その都市伝説を殺せ

瀬尾修二

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四章

三十三話

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 まばらな雑木林の片隅に、一粒の血液が生じた。女性の腰丈程の高さに浮かび上がったそれは、次第に量を増やしていく。やがて人間程の大きさになると、血の塊の中から球体間接人形が姿を現した。
 早紀の目に、リンチ事件で死んだ筈の被害者と、化け物となった幼馴染の姿が映る。
 悪狐の魂を食い終わった怨霊が、ゆっくりと顔を向けた。
 数秒間ほど見つめ合う。
 不意に黒い炎が霧散し、元の姿に戻った和義が片膝をつく。早紀も生身に戻ると、慌てて彼に駆け寄った。
「藤村君っ」
 心配する彼女を手で制し、和義は一馬に説明を求めた。
「一馬、お前…」
「あ~、ま~、知っての通りお化けになった。話はまた、日を改めてした方が良さそうだな。今度、お前んちに行くわ」
 先程まで困惑の色を浮かべていた一馬の表情が、平然としたものに変わっていた。声の調子に至っては、ふざけている様にしか聞こえない。とても、奇跡的な再会を果たした直後とは思えない態度だった。
 背を向けた一馬が、去ろうとする。だが和義は、今直ぐに話を聞きたかった。もう一生会えないと思っていた親友が、再び目の前に現れたのだから。
「おい、待てよ!」
 振り返った一馬が、少し困ったように口を開く。
「これからは、いつだって会えるだろ?」
 彼は、もう一度背を向けると、その場から遠ざかっていった。
 早紀の顔に、訝しげな表情が浮かんでいる。
「一馬が助けてくれたんだよ。化け物を三体も相手にして」
 そして、悪狐の襲撃で護衛は死に、彼が化け物となって返り討ちにした事を伝えた。
「ごめんなさい。もう少し、うまくやれば…」
「謝るのはこっちの方だ。あの化け物達は、俺のために死んだんだし」
 苦痛に顔を歪ませて、和義は立ち上がる。極度の疲労で、立っているのもやっとの状態だった。
「今は、休んだ方がよさそうだね」
 早紀がそう言った途端、血液の膜が二人の周囲を覆った。赤い色が視界から消えると、彼女達は和義の自宅前に立っていた。
 送ってくれたんだなと、彼は事も無げに納得する。この数日の間に、不思議な出来事を体験し過ぎて、瞬間移動に近い現象くらいでは驚かなくなっていた。
(今は、休んだ方がいいと言うのなら、直ぐさま危険に晒される可能性は低いんだろうな。取り憑いた黒い化け物は、俺自身にどういった影響を与えるんだろうか)
 身の安全に関わる懸念が、脳裏をかすめる。
「ごめんね。もっと強い護衛に守らせるから、安心して休んで」
 それから二人は、携帯電話の番号やSNSアプリのIDなどを交換した後で別れた。
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