審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

文字の大きさ
60 / 111
特別編(時系列順不同)

2.イフ黒川と樋脇が黒幕同士じゃ無ければ(パロ)※

しおりを挟む
 暮れ泥む頃、教室には誰もいなく、当直で黒板を消している黒川の手伝いをしていた樋脇が、「黒川くん、制服まで真っ白になってるよ」と微笑んだ。

「あー、まあ、良いだろ」
「そう? 意外と気にならないんだね」
「お前は気にすんのか」
「うーん、どうかなあ。よく、分からない」

 黒板消しを置き、樋脇は教卓の黒板側にある引き出しから、当直日誌を取り出す。

「これもまだ書いてないの?」
「ああ」
「もー、駄目じゃない」

 そう言って、ぺらりと頁を捲っていると、黒川が後ろから抱き締めてきて、樋脇はちらりと肩口から覗く黒川の頭を見やる。寝癖なのか珍しくも少し跳ねた髪を撫でつけてやれば、そのまま黒川の手が制服のズボンへと回り込み、きゅ、と下半身を抑えつけられる。

「く、黒川くん……」

 頬に朱が集まる。

「良いだろ?」

 柔らかく揉まれて腰が跳ねる。

「俺は……ここで、なんて」

 樋脇は自分を偽るのを辞めた。ひとから嫌われるのを恐れる樋脇は、『僕』という一人称を使って、優しい態度を見せる。実際、そこまで優しい性格でもなく、はっきりと物を言うタイプだ。

「良いだろ?」
「駄目だろ。だって、一昨日自殺者が出てるし、先月は逮捕されたクラスメイトもいたでしょ」
「俺たちと関係があんのかよ」
「無いけど……でも、沢村さんは」

 そう言って、目を伏せる。自殺した沢村は、樋脇の知り合いだった。思わず腹を押さえ、樋脇は俯く。

「俺はお前にそんな顔をさせる女が死んで、嬉しいけどな」
「なっ、黒川って、本当にそういうところが最低なんだっ」

 黒川へと顔を向けると、そのままの勢いで口づけられる。

「んんっ!? ン、う~~~~ぁ、も、いいからっ」

 慌てて身を捩り、胸板を片手で押しやると、黒川も本気ではないようで簡単に離れていった。
 樋脇は呼吸を整えながら、日誌の頁を開いたまま、それを覗き込む形で両肘をついた。空白ばっかしで、これは骨の折れる作業だ。いっそのこと、記入するのは一行だけで良くないか? との念も擡げる。

「黒川って、俺しか興味ないの?」
「割と他はどうでも」
「そう……何で、俺なんか」
「昨日何度も言ってやったのに、まだ同じことを聞くのか?」

 無防備にも黒川へと尻を向ける樋脇の学生服を、下着と共に少しだけ脱がし、白い双丘がちらりと覗く。

「――――ちょ、何を……っ、あ……っ!」

 驚く間もなく、指を一本挿入される。

「やっぱまだ緩いな」
「そ、りゃ、昨日散々……っ。今日の授業きつかったんだからなっ。お前、終いには入れっぱなしで寝てやがって、う、うあっ」

 くちくち、と軽く指を動かすだけで、樋脇は教卓にしがみついた。

「あ、あ……だめだって、ぁ」
「それでも二本は入んなそうだな」
「こんなところで御免だ……っ」

 樋脇が睨みつけようと振り返る直前で、足音が聞こえてきた。この反響音は階段だろうか。
 すると、がらりと教室の戸が開いて、女生徒が二人、入ってきた。

「あれ。あんたら、まだ居たの?」

 樋脇は息を詰め、きゅ、と拳を握る。その姿を眺めながら、黒川は「ああ」と返す。

「そっか、黒川って当直だったもんね。明日はあんたじゃん」
「やだ~~」
「樋脇は、その手伝い?」

 女生徒に問われ、

「う、うん。そ、うだよ」

 樋脇はにっこりと頷いた。その途中で指を動かされ、ぴくりと身体が震えるも、普段の笑顔を貼り付けて何でもない風を装う。
 指を少し曲げ、揺らすようにして刺激してやれば、きゅうきゅうと締め付けてくるが、樋脇は涼し気な表情で「忘れ物?」と訊く。

「そう。この莫迦が明日の課題のプリントを忘れたとかさ。もう面倒なんだから」
「ひっどいよね~~でも、ここまでついてきてくれたから文句なんて言えないし~~」
「そ、そうなんだ」

 余裕を剥ぎ取ろうと、指の動きを早め、かりかりと壁を刺激しては、根元まで沈めて抜き差す。両足を震わせて、樋脇が辛そうに腰をもぞもぞとさせる。
 絶え間なく弄られ、樋脇は言葉すら跳ねそうになったが、女生徒二人は樋脇に引かれたのだと勘違いしてくれて、

「莫迦な話しちゃってごめんね~~」

と、手をひらひらと振った。

「そんなことないよ。仲が良くて、良いね」
「樋脇くんも黒川くんと仲良しじゃん~~」
「そう?」
「だって、黒川くんって誰とも仲良くしないし」
「そ。孤高の一匹狼ってカンジ~~」
「あ、それ分かるかも!」

 樋脇も二人に賛同するので、思わず強めに壁を引っ掻いてしまった。

「――――」

 息を呑み、声を必死に我慢する樋脇に、二人はきゃらきゃらと会話してて気づかない。

「く、ぅ……ろ、かわくん」

 小さな声で黒川を呼びかけ、困ったような笑みで見上げる。
 今度は黒川が息を呑む番だった。黒川にしか見せない樋脇も気が強くて好みだが、普段の柔らかくふんわりとした樋脇も可愛い。今すぐにでも襲いたい気持ちを抑え、指を抜き取って、軽く樋脇のズボンを直し、その手から日誌を奪い取った。
 胸ポケットからボールペンを取り出し、一言。

『特に可否もなく普通の日』

 それだけ大きく書いてから、「俺たち、帰るわ」と二人に告げ、黒川は樋脇の手を取った。

「え、ちょっと待って」

 よたよたと引き摺られ、樋脇も教室から出て行く。
 そんな二人の背を眺め、女生徒らは目をぱちくりとさせて、「黒川って謎だよな」「ひとり占めしたいんじゃない~~?」と呟き合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...