキッズなんだ!!」
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