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素質ある子
う、から始まる言葉の意味
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半身を起こした優太君が目をこすっている。
「あ、優太君。起きた? もうちょっと寝てても良かったのに」
「間近でギャーギャー騒がれたら眠れねっつーの。まっ、でも、オレ、10分仮眠の癖ついてるし、スッキリスッキリ、完全復活!!」
ぴょんっとソファから飛び上がって、ブイサインの優太君。泣きはらした瞼がはれぼったくなっている。
細い目が、更に細まって、線みたいだ。
「つか、今何時? そろそろ帰んないと」
「そっか。五時のチャイム聞いてからずいぶん経ってるもんね。あたしも明日の大学の課題あったんだった」
そういえば、五時のチャイムを二回聞いた気がする。本当に、今は何時なんだろう。むし屋にいると、時間がわからなくなる。時計もないし。
スマホで時間を確かめようと思ったけれど、やめた。たぶん、スマホの時計は正規の時刻を表示していないだろう。
ここって、つまり、むし屋は、そういうところなのだ。
「心配ない。そこのオオミズアオが、お前たち三人が出会った時間と場所まで送り届けてくれるから」
「ええ~。場所はいいけど、時間を戻すのは大変なんだよぉ~」
「諸々ひた隠しにしていた罰だ」
金色のピンセットが曲がった腹いせも込めて、向尸井さんがギロリと碧ちゃんを睨んでいる。
「もう~、しょうがないなー」
あんまりしょうがなくない感じの碧ちゃんの隣で、優太君が、ぶつぶつ呟いていた。
「うま、うし? うす、うみ……」
「ぷぷっ! 優太君、まだ寝ぼけてる?」
「ち、ちげーよ。ほら」
言いかけて、顔が赤くなる
「その……ママが、最後になんか言ってたからさ。何て言ったんだろうって気になって。たぶん、う、から始まると思うんだけど」
真っ赤になりながら、ぼそぼそ釈明する優太君が、小学生っぽくてちょっと可愛い。
本人に言ったら怒られそうだけど。
「う、から始まる言葉かぁ」
ほたるも一緒に考えてみる。
確かに、優太君のお母さんは、口をすぼめていた気がする。
こういう時は、順番に。
「うあ、うい、うう、うえ、上?……違うか、うお、魚? これも違うね。うか、羽化……羽化?」
「あ、優太君。起きた? もうちょっと寝てても良かったのに」
「間近でギャーギャー騒がれたら眠れねっつーの。まっ、でも、オレ、10分仮眠の癖ついてるし、スッキリスッキリ、完全復活!!」
ぴょんっとソファから飛び上がって、ブイサインの優太君。泣きはらした瞼がはれぼったくなっている。
細い目が、更に細まって、線みたいだ。
「つか、今何時? そろそろ帰んないと」
「そっか。五時のチャイム聞いてからずいぶん経ってるもんね。あたしも明日の大学の課題あったんだった」
そういえば、五時のチャイムを二回聞いた気がする。本当に、今は何時なんだろう。むし屋にいると、時間がわからなくなる。時計もないし。
スマホで時間を確かめようと思ったけれど、やめた。たぶん、スマホの時計は正規の時刻を表示していないだろう。
ここって、つまり、むし屋は、そういうところなのだ。
「心配ない。そこのオオミズアオが、お前たち三人が出会った時間と場所まで送り届けてくれるから」
「ええ~。場所はいいけど、時間を戻すのは大変なんだよぉ~」
「諸々ひた隠しにしていた罰だ」
金色のピンセットが曲がった腹いせも込めて、向尸井さんがギロリと碧ちゃんを睨んでいる。
「もう~、しょうがないなー」
あんまりしょうがなくない感じの碧ちゃんの隣で、優太君が、ぶつぶつ呟いていた。
「うま、うし? うす、うみ……」
「ぷぷっ! 優太君、まだ寝ぼけてる?」
「ち、ちげーよ。ほら」
言いかけて、顔が赤くなる
「その……ママが、最後になんか言ってたからさ。何て言ったんだろうって気になって。たぶん、う、から始まると思うんだけど」
真っ赤になりながら、ぼそぼそ釈明する優太君が、小学生っぽくてちょっと可愛い。
本人に言ったら怒られそうだけど。
「う、から始まる言葉かぁ」
ほたるも一緒に考えてみる。
確かに、優太君のお母さんは、口をすぼめていた気がする。
こういう時は、順番に。
「うあ、うい、うう、うえ、上?……違うか、うお、魚? これも違うね。うか、羽化……羽化?」
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