審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

文字の大きさ
90 / 111
第二章 わたし、めりーさん

10.怪しくなる雲行き

しおりを挟む
「あ~~、びっくりした」

 沢村が自身の胸に手を置いて呟いた。そんな彼女に、月島が「大丈夫か?」と気遣う素振りを見せる。

「まあね」

 振り向くことなく簡素に返すのも、クラスの人気者と話しているところをあまり見られたくないのだろう。雑に対応するのも、反感を買っていそうだが。

 四限の授業が終盤に差し掛かった頃、ちょっとした騒ぎが起きた。
 パリンッと小さな破裂音が頭上から聞こえてきたと思った、その時。――沢村の席へと硝子の細かな雨が降ってきた。沢村は音の発生源を探して見上げていたので、下手をすれば視力を失っていただろう。
 だが、月島が沢村の肩に手を回し、窓際へと大きく体を寄せた。そして沢村を庇うように自分の体で覆ったのだ。そのおかげで沢村は無事、月島も軽度な切り傷だけだった。教師に言われ、俺は二人を保健室に送ったが、すぐに教室へと戻された。
 割れた蛍光灯はそのままだったが、硝子の破片は教師が片付けてくれたようだ。昼休みに蛍光灯を変える、と教師は言い、沢村の戻ったタイミングで自習となった。流石にその席を使う訳にもいかず、月島と千堂が机を合わせ、沢村と三人で雑談を交えつつ自習を始めた。
 これも怪異の影響だろうな。事態は明らかに良くない方向へと舵を切っている。

 奇妙な空気が流れる中、あっという間に昼の時間となった。
 生徒たちも割れた蛍光灯や、自分の真上にある蛍光灯を気にして、気味悪そうに天井を時折眺めている。割れる可能性は今後ともありそうだ。沢村の頭上で割れた理由はあるのか、偶然なのか。答えの出ない問いを考えても無意味だ。俺は思考を辞めた。

「はーあ、私たちって本当に大丈夫なのかな」
「大丈夫だろ。こっちには黒川がいるしな!」

 月島が俺へと笑顔を向ける。

「俺に全てを振るな」
「まあさか、人狼ゲームのシステムを模しているとは思わなかったよな」

 月島はそう話題を変えると、沢村もうんうん、と大きく頷いた。

「怪異って学習するのか?」
「……いや、しない筈だ。全てはメリット、デメリットで終わる。だが進化する可能性は高い。高いが……、進化するには時間が必要だ。適応を繰り返した先にある筈」
「比較的新しい定義って言ってたよね、黒川くん」
「そうだ。人間で例えるなら、まだ赤ん坊だな。進化と成長は違うが、同じ括りだとして、赤ん坊から幼児に変わるにはもっと長く掛かる予見だった」
「それじゃ、どうして……?」
「これは進化じゃない。メリットとデメリットの枠内に入っている筈」

 改めて考えるとして、メリットとは何だろうか。俺たちが最後までメリーの正体が分からなかった場合、メリーは四十人もの命を喰える。俺たちに役割を与えたとしても、最低でも一人は喰える。初日でメリーを当てる可能性はかなり低いからだ。
 デメリットは俺たちに役割を与えることか? 大量喰いがメリットで、メリーの正体を当てられるのがデメリット? 
 いや、三日でメリーの正体を探すのは難しい。大人数であればあるほど。
 トリガーは千堂が拾ってきた携帯だった。誰かが拾ってくれるまで、この怪異は発動しない。発動条件を鑑みるに、デメリットはそれか?

「んー、よく分かんないけど、とりあえずナイトは誰なのかな?」

 沢村が言う。

「騎士か……」
「クラス全体にそれとなく聞いてみたけどよ、役職について言及していたのは誰もいなかったなあ。お前と立川くらいだろ」
「誰も死んでほしくないけど、霊媒師って誰かが死なないと使えないカードなのよね。誰も役割のことを言ってなかったってことはさ、その人も自分が霊媒師って気付いていないんじゃないの? ほら、めっちゃスクロールしないと気づかないし」

 役割に関して、月島が予めメールの内容をスクロールしたのか確認しなければ、全く気付いていない生徒の声もちらほら聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...