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閑話② side バルトロメウス

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 俺はアレクサンドラの元に走って向かった。アレクサンドラは庭にあるガゼボでお茶をしていた。何とも風情のある姿に俺は見惚れてしまった。本当に物語から飛び出てきたのではないかと思うほど美しい。俺がそうしているとアレクサンドラは俺に気づいたのかこちらを向きにこりと微笑んだ。

「バルトロメウス様、そんなに息を切らしてどうしたのですか? もしお時間があるのでしたらご一緒にお茶でもいかがですか?」
 
 アレクサンドラはそう言ってきた。

「そう、だな。ではお邪魔する」

「では、こちらへ」

 俺はアレクサンドラに施されるままにガゼボに入り席に座った。

「それで先ほど、随分と慌てていたようですが何かございましたか?」

「そうだ! 俺とアレクサンドラが婚約することになったんだ!!」

 アレクサンドラも手を口元に当て少し驚いて

「まぁ、それは本当でございますか!」

 と嬉しそうにそう言った。

「本当だ! これからよろしく頼む」

 俺はアレクサンドラを抱きしめにいってそう言った。するとアレクサンドラは上目遣いで言った。

「……でも、前の婚約者はどうなさるのですか?」

「安心していい。婚約破棄はすぐに行えばいい。俺もあいつとやっと縁が切れると思うと清々する」

「そうですか。では、私たちの婚約発表がいつになるのでしょう」

 俺は少し考えているとアレクサンドラが言った。

「まだ、決まっていないようでしたら数日後にある夜会ではどうでしょう?」

「それは名案だな! それにあいつも来る。あいつが俺たちの姿を見て悔しがる顔が目に浮かぶ。よし!! そうしよう」

「そうですね。きっとこんなに素晴らしいバルトロメウスに婚約破棄されて悲しむでしょうね。でも悪女であるカミラさんにはお似合いの結末かも知れませんね」

 アレクサンドラはそう言って、手を口元に当てて笑った。その後、俺たちは和やかな時間を過ごした。そしてあっという間に時間が過ぎていくのであった。





 ゴーティエ家を歓迎するパーティが開かれる日になった。いつもは自然に溢れており人気より獣の気配が多いこの地に多くの貴族が訪れていた。エンツェンスベルガーの隆盛を極めているということを聞きつけた貧困している貴族が集まっていた。さらにゴーティエ家は隣国の公国の元君主であり多くの財産を隠し持っていると噂だ。彼らはまるで血を求めて人に集まる蚊のようにエンツェンスガー家とゴーティエ家に群がったのだ。

 「アレクサンドラ。とても美しい。まるで絵画から出てきたようだ」

 俺は夜会のドレスを着ているとアレクサンドラを見ていた。アレクサンドラはきれいな金髪をハーフアップにおり髪は波ウェーブがかかっている。そして蒼い瞳をしているアレクサンドラはまさに誰もが想像する守ってあげたくなるお姫様のような見た目だ。そんなアレクサンドラが俺に向かって微笑んでくれるのだ。さらに

「バルトロメウス様」

 そう言ってアレクサンドラは俺に抱きついてきたのだ。俺は人生最上の気分であった。そんなラブラブの時間を楽しんでいると夜会が始まった。すでにカミラは会場入りしているようだ。


「カミラ! 早く出て来い!!」

 俺は会場の真ん中にアレクサンドラを連れてそう言った。周りの貴族たちはこれから何か始まるのかといった様子で近くにいる貴族たちとこそこそと話していた。するとカミラはのこのことこちらに近づいてきた。そして俺を中心に円状に広がっている人のいない空間にカミラが入ってきた。

「カミラ!! お前との婚約は今日で破棄する! お前のような奴は俺様に相応しくない。代わりに俺様はこの公国家の姫であるアレクサンドラと婚姻することとなった。以上だ!! もうお前に用はない疾くと出ていけ」


 俺は声高々そう宣言した。とても気持ちがよくすっきりしたような気分なった。周りはこれを慶事と捉えたようで拍手と歓声で俺とアレクサンドラの婚約を祝福した。カミラは下を向いて悲しそうに言った。

「では、陛下にそのように報告させていただきますがよろしいでしょうか?」

「あぁ、そのように陛下に伝えといてくれ。俺様は忙しい」

 俺は面倒臭く感じそのようにカミラに言った。辺りから「これでエンツェンスベルガー家は安泰だ!!」や「エンツェンスベルガー家に相応しい姫君を迎え入れることが今代に達成できた。これからエンツェンスベルガー家は勢いづくぞ!」などの声が聞こえた。そして貴族たちは俺たちと媚びを売るために集まってきた。とてもいい気分だった。俺はご機嫌にそいつらの相手をしたのだった。
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