桜旅 ~たぶん歴女の花見~

佳純

文字の大きさ
4 / 10
関ケ原

決戦地跡

しおりを挟む
 三成は笹尾山に陣をとり、家康はそこに向かって、少しずつ、少しずつ近寄っていくように陣跡が残っている。

 今は関ケ原の戦いで東軍が勝利して家康が江戸時代を作ったことがわかっている。それが念頭にあるためか、止まっている方よりも、動いている方が有利だったのではないかと思った。

 戦術がどうのこうのというのはよくわからないし、裏切りがあったというのも置いておいて、おしくらまんじゅうで押している方が勝っているようなイメージを持った。

 押して押して押しまくって、そして笹尾山近くにあった決戦地跡。
 ここは激戦になったらしい。
 そうとしか言えない。道路と小さな丘と旗しかなくて、誰も通っていないし、誰も戦っていない。現在のふつうの景色。激戦とは程遠い。

 戦だったとしても、どこもかしこも激しい合戦というわけでもないだろう。安全な場所もあれば、そうでない場所もあっただろう。

 激戦というからには、大変な場所だったのだろう。
 それでもよくわからない。そこがのどかすぎて……。

 がんばって想像してみる。
 三成を守るために戦う西軍と、手柄が欲しい東軍。その両軍が激しくぶつかり合う。
 とはいえ、それから400年以上経ち、今も生きている人はいないのだから、彼らがどんなことを考えていたのかわからない。

 本当にそういう状況だったのだろうか?
 三成を守るためには戦わないかも? でも大将は守らなければいけない。大将が死んでしまったら自分たちは負けてしまう。

 激戦地だったのだろう。
 とにかく、ここで多くの人が亡くなったと看板に書いてあった。

 ここで戦った人たちにとって、東軍が勝とうが西軍が勝とうが関係なかったのではないか。
 東軍だろうと西軍だろうと、死んだ人がたくさんいた場所。

 ここで命を落とした人がたくさんいたということも、看板や資料館がなければわからない。
 それくらい、のどかな場所だった。

 東軍だろうと西軍だろうと、大概の人は死にたくはないはず。死ぬのは痛いし、死んだ後にどこに行くのかもわからない。死んでしまったら、今、ここで何かしらを考えている自分がいなくなる。

 それが嫌だと思うのは、今も昔も変わらないはず。生きて良い暮らしをしたいから戦に出たのに、命を落としてしまった人たちもいたはず。

 東軍にいたとしても、死んでしまえば関係ない。

 名が残っている人なら、その時にどんなに潔い最期だったかなどの逸話も残る。時代を超えて絵師やイラストレーターに、素敵なイラストとして描かれて甦ることもできる。その人たちが嬉しいかどうかはわからないが。

 しかし、ここで亡くなったほとんどの人たちはそうではない。というか、そもそも戦争で亡くなる人のほとんどは名前が残らない。何万人戦って、何万人亡くなったという数字が伝わるだけ。

 それすらも400年も経ってしまっていたら定かではない。


 人影もなく、まわりは畑。
 小高い丘があって、旗がたくさん立っていて、石碑があって看板があった。

 明るい太陽の光が降り注いでいた。

 あの天下分け目の関ケ原の激戦地に時を越えて私は立っていた。
 かつてここでたくさんの人が戦って命を落とした。

 そんなことを思いながら、スマホで写真を撮る。
 それをメールで友人に送った。

 桜を入れたかったが周囲にはなく、『関ケ原の戦いの激戦地跡に来ました』というただの報告メール。歴史で習った有名な場所に居ることを友人に自慢したいだけだった。

 もう少し芸術的にしたかったけれど、石碑を入れて、その周辺の旗も入れてということをしていたら、ふつうの感じになった。

 誰が撮っても同じかもしれない。
 そう思った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...