桜旅 ~たぶん歴女の花見~

佳純

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神泉苑(京都)

神泉苑

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 次の日、今回の旅のメインとも言うべき神泉苑に行く。桜が咲いて京都に行ったらぜひ行きたいと思っていた場所だった。

 平安末期に雨が降らない日が続き、困った後白河法皇は神泉苑で白拍子に雨ごいの舞をさせた。99人まで降らなかったが100人目に静御前が舞うと雨が降ってきたという話がある。
 つまり神泉苑は源義経の愛妾の静御前が舞った場所だった。
 弁慶も999本の刀を集めてたし、源平は9が好きなのか?

 それはさておき、行ってみたい場所だった。
 宿からそんなに離れていなかったので歩いて行けた。というよりも神泉苑に近い宿を選んでいた。

 午前中に歩いて神泉苑に行って、午後に壬生寺というプランを立てた。京都はバスで一日券を使うのがお得だったが(現在は知らない)、1000円くらいしたので近場で歩いて桜を観ることにした。
 地図で見ると近いような気がしたが、歩くとけっこうあった。歩いても歩いても着かない気がした。

 団子を買ったり小さな畳を買ったりしていたからかもしれない。でも、おやつを持って神泉苑で食べるつもりだった。

 午後も花見をするつもりだったので、自分としては早めに出てきた。ふつうに10時くらいなのだが。でも、ちょうど良い気温の清々しい日で、歩いている先に桜が咲いているのが見えた。

 それほど距離はないのだが遠い気がした。歩いても歩いても着かない。でも、最短で来ているはず……あそこがゴールだ。
 そう思って歩く。けっこう歩く。宿に荷物は置いてきたし関ケ原よりはずっと軽いはずなのに辛い。

 でも歩く。ずっと行きたかった場所だった。
 静御前が雨ごいした場所。雨ごいというと雨降れ雨降れとフサフサが付いた棒を振って祈祷するイメージだったけれど、白拍子である。ふつうに舞っていたのだろう。それこそ天下一品の舞だったに違いない。だから雨が降った。

 歩いている道にもちらほら桜はあったのだが、桜の気配がただならない。少しずつ少しずつ近づいて、桜が見えてきた。

 敷地に入ると一面の桜だった。
 枝垂桜やらなにやらと、とにかく桜であふれていた。

 京都の桜はソメイヨシノはもちろんだけれど、他の桜も美しい。色も濃かったりしたけれど、桜も細かくて繊細なものが多い。
 私がお気に入りのサイズ。
 どこに行っても綺麗な桜が咲いている。小さくて愛らしい桜。
 しかも絶妙な咲き加減。

 散り始めで満開の桜の樹から花びらがひらひらひらひら舞い落ちてくる。
 雨ではなくて桜が降ってる。

 そう思った時だった。
 桜の花びらに紛れて、細かい銀色の光も降ってきていた。

 しっとりする空気から水滴に思えたが、雨ほど濡らさないし霧ほど細かくもない。
 空は青くて、さわやかな風と共に銀に輝く細かいしずくが降っていた。

 さすが神泉苑。美の極致。
 静御前が雨ごいを成功させた場所。

 桜と一緒にキラキラ光る細かい雫。
 街中でこんな景色が観られるとは思ってなかった。

 お堂やお社などがたくさんあったのでそれをお参り。桜は綺麗だし景色は良いし空気は澄んでいるし天気も良い。ゆっくりと桜を満喫。
 そして、御朱印をいただきに行く。ここは絶対にもらわねばと思った。

 とっても素敵な御朱印で、善女龍王と書いてあった。銀色の光は龍王に関係していたのかもしれない。鱗の光ような気もした。神泉苑の由緒書きをいただいて桜の樹の下で読んだ。少しでも神泉苑に居たかった。

 そして驚愕した。
 元々あった神泉苑は秀吉が二条城の水源にしたらしい……。

 つまり、そっちの泉が静御前が舞った場所だったのか?
 前日、自分が行った場所だと気づいた……。

 どうりで近いと思った。
 神泉苑はライトアップしてなかったので気づかなかったが、二条城の隣だった。早く宿へ行かねばと思ってバスを使ったが歩いても行ける距離だった。

 でも、この場所が特別であることはわかる。
 静御前が舞った場所ではなくても、移動させたのも400年以上も昔の話なのである。

 400年以上、この場所は神聖な場所だったのである。
 おそらく、力のある人が泉の神様を移動させたのであろう。

 なんということをしてくれたのだと、秀吉を恨んだ。

 丁寧に移動させてくれた人、もしくはそんな感じの何かがいたのだろう。後白河法皇が雨ごいに使ったということは、当時としてもやはりちゃんとした場所だったはずで、平安末期に雨ごいが成功してから400年後に神泉苑の場所を移動しただと?
 そんな水を生活用水って、ひとり占めしたらいかんだろう?

 よくはわからないけれど、おそらく神泉苑の神様が新しい場所を気に入ってくれて、それでこの神聖な雰囲気が保っていられるのだろうと勝手に思った。

 だって桜に銀のキラキラは観たことがない。
 頬に当たるとヒヤッとしてシャキっとした。心地よい水だった。

 きっと、その後の人たちも、この泉を大切にしてきたのだろう。
 豊臣家が滅んで、江戸時代が終わった後も。

 歴史とは切ない。
 人の営みよりも、はるかに長い何かがある。

 あの空間は一朝一夕にできるものではなく、少しずつ力が蓄えられたのだろう。

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